筑摩世界文学大系 83 ローザ ドノーソ

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480206831

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  • 収録作品
     ローザ「大いなる奥地」
     ドノソ「この日曜日」

    バルガス・リョサの「世界終末戦争」巻末解説に載っていたので借りました。
    ヨーロッパ的共和国を作ろうとしているブラジルだけど、発展しているのは海岸沿い。奥地では数世紀隔たったような生活が続いている。そこで生きる盗賊たち。
    リョサに出てくる盗賊たちは、酷い旱魃の後だったこともありかなり残虐行為も働いていたようだがそれでも地域住民たちからは一目置かれていた。
    ローザの盗賊たちは盗賊というより牛追いがフリーになったような感じか。主人公は元盗賊団の首領だったが引退して農園で家族で静かに暮す男。名誉を重んじ家族(集団)を大事にする彼らの生き方が語られる。
    ラストで衝撃の事実発表。ミステリーとかではそういう手法もありますが、ごく普通のアウトロー小説でくるは意表を付かれた。

  • ローザ『大いなる奥地』は、単調なのに先は薄々わかっているのになぜか止められない、奇妙な引力を持つ小説だった。長い物語のすべてが主人公リオバルドによって語られるし、この老人は意識しているにしろしていないにしろ、相当過去を編集しているようだ。ただそうしなければ耐えられない体験だったのはわかる。リオバルドのもやっとした語りと彼がさまよった範囲の広大さが重なって、奥地の底知れなさが伝わってきた。基本的には恋物語なのだが、惹かれ過ぎて身の程を越える能力を発揮してしまったための不幸にはしんみりしてしまった。相手が悪かった。

    期待したほど野盗の暮らしぶりの技術的な記述がなかったのは残念だったけれど、かいま見える彼らの労働倫理が面白かった。辞めたくなったらさっと辞められる。日本だと足を洗うって大変だったりするから。

    ドノソ『この日曜日』は、『夜のみだらな鳥』とは違ってリアリズム小説。でも「よるみだ」に至るドノソのテーマが見えて面白い(爛れ崩れるブルジョア、というような)。無駄のない整理された構造の中編で、読んでいて気持ちよかった。思ったのは、これはお金持ちじゃなくてもそうなんだけど、面倒見がいいのも考えものだなと。あと、優先順位は考えないとなと。

  • 『大いなる奥地』収録

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