リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫 た 72-1)

制作 : 高原 英理 
  • 筑摩書房
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (681ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431202

感想・レビュー・書評

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  • 以前から読みたいと思ってたのになんかスルーしてた…。やっとこさ手に取りました。
    ・宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」、宮沢賢治はときどきギョッとするほど怖かったりヘンテコな話を書くよな…。これは犯罪小説の子ども向けって感じだ…。
    ・乱歩の随筆「残虐への郷愁」、なんか分かる…と思ってしまったあなたもきっと人外の存在。これを収録する高原英理氏とも性癖が同じなんだろうなあ。大蘇芳年の無残絵のチョイスとか、乱歩ェって思うけど、なんか分かるよな。
    ・横溝正史「かいやぐら物語」、横溝がこんな…耽美な小説も書いてたんだな…。腐乱死体を隠そうとする作業とか…残酷で物悲しい感じはいつもの横溝だって感じだけども…。
    ・澁澤龍彦「幼児殺戮者」、ジル・ド・レェの伝記を澁澤龍彦流に繙く文章。かの悪徳騎士ジル・ド・レェの見方がめちゃめちゃに変わります。ううん、「異端の肖像」も早く読みたいなあ。
    ・須永朝彦「就眠儀式」、め…めちゃめちゃ好きだった…。吸血鬼ものとしては恐怖は一切ないんだけども…まさに耽美…妖艶…。チェンバロの音色と共に現れ、夜な夜な一人きり、しりとりに耽る金髪碧眼の美青年…。彼と出会った男は、そして…。す、凄過ぎる…。
    ・赤江瀑「花曝れ首」、陰間二人とならず者の男の三角関係…それに引きずられるように、婚約者の男に同性の恋人がいるのであろう事実を突きつけられてしまったヒロインは…。マジでこの陰鬱なトーンとすがすがしいほどの男色ぶりがマジで赤江瀑だな…なった。赤江瀑、マジで短編でも小説としてカロリーが鬼高くていつもびっくりする。でもそろそろ他の読みたいな…。これが…読む麻薬…。
    ・藤原月彦三十三句、あまりにも耽美俳句で衝撃…。こ、これがJUNE掲載の本気…。
    ・久世光彦の随筆「人攫いの午後」、だからなのかどっか同性愛ってか少年愛じみた随筆が収録されてるぞ…。高原氏の、久世光彦のこういった随筆への解釈が完全に一致でなんかわろた…。
    ・小川洋子先生の「老婆J」ってゴシック…ゴシック…???????????
    ・倉阪鬼一郎先生の「老年」、これめっちゃいいよね…。初出が異形コレクションだから、まじで今回のアンソロに収録されるのは納得。心中を図る吸血鬼老夫婦。この時点でもう心臓フルボッコすぎる。

  • ゴシックに関する多数の著書を持つ高原英理氏が提唱する「リテラリーゴシック」をテーマにしたアンソロジー。聞きなれないテーマですが、リテラリーゴシック宣言と解説、そして収録作品を読めば肌で感じられ納得できます。本テーマだからこそ実現できる、成立する作家の並びだと思います。時代ごとに変化を楽しめるのも良いです。とにかく本書に収録されている作品の濃密さは凄いです。誰にでも好かれる作品群ではないですが、こういう毒を持った作品は必要です。シリーズ物や長編小説に触れることが多かったので、個人的に短編の面白さを再認識できたことも収穫でした。

  • 2014年1月に読んだはずだが登録し忘れていた。

  • 残酷で、崇高。
    野蛮で、哀切。
    ──今見いだされる不穏の文学。
    (本書オビより)

    高原英理さんの代表的著作『ゴシックハート』と『ゴシックスピリット』。これら理論書の次に読むのは、まさしく実践書である本書!! 高原さんが上記の著作の中で紹介していた作家さんを始め、40人近い作家たちの「文学的な」ゴシック小説を堪能できます。

    しかし、ここで大事なのは、本書で紹介されている作品は飽くまで「文学的ゴシック」であって、所謂ウォルポールの『オトラント城』に始まる「ゴシック小説」などではないこと。そのため、『フランケンシュタイン』や『ヴァセック』などは一先ず置いた、高原さんのゴシックハートに響く作品のアンソロジーなのです。『ゴシックスピリット』の感想にも書きましたが、ゴシックは初めからゴシックであったわけではなくて、沢山の作品の中にどうゴシックを見出していくかもまた、ゴシックハートとゴシックスピリットを持つ者の特権なのです。

    ゴシックを目指した作品ではなく、ゴシックの見い出せる作品。個人的にはこのような作品たちは押し付けがましくなく、リラックスして(?)読めた印象です。とはいえ、なるほど「文学的ゴシック」にふさわしい残酷で、けれども美しい作品ばかり! 江戸川乱歩や三島由紀夫の作品や、乙一や小林洋子などの比較的近年の作品もあり、読んだことある作品もちらほらありましたが、未読の作品も取っ付きやすく、すぐにその世界観にのめり込み、爽快なまでの読了感に襲われる…!!

