琉球の時代: 大いなる歴史像を求めて (ちくま学芸文庫 タ 39-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480094438

作品紹介・あらすじ

アジアの海に花開いた琉球王国。その全貌はいまなお数々の謎に包まれ、あたかも神話の世界のようなイメージを懐かせる。しかし歴史をひもといてみると、古琉球王国は、壮大な交易ルートを通じて築き上げた華やかな文化を誇っていた。中国、マラッカやポルトガル等、海外の文書に記された当時の王国の姿などを参考にしながら、その栄光と悲劇の歴史ドラマにわけいる。アメリカ統治時代を通じて否定的な意味合いを担わされてきた「琉球」という名称の本来の意味を復権させ、沖縄独自の文化と世界像に新たな光をあてた歴史的名著。

感想・レビュー・書評

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  • 2013/12/3読了。
    池上永一の『トロイメライ』を読んだ勢いで、積読から引っ張り出して読了。琉球史のパンフレットやグスクの写真集みたいなものは旅行前の予習で読んだことがあったけど、詳しい通史の本は初めて。
    面白かった。日本史でも世界史でも習わない、既に滅んだ王国の歴史。まるで未知のハイ・ファンタジーのダイジェストか設定集を読んでいるようだった。いや歴史をファンタジーに例えるのは話が逆かもしれないが。
    神話的な黎明期、三国の覇権争いと王国の統一、王統交代、海を渡りレキオの名を遥か彼方にまで轟かせた大交易時代、そして隣の軍事大国に侵略され滅亡に向かう近世。いつ作られたかも定かでない巨大な城塞、無数に存在する祈りの聖地、王の姉妹を頂点とする神女たちが謡う神託。これなんて大河ファンタジー?と言いたくなるような、生き生きした琉球王国の姿が浮かぶ。
    また、明確な史料がほとんど現存せず、他国の歴史書や、歌い継がれた詩や、風化で消えかかった碑文や、失われた公文書の写しなどから朧げに推測するしかないという、その歴史の探り方まで含めて物語としてとても面白かった、なんて感想は不謹慎かもしれないが。
    しかし、歴史がそんなふうにファンタスティックであるということが、実はその後と現在の現実をひどく生臭いものにしているのだなとも思った。どう生臭いかは言わずもがななので言わないが、ここはどこかの国の一部ではなかった、琉球という国だった、と押し出し強く言えないところがファンタジーじみた歴史の泣き所だったのではないか。神話とか言い伝えとか宗教書とか正史とか検閲教科書とかではなく、きちんと人文科学の形で(少なくとも他人がそう認める体裁で)歴史を持っていないと、後々ハイエナどもにいいように舐められるわけで、著者を含めた沖縄史学家の悲願もその辺りにあるのだろう。
    歴史とは国益に直結するどころか国の存亡を左右するとんでもない実学だという、そんなことまで考えさせるとは、現実社会への照射力批評力においても琉球史はやっぱりハイ・ファンタジーとして読める。そういう命を吹き込む力が本書にはあった。

  • 百数十年のそう長くない期間とはいえ、琉球王国が東アジアで独自の存在意義を持って活躍することができたことの要因と意義をじっくりと考えたい。地理的な優位性を活用できたこと、国家商業資本主義?の育成・活用、近隣他国の一時的弱体化という瞬間的好機もあったと思う。これらの要因は今日でも十分に考慮すべきことと思う。
    そういうことを別にしても、琉球王国の概要を知るのに良い本であった。

  • 15~16世紀、東南アジア、明、日本、朝鮮などアジアの貿易拠点として栄えた琉球王国の最盛期は短命で終わる。
    中継貿易で栄えたのは明の朝貢体制と海禁政策という地域間交通の不均衡があったから。西欧の進出や明の衰退などでアジアの貿易秩序が変われば、わざわざ琉球を中継する理由はなくなる。
    同じくアジア、北米、欧州の中継貿易で栄えたオランダと同様、琉球は中継に徹するのみで、自ら価値をプラスαの生み出し、貿易秩序を主導することができなかった。
    そもそも貿易の主体は南洋華僑で、使う船も明からもらったもの。恩恵を受けたのは一部の支配層で、民衆の生活レベルは未開の域を出ていなかったというのも一因。商人ではなく琉球王朝自らが貿易をしきっていたのはその裏返し。

    琉球は「日本」以上にほかからの影響を受けにくい「島国」だったから、といえば元も子もないが、
    10世紀をこえてもいまだ縄文時代の延長のような生活だったのなら、19世紀までの沖縄の歴史はあらがいようのない流れだったのかもしれない。

    古事記並みの神話、民間伝承の昔話や、時とともにいくらでも変化するような古歌謡「おもろさうし」など以外の歴史資料がほとんど出てこない事からして、沖縄には文字の歴史資料が少ないと感じた。最盛期を築いた尚真王の人物像すらわからないのでは心もとない。
    今後、歴史考証が進む余地がまだまだありそう。

    尚真王の時代にできた沖縄を中心として周りの島々を従える中央集権と、それに伴って島々に敷かれた神女組織が興味深い。

    メモ  オナリ神信仰 女人政治考 島津侵入事件

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著者プロフィール

琉球大学大学院人文社会科学研究科教授

「2010年 『東アジアの文化と琉球・沖縄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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