辞書を編む (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037383

感想・レビュー・書評

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  • 先日NHKのBSで「ケンボウ先生と山田先生」という、三省堂の二大辞書―『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』を編纂した二人の国語学者、辞書編纂者の物語が放映された。ぼくはそれまで二人の名前はよく知っていた。見坊さんのことも多くの著書を通じて知っていた。しかし、二人が戦後大学を出てすぐ、金田一京助という(本人はほとんど辞書の編纂に興味がなかった)国語学者のもとで辞書編纂に従事し、その後たもとを分かつことになったことは知らなかった。そして、愛用する『新明解』も見坊さんがからんでいるとばかり思っていたが、見坊さんがずっとかかわってきたのは『三国』の方で、『新明解』は山田忠雄さんが中心となって編纂されてきたのだった。(さっそく本屋へ『三国』第6版を買いに行った)その『三国』は現在第6版が出ていて、今年末には第7版が出るそうだが、その7版の編纂の裏話、苦労を書いたのが本書である。用例採集といえば見坊さんの145万?の用例カードが有名だが公私に関係なく、どんなときでもカードに取るその姿勢は、とてもまねができないし、こんな人と人生をすごした奥さん、家族はたいへんだったろうなあという気がする。(今ならだれも結婚してくれないだろう。むしろ、独身を貫き通すべきだ)飯間さんは、見坊さんまではいかないまでも(むしろ奥さんの視点に助けられたりしている)、日夜カメラをもって、珍しいことばを採集し、電車の中でも雑誌を読み、該当箇所をやぶり折る作業を続ける。(ぼくも中国へ行くとカメラをもってこれはという字を撮り回るから、しばしば妻において行かれる)辞書編纂の過程で、飯間さんが最も力を注いでいるのはやはり語釈で、カピバラという動物の語釈を書くために動物園に行ったり、キャバクラを書くために(人に連れられてではあるが)現場に足を運んだりする。そういう努力も辞書の上ではせいぜい2~3行で書かなければならない。百科項目を国語辞書としてどう記述するかも興味深かった。ぼくがひとつ気になったのは、飯間さんの名前が第6版では表紙になく、裏表紙にしか出ていないということである。第7版では出ていることを期待したい。

  • 好奇心のベクトルが裏方作業に向きがちな私には、とても興味深い本でした。

    著者は、三省堂国語辞典の「編纂」を担当している人。第7版という実際の改訂作業をベースに、追加掲載の言葉選びや、説明書きの文章を紡いでいく過程、既掲載の言葉の手入れといった編纂作業の一部について、著者の編纂作業の時間経過と同じ流れで、しかも、分かりやすく誤解がないように…という辞書編纂者ならではの配慮に満ちた(?)文章で紹介されています。

    辞書といってもいろいろあることは知っていて(読みものとしての可能性で一世を風靡した『新解さん』(新明解国語辞典)とか…)、それぞれ掲載される用語も説明文も違うので何かそれなりの理由があってのことだろうと、ぼんやり思っていたけれど、ボリュームだけではなく、誰がどのように使うものなのか、何を伝えるのか、という大きな編集方針のもとで編纂作業が進められており、その成果が各辞書の個性になっていることがよくわかりました。学生時代に辞書を買うとき、紙の質や文字の大きさくらいしか見ていなかった私って…と、今さらながら、反省した次第です。

    著者が携わっている三省堂国語辞典は、特に生きた日本語の掲載や解釈に力を注いでおり、編纂者たちは、世の中の言葉や用法に常に興味関心を注ぎ資料を集める想像以上に地道でアナログな作業をしているとのこと。さらに、編纂者が作る説明文の原案とそれに込めている思いと、どんな理由、議論を経て最終形に落ち着いたのか、というくだりも面白かったです。「右」をどう説明するのか、「カピパラ」の顔をどう表現するのか、恋愛関係の用語の語釈への「男女」「異性」の記載についての検討など。出来上がった辞書にある、シンプルで自然に読み流してしまいがちな説明文には、言葉と向き合う人たちのこんなに熱い思いや奮闘があったのかと驚きました。

    内容は辞書編纂の裏話ではあるものの、プロとしての責任感やプライド、世の中の変化にアンテナを張り巡らせ柔軟に考える姿勢、そして何より、おそらく傍から見たらものすごく地味でハードで退屈?かもしれない仕事に楽しみを見つけて取り組んでいるところは、仕事に向き合う姿勢として学ぶところがあるなぁとも思いました。

  •  飯間浩明 著「辞書を編む」を読みました。

     著者は、「三省堂国語辞典」の辞書編纂者。2013年末に発売予定の第7版の改訂作業をめぐる知られざるエピソードを通じて辞書の魅力を伝えてくれる。

     たまたま新聞で紹介されていたので、手にとってみたのですが、読み出したら止まりませんでした。

     辞書の改訂にこんな人たちの苦労やドラマがあったとは、想像もできませんでした。

     街中での言葉の用例採集など、少なからず言葉に関する仕事についている自分にとって、とても興味をもそそられました。

     また、普段は実用的にしか辞書を扱うことはなかったのですが、この本を読んだことで、辞書の物語を想像してしまいそうです。

     文庫化を待ち望んでいる、三浦しをんの「船を編む」はまだ未読なので、この本を読んだことで、一層読むのが楽しみになりました。

     辞書によってその特色や魅力があることもこの本を通じて改めて考えさせられました。

     そして、もちろん年末発売予定の第7版は絶対買おうと心に決めました。

    • katatumuruさん
      こんにちは~(^^)

      「うなぎ鬼」はタイトルもインパクトがありますが、内容もかなりヘビーで読み終えた後、暗~い気分になってしまいました(-...
      こんにちは~(^^)

