伝わる文章の書き方教室 書き換えトレーニング10講 (ちくまプリマー新書 151)
- 筑摩書房 (2011年1月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480688538
感想・レビュー・書評
-
書き換えをしまくることによる文章力向上のトレーニング法。確かにカナリの語彙力、表現力、論理力の向上につながる。書き換え手法として、和語と漢語、使用禁止文字(「あ」使用禁止など)文字数制限。空間描写力。主語無し文。構成逆転(結論から仮定を紐付ける)。辞書に何と載せるか考える。などなど、様々な書き換え手法が紹介されており、作文というより、推敲による文章力を磨くメソッドがつづられている。文章力向上を望んでいる人は垂涎の一冊。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『「伝わる」文章を書くためには、必要な要素が少なくとも3つあります。語句を選んで使う力(語彙力)、出来事や様子などを的確に表現する力(表現力)、そして、物事を筋道を立てて述べる力(論理力)です。』
辞書の編纂委員であり大学で「レポート・論文の書き方」の講義を担当している著者は、その授業等のレポートを読んで、「伝わる」文章を書くための3つの力を無理なく伸ばすには、どういうトレーニング方法が適当だろうか、と考えた。
それで作ったのが、本書で紹介しているゲーム感覚で楽しんで行える「書き換えトレーニング」というわけです。
実際、読みながらトレーニングをしてみたものの、一朝一夕では身につくものでもなく、ただ確かに勉強というよりはゲーム感覚で楽しんでできる内容であった。
今後、再読の上、意識して文章トレーニングを行う必要性を感じた。
【参考図書等】
・「日本語練習帳」(大野晋) -
文章を分かりやすく書き換える、いわゆる推敲の指南書。エッセイや小説といった文学的な文章ではなく、自分の見たこと考えたことを、正確に、論理的に伝えるための文章を書けるようになるためのトレーニングの本である。
著者は、分かりやすい文章を書くための力を「語彙力」「表現力」「論理力」という三つに分けており、各章でそれぞれの力をつけるためのトレーニングが紹介される。個人的には、「描写力を付けようー視覚情報を文章に置き換える」と「客観的に書こうー感想を含まない文に書き換える」の二つのレッスンが特に参考になった。
「描写力を付けよう」では、地図を参考に道行きの風景を描写したり、薬研を例に、見たことがない人に向けて、特殊な形状をしたものを説明したりするトレーニングから始まる。面白かったのは、夏目漱石『門』の描写から登場人物宅の間取り図を書くのと、大岡昇平『俘虜記』に出てくる収容所を、イラストを参考に文章で描写するというもの。普段から小説を読むが、この手の建物の描写などは、何気なく読み飛ばしていて、書かれた内容からどのくらい元の映像を復元できるかは考えたことがなかった。復元作業を通して、文豪の描写の緻密さに驚いた。
「客観的に書こう」では、「〜と思う」や「かわいそう」などのように、主観的な感想を述べる表現を除いて、文章を客観的に書き直すトレーニングが紹介される。最初に行う作業として、文章の内容を変えずに、単純に「思う」で終わっている文を断定する形に直すことから始める。面白いのは、「思う」を外しただけで「言っている内容がおかしいのでは」と感じる文が出てくることだ。
筆者は、多くの「思う」が、事実として主張すると無理が出てくるところにつけて「これはあくまで私の感想です」とすることで逃げようとする「逃げの『思う』」だと言う。自分が文章を書いているときも、やりがちである。「思う」とか「思われる」とかいった表現を断定形にするだけでも、その主張は成り立つかを確かめるセルフチェックになる。
自分の文章、何となく分かりづらいと思う人はもちろん、そうでない人も、自分の文章が、本当に「伝わる文章」になっているかを反省するのに、よい本だった。 -
日本語の上手い書き方を伝授してくれる面白い本だ.どの部分もためになるヒントが満載だが、"主語を使わずに書き換える"と銘打ったレッスン4が良かった.主語を示さずに行為者を示すルール(p74)は、普通に日本語を読んでいる時には気が付かないので、非常に参考になった.確かにルールとして列挙することは上手いやり方だと感じた.
-
語彙力・表現力・論理力の3つに分けて、それぞれをゲーム感覚で鍛えるレッスンを紹介している。
語彙力は「特定の文字を使用しない・字数を制限する。和語を漢語に、漢語を和語に置き換える」
表現力は「主語を使わずに書き換える・視覚情報を文章に置き換える」
論理力は「が・てを使用せずに文をつなげる」これは文の論理関係に適した接続詞を探すレッスン。
「感想を含まない文章にする」ここが最もためになった章である。
「~と思う」に代表される個人の感想を論理的な客観的な文章に混ぜるとその時点で論理が破綻する(客観的な論証の過程に主観が混じっては結論の説得力がまったくない)。そもそも「~と思う」と消すと違和感が出る文章は、論理が破綻している(個人の意見で論理を構築している)のを「~と思う」でごまかしている、と厳しい指摘もあった。
まとめの「わかりやすい文章にする」で難解な大正期の文章をわかりやすくしている。わかりやすくした結果原文にある威厳は消し飛んでしまって身も蓋もなくなっているが、原文を誤読していたことが発覚して恥ずかしくなった。
全てのレッスンを実施するのは大変だ。せめて「~と思う」はなくしていきたい(こうやって文末を~たいで終わらせるのも個人の感想という指摘あり。でもこれは本の感想だし仕方ないでしょ) -
非常勤教員になってみて、自分の文章をもっと磨かないといけないなと再認識したので買ってみた。例文添削方式なので、構造が解りやすくていいですね。
ちくまプリマ―っていい本が多いね。
これはいい本だった。要約や「なぜなら」型は実践してみたいと思う。 -
具体的な訓練内容が書かれていておもしろい。実践できそうだ。
ある一語を使わないで文章を作る練習をせよ。
なるべく文章の語数を短くする訓練をせよ。たとえば1000字の文章を500字で書くとか。
漢語と和語を使い分けよ。混合文は読みづらい。
主語を入れすぎるとしつこい文章になる。
~が~で、のあとは、行為者が変わる。「が」は前半の主体者を強調するとともに、後に続く主体者とは違う意味がある。
視点が自分にある言葉を使うと行為者が区別できる。たとえば、行く、来るを使い分ける。
説明文では比喩を用いよ。
論理的文章を意識せよ。
結論から書くと相手も理解しやすい。
結論→理由→具体的例
↓
自分に問いかけながら問題→結論→理由という流れで文章を書いていくべし。
自分の感情をなるべく書かない文章を書く訓練を。
単文の集まりを、一文にしてみる訓練もよい。
歴史書は近代からさかのぼっていく書き方も良い。たとえば、昭和時代がこうだったのは大正時代がこうだから。明治時代がこうなのは江戸時代がこうだから、と。