- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480073815
作品紹介・あらすじ
古代天皇継承は男系にも女系にも偏らない双系的なものだった。卑弥呼、推古、持統らに焦点を当て古代王権史を一望。男系万世一系という天皇像を書き換える。
感想・レビュー・書評
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これまで日本の古代史について無学だったせいか、本書で別の視点が提供されるのにはとても興奮させられた。単にイメージとしてぼんやりと天皇や古代について理解はしていたつもりだったけども、それについて明確に考え直す知識と理解を提供してくれたように思える。
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「性差の日本史」で参考文献に上がっていたので読みました。なるほど、元々家の概念に男女の区別が無く、一族で有能な人がトップに立つというやり方で有れば、女帝がこの時期に集中するのも納得ですし、中継ぎだったら推古帝が死ぬまで35年もやるわけないじゃんと前から思ってた疑問も解消しました。男系になっていったのは当時の国際的スタンダードに合わせたからというのも納得性が高いです。にしても古代史は、ここ30年ほどで色々な分野で常識が変化しているなぁと改めて感じます。
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ページターナーではぜんぜんなかった。研究書だから仕方ないけど。
古代の日本は男系ではなく双系社会だったのだそうだ。なので女帝も普通にいた。7世紀に推古、皇極、斉明、持統、8世紀に元明、元正、孝謙、称徳。名前ではぜんぜんわからないから、推古・持統以外にこんなに女帝がいたとは知らなかった。最初は群臣が天皇を選ぶ形だったから、男女を問わず実績を伴う熟年が選ばれていたのが、持統あたりから、男性は年少でも即位してそれを熟年の女帝が支えるようになったらしい。(熟年というのが、古代に60代や70代まで生きていたというのが驚き。)
男系になってきたのは中国の制度にだんだん影響されたからのようだ。(男系男子継承が法制化されたのはなんと明治。伝統というには新しすぎる。)皇太子ももともと日本では男女問わないが、中国では皇太子にたいして皇太女という言葉が必要だったとのこと。群臣が選ぶのでなく、血統重視にもだんだんなってきた。
「…だろう」「…と推定しておきたい」「…と考えたい」のような表現が出てくるが、古代史の研究はかなり想像が入るのではなかろうか。研究者はその想像が楽しいのかも。一人一人の人格や性格までも資料から読み取ろうとするのだろう。私など歴史上の人物は、人間としてではなく知識として頭に入っているだけだったことに気付いた。聖徳太子にしても、結婚してたのかとか考えもしなかった。 -
推古から称徳までに頻繁に見られた女性の王位は、倭国の慣習でもあり、中継ぎ的な即位を意味しないという指摘は、各女帝の在位期間の長さを鑑みてももっとも。群臣が王を推戴するかたちも、卑弥呼の頃からの伝統を垣間見る気がする。潮目が変わるのは、白村江で唐に大敗し、倭国から律令国家「日本」へと変容するあたりで、(皇帝は男子という不文律のある)中国化に伴い、天皇と皇統のスタイルもそこに収斂していったのだろう。女帝の時代の終焉には、藤原氏の存在も見落とせない要素だが、主題からやや外れる事もあり、本書では末尾で触れられるに留まる。
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著者は、古代の女帝は臨時的に即位した「中つぎ」であるとする通説的理解を退け、古代王権における女帝の立場を明快に論じています。6世紀末の推古天皇や7世紀の皇極天皇(重祚して斉明)、持統天皇は長老女性の立場から即位、その持統は初めて太上天皇となり年少男性の軽皇子(文武天皇)と「共治」し、それは元明・元正と首皇子(聖武天皇)の関係にも引き継がれたとするなど、古代王権の中で女帝が主体的な役割を果たしていたといいます。個人的には持統天皇の王権の性質に関心があるので、興味深く読みました。
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女帝は皇位継承の中つぎの役割であった、古代の孝謙=称徳天皇以降、江戸時代の明正天皇まで女帝が出なかったことから、それが歴史の常識として受けとられてきた。そのような考え方に著者は真っ向から異を唱える。
中国の父系社会とは異なり、日本は双系的親族結合を基本とする社会であったこと、王には群臣を心腹させる統率力/個人的資質が必要であったことから、男女を問わず、年齢的にも成熟した有資格者の中から王が擁立されたのだと著者は言う。
古墳における男女の首長の存在を明らかにする考古学的知見、史料において用いられている語のその当時における意味の厳密解釈その他様々な証拠から、女帝が男子臣下からサポートを受けていただけでなく、独自の指導力を発揮していた事実を証明していく。
隋書倭国伝に出てくる倭王、多利思比孤に関わる「ヒメ」、「ヒコ」の解釈や、当時天皇は外国使節に直接会うことはないのが倭国の慣例であったなどとする著者の説について、その当否を論ずる能力はないが、後代に確立された父系直系継承を当たり前の仕組みと見ずに考えるならば、著者の論証にはかなりの説得力があると思われる。
主要人物の父方、母方の関係が入り組んでいるのが古代の特徴だが、政争の敗者として敗れた者たちの背景も系図を見ていると、良く理解できた。
創られた伝統によって半ば閉ざされた眼を覚ましてくれる、とてもスリリングな本である。 -
h10-図書館2021-5-28 期限6/11 読了6/8 返却6/8
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『日本古代女帝論』をダイジェストにして、時代の変遷を重視して再編成したような書籍である。「王権史」という題名に合わせてのものであろう。
ただ、議論の重点は皇位継承に置かれており、「王権」そのものに関する叙述を期待すべきではない。
ジェンダー論の視点から先行研究の問題点を暴くといった手法を垣間見ることができ、刺激に満ちている。