心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫 や 39-1)
- 筑摩書房 (2010年2月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480426758
感想・レビュー・書評
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日本人は集団主義文化で、西欧人は個人主義文化だと言われることがあるが、実際の調査ではこれに反する結果が得られる。日本人が集団主義的な行動をするのは、そのように行動するのが、有利な状況にあるからである。一定のサークル内でも互恵的な関係が長く続き、その外に出ると敵対的に扱われるという社会の風潮が一旦出来上がると、社会の構成員は、その風潮を強化するように行動することが有利になる。人間には、そのような交換促進的な心理メカニズムと、他人の裏切りを検知する心理メカニズムの両方が備わっており、流動的な社会では、その双方が活発に働くが、集団的な社会では、サークル内では交換促進、サークル外では敵対的という判断になるため、裏切り検知装置が退化する。そのため、一層、サークル外では、無条件に敵対的行動を取るようになる。高度成長期までには、そのような日本の社会に適応した心理傾向が、エージェントコストの軽減に役立ったが、社会がグローバル化した現在では、サークル内とサークル外とで区別する心理傾向は、機会費用が大きくなりすぎて競争上不利になる。
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日本人は心の底から集団主義者なのか?予想外の結果が新鮮!「知らない者同士では日本人は協力し合わなくなる!」米国や諸外国と比べ、「旅の恥はかき捨て」、一匹狼行動が目立つことと集団主義は矛盾する。「囚人のジレンマ」など多くの実際の実験により、科学的に立証していく。そして「頻度依存行動」というキーワードで読み解いていく。単に相互監視・規制の組織構造が日本人を集団主義に見せている!ショッキングな主張だが、こう説明されると日本人の道徳観の乏しさに思い至り納得せざるを得ない。非協力的な人は、「他の人は必ず非協力的行動をする」と考え、協力的な人は単なるお人よしではなく、「人はさまざまだ。協力的、非協力的ともありうる」と考えていることの実験結果は興味深い。日本人は前者が多いのだろうか?
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筆者は社会心理学の重臣。日本人は如何に集団主義ではないか、ということを数々の心理実験を用いて論じている。特に欧米と日本人との比較で、日本人の方が個人主義的特性があるという論、日本人の心理的状況が、企業形態、現代社会の構造にどう影響しているかという論は興味深い。
『安心』と『信頼』の違いから生じる、日本人ー欧米人の価値観の差を考えさせられたことは新たな視点となった。 -
人の行動や文化は「心のあり方」により決定されるのではなくて、集団の中での相互依存関係により決定されるという論を展開している。言葉の定義が必ずしも明確でなく、かつ別の言葉で言い換えたりして分かりにくい論理展開になっている部分もあるが、行動を分析する切り口としては面白い。
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「帰属性のエラー」と呼ばれる多くの人が持つ一種の思い込み、偏見について書かれている。
「日本人は集団主義で、欧米人は個人主義」とか「いじめがなくならないのは子供の心が荒んできたから」とかいった類の言説を、自前の実験やナッシュ均衡などのデータを引用し反駁。
うーん、分かるんだけど分からない^^; これは俺も心でっかちに陥っているからだろうか。
そういった意味で、自分がみている景色、再確認できると思います。 -
専門用語や独自用語満載で読みにくかった…。日本人は集団を大事にする心を持っている、というのが幻想であることを説明している。心の問題に帰着するのではなく、構造的に起こっていることだと。心理実験の説明が多く、話が前後してわかりにくい。しかし著者の意見は面白い。