    一日一話とコツコツ読み進めていきましたが、飽きることなく読めました。ゴシックハートを持つものとして、やはり捨て置けない一冊です。

    《収録作品と個人的な評価》
    Ⅰ:黎明
    「夜」:北原白秋
    「絵本の春」:泉鏡花
    「毒もみのすきな署長さん」:宮沢賢治

    Ⅱ:戦前ミステリの達成
    「残虐への郷愁」:江戸川乱歩
    「かいやぐら物語」:横溝正史
    「失楽園殺人事件」:小栗虫太郎

    Ⅲ:「血と薔薇」の時代
    ◎「月澹荘綺譚」:三島由紀夫
    「醜魔たち」:倉橋由美子
    「僧帽筋」:塚本邦雄
    「塚本邦雄三十三首」:塚本邦雄
    ◎「第九の欠落を含む十の詩篇」:高橋睦郎
    「僧侶」:吉岡実
    「薔薇の縛め」:中井英夫
    「幼児殺戮者」:澁澤龍彦

    Ⅳ:幻想文学の領土から
    「就眠儀式」:須永朝彦
    ◎「兎」:金井美恵子
    「葛原妙子三十三首」:葛原妙子
    「高柳重信十一句」:高柳重信
    「大広間」:吉田知子
    ◎「紫色の丘」:竹内健
    「花曝れ首」:赤江瀑
    「藤原月彦三十三句」:藤原月彦
    「傳説」:山尾悠子
    「眉雨」:古井由吉
    「春の滅び」:皆川博子
    「人攫いの午後」:久世光彦

    Ⅴ:文学的ゴシックの現在
    「暗黒系 goth」:乙一
    「セカイ、蛮族、ぼく。」:伊藤計劃
    ◎「ジャングリン・パパの愛撫の手」:桜庭一樹  
    「逃げよう」:京極夏彦
    「老婆J」:小川洋子
    「ステーシー異聞 再殺部隊隊長の回想」:大槻ケンヂ 
    「老年」:倉阪鬼一郎
    「ミンク」:金原ひとみ
    「デーモン日暮」:木下古栗
    「今日の心霊」:藤野可織
    ◎「人魚の肉」:中里友香
    「壁」:川口晴美
    「グレー・グレー」:高原英理

  • ゴシック小説アンソロジー。ホラー・幻想味の強い作品が多くて、総合的にかなり好みです。
    もともとお気に入りの作品もありました。皆川博子「春の滅び」、倉阪鬼一郎「老年」、乙一「暗黒系 Goth」、藤野可織「今日の心霊」は読んだことがあったけれど、やっぱり好きだなあ、と。
    未読だったものでは三島由紀夫「月澹荘綺譚」が素晴らしいなあ。えげつないのに美しくって、そしてラストの一文にはぞくりとさせられます。でも浮かぶ情景は、やはりどこか美しいような。

  • 2014-2-17

  •  作品の持つ毒や陰惨さに飲み込まれないようゆっくりと時間をかけて読了。
    現在の「ゴシック」という言葉の持つイメージの広がりは驚くばかりながらそこを上手く捉えて、これもゴシックなの!?と様々な作品を取り上げていて読み応えのある一冊でした。
     かねてより読みたいと思っていた作家氏や、新たな作家氏の作品に出会えたことも嬉しい。

  • 北原白秋 「夜」、泉鏡花 「絵本の春」、宮沢賢治 「毒もみのすきな署長さん」

    江戸川乱歩 「残虐への郷愁」横溝正史「かいやぐら物語」小栗虫太郎「失楽園殺人事件」

    三島由紀夫「月澹荘綺譚」倉橋由美子 「醜魔たち」
    ◎塚本邦雄「僧帽筋」 塚本邦雄 三十三首
    高橋睦郎「第九の欠落を含む十の詩篇」吉岡実 「僧侶」中井英夫「薔薇の縛め」◎澁澤龍彦「幼児殺戮者」

    須永朝彦 「就眠儀式」金井美恵子「兎」吉田知子「大広間」◎竹内健「紫色の丘」◎赤江瀑「花曝れ首」山尾悠子「傳説」古井由吉「眉雨」皆川博子「春の滅び」
    久世光彦「人攫いの午後」乙一 「暗黒系」伊藤 「セカイ、蛮族、ほく。」◎桜庭一樹「ジャングリン・パパの愛撫の手」◎京極夏彦「逃げよう」 ◎小川洋子「老婆J] 大槻ケンヂ 「ステーシー異聞」 倉坂鬼一郎「老年」 金原ひとみ「ミンク」 木の下古栗「デーモン日暮」 藤野可織「今日の心霊」◎ 川口晴海「壁」高原英里「グレー・グレー」

  • 好:小栗虫太郎「失楽園殺人事件」/倉橋由美子「醜魔たち」/塚本邦雄「僧帽筋」/中井英夫「薔薇の縛め」/吉岡実「僧侶」/金井美恵子「兎」/山尾悠子「傳説」/皆川博子「春の滅び」/乙一「暗黒系 Goth」/小川洋子「老婆J」/中里友香「人魚の肉」/高原英里「グレー・グレー」

  • ゴシックとはなんぞや。その概念を知りたい。との興味で読んだ。
    全39編の小説、詞歌、随筆。途中挫折。約一年後、再開したものの、「うへぇ」などと呻吟しながらも先が気になり後ろめたく読んでしまうのがゴシック小説なのかもしれない?などと考えた。『後ろめたく』が肝。
    単純に拒否というか無理なのもあり、自分の理解度の低さに歯噛みするのもあり、美しい描写でおどろおどろしい話を綴るのもあり。
    三島由紀夫「月澹荘綺譚」、中井英夫「薔薇の縛め」、古井由吉「眉雨」、赤井瀑「花瀑れ頭」、乙一「暗黒系Goth」、京極夏彦「逃げよう」が良かった。
    吉田知子「大広間」笑ってしまったのは不正解か。
    倉橋由美子さん、読みこなしたかった……。

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