中世を旅する人びと: ヨ-ロッパ庶民生活点描 (ちくま学芸文庫 ア 25-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091574

感想・レビュー・書評

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  • 旅行をテーマにした本かと思ったが、内容は中世ヨーロッパ民俗学。バーゼルやリューベックなどドイツ周辺の庶民の生活が描かれている。
    土地の境界確認に子どものトラウマを利用する話が面白い。ティル・オイレンシュピーゲルはちょっとしつこい。

  • NDC 230.4 西洋中世における遍歴職人の「旅」とは、糧を得るための苦行であり、親方の呪縛から解放される喜びでもあった。彼らを迎える旅篭は常連客に優先してテーブルを割り当て、旅人を区分するしきたりを持っていた。遍歴職人・親方・旅篭主人達の必死なせめぎ合いに、当時の名もなき民衆の悲哀が漂う。本書は歴史の表舞台に登場しない彼ら庶民にスポットを当てた社会史。丹念な考察により、当時の人びとの息吹が蘇る。中世史研究の第一人者の初期代表作。’80年サントリー学芸賞受賞。

    目次
    1 道・川・橋
    2 旅と定住の間に
    3 定住者の世界
    4 遍歴と定住の交わり
    5 ジプシーと放浪者の世界
    6 遍歴の世界

    著者等紹介
    阿部謹也[アベキンヤ]
    1935年、東京に生まれる。1963年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。小樽商科大学教授、一橋大学教授、一橋大学学長、共立女子大学学長などを歴任。一橋大学名誉教授。2006年9月死去。『中世を旅する人びと』で’80年サントリー学芸賞を受賞した

  • 中世を生きる名もなき人々の生活が知れる本。
    中世の庶民の生活について、予備知識がなく具体的なイメージが何もわかない、でも知りたい、という人におすすめ。

  •  為政者が書かせる史書には記述されないが、確かにあったはずの民衆の生活史にスポットを当てた本である。サントリー学芸賞を受賞しただけあって面白かった。
     政治体制、社会制度、経済制度、法律、思想宗教は無数の庶民の生活の上に成り立っている。庶民の生活を知らずして、抽象的な概念を理解することは難しい。本書を貫いているのはそのような視座である。
     中世のヨーロッパにおける川や橋を含む道、定住者と放浪者、農民と職人の在り方を詳細に解説してくれる。アジールの機能から職人の身分確認の方法まで、取り上げる話題は幅広い。
     職人が遠方に職を求める場合、紹介状や身分証が必要になるが、文盲の多い中世にあっては服装や舞踏のようなステップが今でいう身分証や紹介状のような役割を担っていたという。当時の人々の息遣いが感じられるような、また、現代と地続きであることを自覚させられるような例が多く出てくる。
     同じくサントリー学芸賞を受賞した『ゴシックとは何か 大聖堂の精神史』のよい補助線になった。『ゴシック~』では農民の信仰や開墾運動、都市への移住について語られる。社会精神史といったていで、無名の人々の文化風習に迫るものではない。本書を読んで、点々でしかなかった点描の全体像が非常にうっすらとではあるが浮かび上がった感じがする。
     中世ヨーロッパを下敷きにしたと思われるゲームやアニメなどが日本には多くあるが、そのほとんどが『指輪物語』とそれに影響を受けた「ドラクエ」を出発点とし、現実の中世とは違う独特の世界を作り上げている気がする。ファンタジーなのだから、それが悪いとは言わないが、魔法もなく、書物もなく、糞尿にまみれ、飢饉や疫病、差別と隣合わせだった世界に生きた人の物語ももっとあっていいのではと思った。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737835

  • AK3d

  • この時代旅することは命がけのようです。だから色々な想像力が膨らむ物語が翔んだのかも知れません。

  • 1 道・川・橋
    2 旅と定住の間に
    3 定住者の世界
    4 遍歴と定住の交わり
    5 ジプシーと放浪者の世界
    6 遍歴の世界

    著者:阿部謹也(1935-2006、千代田区、西洋史)
    解説:平野啓一郎(1978-、蒲郡市、小説家)

  • 10世紀〜16世紀のドイツに転生させられたとして、一人で生きてくのは難しい。
    戦争、疫病、飢饉の危険を運良く避けられたとしても、
    生きていくうえでのルールを知らないことには、日々の生活すらままならないだろう。

    嚢虫病にかかった家畜の肉を売る肉屋台には、小さな布とナイフがかけられている。
    農家から最初に出てゆく犂には卵とパン一斤をつけ、最初に出会った乞食に与える。
    道の真中は死の天使が歩むので、旅人はつねに道の端を歩かねばらない。
    渡し場に来て三時間呼んでも渡し守が現れない時は、近くの居酒屋で渡し守のつけでワインを飲むことができる。
    雑草が騎士の拍車までとどくようになれば、農民はその土地の権利を失う。

    農民、浴場主、居酒屋の主人、粉挽き、牧人、羊飼い、渡し守、肉屋、遍歴職人、乞食、放浪者、ジプシー、刑吏、皮剥ぎ、道路掃除人、煙突掃除夫。
    語られる多くの職業は歴史学の本流には登場しない賤民達だが、
    過度な悲壮感も難解な専門用語もなく、ただ生活の仔細がありのままに語られる。

    教科書で語られる地域と国と世界の歴史は、このような文化と社会と生活の歴史なしでは全く無味乾燥なものとなってしまう。
    人々の中世のイメージの多くは物語で補完されるのみだが、そのような下地があればなお、
    現実と創作の違いを本書で楽しめることができるだろう。

  • 遍歴の職人、例えば石工は足の位置、ステップによって身分証明を行っていたなど、活き活きとした中世ヨーロッパの庶民の動きが、言葉が、現れてきそうな、そんな本です。

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著者プロフィール

1935年生まれ。共立女子大学学長。専攻は西洋中世史。著書に『阿部謹也著作集』(筑摩書房)、『学問と「世間」』『ヨーロッパを見る視角』(ともに岩波書店)、『「世間」とは何か』『「教養」とは何か』(講談社)。

「2002年 『世間学への招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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