      「うなぎ鬼」はタイトルもインパクトがありますが、内容もかなりヘビーで読み終えた後、暗~い気分になってしまいました(-_-)

      キマイラシリーズはバイオレンスものですか。
      何となくこれも凄そうですね。
      夢枕獏さんの書くものだけに容赦がなさそうです^^;

      私もまだ有名な「舟を編む」は読んでないんです。
      図書館で借りて読むので、人気作は人が読まなくなった頃に読む・・・という風になってしまいます。
      2013/08/20
  •  リアル『舟を編む』を読む、ぐらいの軽い気持ちで手にとりましたが、編纂方針の違い、特長に注目すれば、目的に合った国語辞典を選べるということがよく分かり、期待以上に実用的でした。『三国』は中学生にでも分かる説明を心がけているとのこと。第7版発売のあかつきには購入したいものです。

     本書が中学生にとって面白いかどうかは微妙なところですが、『舟を編む』を面白く読めた子にはすすめてみたい。出来上がったものを使っているだけではおそらく気づかない、すべては人の労苦の結実だということに、せめて気づいてくれたらと思います。

  • そもそも「辞書の違い」って知ってますか?
    この本を読むまでは、収録数の違いくらいだと思っていたけど、辞書ごとに「編集方針」があるそうな。著者は「三省堂国語辞典」の編集委員ということで、三省堂国語辞典のできるまでが克明に書かれている。ちなみに、こちらの辞書は「中学生にでも分かる説明」をモットーにしている。なんだか、とっても簡単なような気もするコンセプトではあるが、なかなかに奥が深い!ちなみに、この辞書は「ものを書く人」や「スピーチ」を良くする人が言い回しなどを調べるのに、重宝するらしい。これは久しぶりに辞書を手にしたくなってきたぞ!笑

    文字の専門家が書いた本だけあって、とても読みやすいのに、読み進めるごとに「なるほど!」が随所に散りばめられている。

  • 舟を編むを観て、しばらく経ってから本屋さんで発見。映画にはそんなに出て来なかった語釈の大変さも分かったし、辞書毎の特色なんかもわかりやすかった。今欲しい辞書はもちろん新明解と三国。

  • 映画と原作の後は、実際の編纂の現場を見てみよう。これがなかなか面白い。ちなみに我が家の国語辞典は「三国第7版」です。

  • 辞書作りのドキュメンタリー作品。
    この本を読めば、辞書の見方が変わります。
    辞書とは、とてつもなく、地味で、途方もない努力の末に作られている、一つの作品であることがわかります。

    辞書づくりは、世界(街、書籍、テレビなど)でどのようにことばが使われているか、まずは、うん千、うん万という事例を採集。でも、辞書に書くほどでもない、一般化されているとは言い難いことばたちは、辞書に入れてもらえずに、編集会議でボツにされて。生き残ったことばたちに待っているのは、定義づけ(語釈)。

    この定義づけが、おもしろい。時代がかわれば、ことばの語釈もかわる。
    例えば、愛。昔は「男女」の間にある思い合う心、みたいに書かれていたのですが、今は「男女の間」が取られていたり、とか。

    本書の最後に、辞書とは、「ことばで世界の模型をつくること」と書いてありました。
    つまり、「世界にある事象一つ一つを、私は、ことばで説明すると、こう解釈しています」と。素敵な考え方だと思いました。

    良い仕事ですね、すばらしい!

  • 国語辞典編集の作業を紹介したエッセイ。
    章タイトルに沿ってざっと見れば「辞書の方針を決める→用例を集める→どれを載せるか決める→説明文を書く→既に載っている言葉を手入れする」となる。
    用例を採集し、そこから普遍的な語義と呼べるものを抽出する営みは、データや標本を集めて理論につなげる自然科学と似通っている。扱う相手が違っても、やっていることは同じくサイエンスなのだ。
    以前、著者の飯間氏がTwitterで「『乱れた使い方』を厳しく指摘することを私に期待する人がいるが、そういうことはしない」といった趣旨のことを言っていた。サイエンスという立場から考えれば当たり前のこと。変わった虫を捕まえたら喜び、新しい知識体系を紡ごうとするのが研究者であって、あるべき理論に沿わないからとその虫を潰すのは研究者ではないだろう。
    最終章で電子辞書やWikipediaにも言及がある。自分としては編集そのものより、用例採集について、ネットは革新を起こしうるのではないかと思う。イメージとしては星や鳥について、全国の愛好家から寄せられた観察データを専門家が活用できるような。
    それにしても、ことばをことばで説明するという行為は奥深い。手元の辞書の語釈をしみじみ熟読してみたくなる。

    p230で、各社国語辞典の特色を比較。使い分けに役立ちそう。
    ・そのことばが正しいか間違いか:岩波国語辞典、明鏡国語辞典
    ・そのことばがいつ頃から使われているか:新潮現代国語辞典
    ・そのことばがいつ頃から使われているか(明治以前も):新潮国語辞典、広辞苑、大辞林、大辞泉、日本国語大辞典
    ・そのことばについて、その辞書なりの解釈を知りたい:新明解国語辞典
    ・そのことばが、今、広く使われているかどうか:三省堂国語辞典

  • 面白い。
    辞書というものを、いろいろな人がその辞書の特色のもとに編纂して作っているという考えてみれば「当たり前のこと」を改めて認識できた。
    最近は、わからない言葉が出てきたら即スマホのブラウザで検索というパターンばかりだったが、辞書を買って引いてみることにしよう。

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著者プロフィール

飯間浩明(いいま ひろあき)
1967年、香川県出身の日本語学者、辞書編纂者。『三省堂国語辞典』編集委員。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得。代表作に『辞書を編む』があり、その他著作も国語辞典や日本語にまつわるものが多い。

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