朝鮮民族を読み解く: 北と南に共通するもの (ちくま学芸文庫 フ 24-1)
- 筑摩書房 (2005年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480089038
作品紹介・あらすじ
北朝鮮・韓国ともに近代化に向けてじつは共通の苦闘を演じてきた。宗族を中核にした自分たち「ウリ」とそこから排除された他人たち「ナム」との間の深淵をどのように埋め、国民国家としての一体感を形成するのか?かたくなな「儒」の世界と大らかな「野」の世界に接点はあるのか?「恨(ハン)」はいかにして解けるのか?朝鮮文化の根底にある思考行動様式を、日常生活にさまざまに現れた具体的なエピソードを通して、初心の者のみが抱きうる素朴な疑問・関心をテコに、鮮やかに読み解いた、平明で奥深い朝鮮文化入門書。
感想・レビュー・書評
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1995年に初版出版されたもので、2005年にちくま学芸文庫版に収録された。そのため、20年以上も前の韓国、北朝鮮ではあるが、その核というものは変わっていないのではないか。文庫版あとがきに、その変化が章ごとに綴られている。韓国は宗族を社会の細胞としている。男子の血族のことである。そのため、嫁は夫の血族には入らない。婚家の姓と違うので、現代的だと誤解する人もいるが、男尊女卑の現れである。四代祖先を同じくする血族を堂内(집안)といい、それより外の人とは関係が薄くなる。これがウリ(우리)で、外の人がナム(남)他者である。知人(아는 사람)、同郷同学(동향)、宗族、門中、堂内の順に内になるという。また、朝鮮王朝では朱子学が国家の教義として据えられ、儒者が国を指導した。徳に外れた王は儒臣によって降ろされた。儒教を尊ぶことで、中華から外れた国は夷荻であり、禽獣に近いと考えられた。日本は夷荻であり、そのため侮蔑の対象であった。その日本に併合されたのであるから、恨(한)は深いのだろう。
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朝鮮を読むはじめの一冊、とても参考になる良書。
朝鮮人の言動、行動、それらの要因となる底流にある思想とその歴史的過程、北朝鮮の主体思想とは何なのかなど、論旨が明解でわかりやすく、非常に面白かった。
「上位国へのコンプレックスと下位国への優越感」の中で「ナムによって圧迫され続けたウリの最終戦略」として他者、他国の道徳性を叩く朝鮮民族を容赦なく分析しながらも、かの地の人々への著者の深い愛情が全編から伝わってくる。
出版から20年弱が過ぎ、変化した部分も大きいだろうけれど、本質は簡単には変わるまい。読む前よりも、朝鮮民族がだいぶ身近に感じる。地理的にも近く、在日の朝鮮人を多く抱える日本に住むものとしては読んでしかるべき本だと思う。 -
社会
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ウリとナムを一所懸命説明しているが、結局何のことか解らない。身近なエピソードの部分は面白いのだが。
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元々の本は今から15年前にでた本だし、文庫版ですら今から7年も前の出版で、文庫版のためのあとがきの内容ですら今に追いついていないと思わせるところもあるが、著者の専門である思想史の知識に裏打ちされながらも平易な文体で書かれる朝鮮の人々の考え方には、腑に落ちるところもあり勉強になった。
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朝鮮人の言動、行動、それらの要因となる底流にある思想とその歴史的過程、北朝鮮の主体思想とは何なのかなど、論旨が明解でわかりやすく、非常に面白かった。
地理的にも近く、在日の朝鮮人を多く抱える日本に住むものとしては読んでしかるべき本だと思う。 -
日常些事から思想を経由して歴史へ至る一貫した説明には説得力がある。著者の愛情のなせる業か。ときに戯作調の文体も良い。
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腑に落ちる解説。