- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480770110
感想・レビュー・書評
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さまざまなかたちで〈旅〉をテーマにした短篇集。
トーベ・ヤンソンの小説、面白ッ!無駄のない簡潔な説明で知ってる人のように性格が浮かんでくる人物描写は彼女のイラストのようだ。たっぷりの皮肉が込められたユーモラスで軽い語り口。会話も面白い。環境破壊問題が物語に組み込まれているのもさすがだし、それを語るのがめっちゃ生意気な子どもだったりする。以下、特に気に入った作品について。
◆往復書簡
日本の少女から届く手紙。ムーミンのアニメ放送時、実際にこんなファンレターがたくさん来たんだろう。会いにくることにはノーと返しているけれど、トーベには彼女の苦しみもわかっていたのだと思う。
◆八十歳の誕生日
八十歳にして美術界を牛耳る巨匠の女性アーティスト、という祖母のキャラが迫力あって面白い。誰かのミューズではなく、自立して批評家を恐れさせている祖母。アーティスト一家ならではの造形という気がする。
◆思い出を借りる女
ヒステリックで感情的な女と冷静で余裕綽々な女、という二人の印象が会話を通じてじわじわと反転していく。こわい。ユーモア小説として書いているような気もするが、エレベーターの描写とか完全にホラー。タイトルを見返したときにヒィッとなる。
◆エデンの園
スペインを訪れたイギリス人の主人公が、女二人の隣人トラブルに探偵気分で首を突っ込んでいく。並行して主人公もかつて親密な関係にあった女性に仲直りの手紙を綴るのだが、送る前に相手は亡くなってしまう。そこで隣人トラブルについてもどちらが悪いのかという野次馬的な好奇心が去り、とにかく平和的に仲直りさせる術を考えだす。隣人同士の喧嘩がエスカレートした本当のわけも、主人公と親友が疎遠になった理由も明かされない。結末はこのコミュニティの仲間に入りたいかなぁ、と疑問に思ってしまったが、同性同士のめんどくささとどうしようもなさをユーモラスに描いて面白かった。
◆植物園
こんなに真正面から偏屈じいさん同士の友情を描いた小説って初めて読んだかも。全世界の偏屈じいさんに読んでほしい。お互いに仲良くなりたくないと思っている者同士だからこそシンパシーを感じ始めるのが、表題作「軽い手荷物の旅」と真逆。老人ホームに嫌気がさしているじいさんと、家族のなかでの存在感の薄さを自覚しているおじさん。でも小さな野原を守ったことが誇りなおじさん。じいさんが死なないでちゃんとベンチに戻ってくるのもいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トーベ=ヤンソンの短編集。
オチのない話が多い印象。
読んでいてモヤモヤするので途中で脱落。 -
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2012/09/19
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>nyancomaruさん☆
そうですね~。
思いっきりムーミンフィルターで最初読んでたので辛口の作品は最初驚きましたが、どちらも好きです...>nyancomaruさん☆
そうですね~。
思いっきりムーミンフィルターで最初読んでたので辛口の作品は最初驚きましたが、どちらも好きです。2012/09/20
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予想しているよりずっと文学してた。
翻訳の調子のせいか、なんとなく教科書にでも載ってそうな感じ。
いつかもう一度読みたいですね。 -
ムーミンの作者で知られるフィンランドの作家トーベ・ヤンソンの短編集
「軽い手荷物の旅」など全12話
タイトルとムーミンのイメージから、牧歌的なものを想像していた
描かれていた物語は全て、何か不穏な匂いの漂うもので、全体の一部をスッパリ切り取ったようなお話ばかり。
探究心旺盛な時は、一文字ごとに想像力を膨らませ、勝手に物語を夢想してしまう。
疲れている時は、なんのことだかさっぱりわからないまま。
不思議な国フィンランドってところですか…… -
ムーミンの原作者として有名なトーベ・ヤンソンの大人向け短編集。「旅」をテーマに綴られる様々な人の心の描写は、写実的で俯瞰した距離感を保つと同時に、当人の感じているもどかしさや抉られるような痛み、例えようもない戸惑いが手にとるように感じられる切実さも併せ持つ。
語り手と作家の内面に深くひたすらに入り込んでいくような内省的な文章は、とても私好み。ただ、それゆえに一度では噛み砕ききれない部分も多々あって、今後何度でも読み返すことになる予感がする。 -
図書館にて読了。タイトルと同名の短篇に出てくる語り手(主人公)の人柄が、私はとても好きです。良い人なんですが、とってつけたような善人ではないところがなんとも...。どういう状況かわからないけど不穏な空気が漂っていたり、ちょっと情緒不安定な人々が叫んでいたり、なんとなくいい関係だなと感じたり、一冊で色々な人間模様を楽しめました。
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12編の話の切り口が、まったく違っていて
読む楽しさがありました。
どの話も、余韻が残ります。 -
よりどころのない人たちの旅に関する短編集。そして、私たちがいつでも目に入るものすら見過ごしてきたことについて。