- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480438713
作品紹介・あらすじ
再評価が進むマッカラーズの短篇集。奇妙な片思いが連鎖する「悲しき酒場の唄」をはじめ、異質な存在とクィアな欲望が響きあう触発の物語八編を収録。
感想・レビュー・書評
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マッカラーズの写真に魅せられて。解説にあるように広義な意味のクィアな人達の物語。『悲しき酒場の唄』が強烈であり美しい。『木、石、雲』『天才少女』『マダム・ジレンスキーとフィンランド国王』『そういうことなら』が良かった。
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妻に逃げられた老人が愛を語る「木、石、雲」がよかった。この短編では消えた妻への行き場をなくした愛が世界に向かうのだが、なんというか、年を取ると慈しむ力が増す感覚はわかる。
ほかのどの話も、感情のバランスが傾いたままの人がどうにかこうにか生きる様が描かれていて、そういうこともあるだろうねと思いながら読んだ。有名な「悲しき酒場の唄」は、自分の好みからするとキャラが劇場的過ぎるので、むしろ演劇版で観たいかも。ミス・アメリアはフランシス・マクドーマンドで。 -
「悲しき酒場の唄」が中編で、他に短編が7編。短編は「木、石、雲」と「渡り者」が好き。
全体的に、愛と孤独がテーマなのかな。愛するがゆえに感じる孤独というか、愛と孤独をこじらせたような人がよく登場する。独特な雰囲気があって好きな作家だ。 -
元夫婦のふたりが殴り合いで決着をつけるというのが面白過ぎた(表題作)。良い人(報われるべき人)が出てこなくて、ひどいことが淡々と描かれ、それによって得られる教訓もない。できごとが人々の体をただ通り抜けていくという感じ。
一番印象に残ったのは「木、石、雲」。短いけど胸をつかまれる。小さい「大丈夫」のかけらを懸命にかき集める日々。 -
初のマッカラーズ作品。
想像以上に良かった。
とくに『悲しき酒場の唄』。
あの終わり方。しびれた。
そのあとの短篇も良かった。 -
私にとっては村上春樹訳の「心は孤独な狩人」で知った作家だが本書もとても面白かった。「悲しき酒場の唄」のミス・アメリアにしても「マダム・ジレンスキーとフィンランド国王」のマダム・ジレンスキーにしても、異質で浮世離れしている。女性作家として、男性から見たいわゆる魅力的な女性を描かない。ほぼすべての作品が持つ、世間的な幸せからのズレ、「変人」として生きる人々、そして豊かな音楽性が、村上春樹にとっても翻訳したいと思う魅力になったのではないか。と、村上ファンとしては思う。
翻訳者はレベッカ・ソルニットを訳している人だ。小説向けにこなれていないのか、「そういうことなら」のあねき呼び、2023年発刊の新約にしてはずいぶん古臭くないか?現代にあねきと呼ぶティーンエイジャーはいないだろう。翻訳とはそういう部分含めた表現だと思うのだが。 -
「クィア(Queer)な人たち」の短編集、ということに惹かれて手にした一冊。
彼女の作品は、たしかにQueerな人たちが多く登場するが、ちょっと変わっていることと、とても変わっていることも、変わっていないことの差は何だろうか。
みんな誰しもちょっとずつQueerなのではないだろうか。
そう気付かせるほど、彼女は一般的に言われるQueerなひとたちのことをとても優しく、柔らかく包み込んで描いている。
それでいい、と言ってもらえているような、そんな温かさがある。
優しい気持ちになりたい方は、ぜひ。 -
1940~50年代に活動した米国南部出身の女性作家、マッカラーズ。どの作品も寂しいね孤独だねと、いたたまれない気持ちに包まれる。寂寥や独りが嫌だから他者と関わるが、関わるほど相手が分からなくなり、より侘しさが募る。その姿がほろ苦くて胸に残る。