話虫干

著者 :
  • 筑摩書房
3.19
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本棚登録 : 674
感想 : 148
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804396

感想・レビュー・書評

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  • ☆☆☆3つ

    なんとも不思議な感じの物語でございます。
    「話虫干」とはなんぞや、と思った読者の問にマヅは答えてくれてからお話は始まります。でも一向に真の物語らしき部分はわたしには見えてきませんでした。
    いや、面白くなかったとか、著者の言いたい事が分からなかったとか言うつもりは無いのですが、最後まで見えなかったというのが正直な感想です。すまぬ。

    (大塚まさじ、という古くからの歌い手さんが書いた『旅のスケッチ』という本を読んで、まさじさんの他の著書やら曲やらに興味を持って、あちこち調べて見聞きしています。二年ほど前に高田渡という人の『バーボン・ストリート・ブルース』という本に触れた時と少し似た状況です。ただ決定的に違うのは、まさじさんはまた会えるけど渡さんにはもう絶対に会えない、という事。なにやらこの『話虫干』と意味通づるところがあったので書いてみました。再びすまぬ。)

  • 面白かった…かな??と、少し首を傾げてしまう。
    前情報なくなんとなくタイトルだけをみて読みたいな、と思っていたときに期待していたのは、明治から大正昭和の和洋入り混じる瞬間の時代のお話。
    実際は、話虫(はなしむし)という特殊な虫に既成の本の粗筋が荒らされ書き換えられてしまうため、その虫を駆除、つまり虫干しをしに本の世界に入り込む、現代に生きる図書館員糸井さんのお話だった。

    今作で話虫が荒らしていたのはあのこゝろで、私なんかは教科書に掲載されていた一部しか読んでいないけど、糸井さん主観の榛さんと内輪で話す章の前までで、あれ、何かに似てるな?とは思って読んでた。
    だから糸井さんのその章を読んで、これはSFだったのか、とようやく気づいたの。
    でも、糸井さんの方法を取るなら、死ぬ運命にある登場人物はみんな生かしてほしいし別の本を用意しなくてはいけなくなるんじゃないのかな…。

    作品だけではなく、文豪御本人にも関心がある人ならもっと楽しめたのかな、とは思う。
    おお小泉八雲、おお夏目漱石、と。
    でも私には物足りなかった。結局火鉢さんの正体があの人であったのか、最後東京でこゝろの主人公である二人が入っていったお店の名前だとかで暗示しているのかもしれないけれど、もう少しはっきりしてほしかったかな。
    飛ばしすぎなところもあるような気がするから。エリーズさんの登場の糸井さんと火鉢さんのやりとりとか、鎌倉への旅行とか、ラストも。

    設定は面白いから、もう少し長くしっかりと書いてほしい。

  • うーん。出だしは、ときめいたんだけどなぁ。「話虫干」とは、みんなに愛されて読まれている文学の名作が、「話虫」の仕業によって、勝手に筋を変えられていく、謎の現象に対処すべく、物語のなかに入り込んで、元通りの筋にもどすお仕事。そして今回入り込むのは、漱石の「こころ」ときた。
    うわぁ!こういう発想いいね!本好きにはたまらないし、うわーそんなら私ならあの作品に入りたいいや私なら、と、本好き同志で盛り上がれそうなステキな設定。
    だったのに、うーん。すっきりしなかった。ごちゃごちゃと登場人物が増えて、ハケ方もあっさりしすぎてたし。結局なんだったの?感。もっとこー、あるだろうよー、Kがちがう人に恋しちゃうとかさ。Kとお嬢さんがめっちゃ喧嘩しちゃうとか。もしも、こうだったら、、ていう意外性の方向が違うっつーか。話虫の正体だってはっきりしないし、漱石と啄木のつながりについても、もっと想像で、こうだったとしたら面白いよねって肉付きがほしいよね。設定はファンタジックで素晴らしいのに、ぜんぜん「こころ」の世界に入った楽しさが伝わってこなかった。斜陽とかに入ったほうがおもしろかったんじゃないの。この設定のまま、糸井くんの続編、出てほしいですね。べつの話で読みたい。

  • 何気ない日常
    親しい友人
    しかしふと感じる疑問
    この友人とはいつ知り合ったのだろうか?
    私はいつから彼のことを知っていたのだろうか?
    彼はこの世の人間なのだろうか?



    発想はすごく面白かったです。
    名作をちゃんと読んでいて、ある程度文豪達の知識がある人なら、より楽しめるのではないかと思います。
    ただ、ラストの畳みかけ方が少し急だったかなと…。
    ですが、素敵な友情の話です。
    悲しい結末よりは、好きです。
    三人の物語が、実り多く幸あるものになることを願います。

  • 本好きなら思わず武者震いしたくなるようなSFファンタジーです。
    夏目漱石やホームズに、小泉八雲や啄木まで絡んで、舞台があの「こころ」なのですから、普段は何でもありのSFを避けて読まないのですが、これは惹かれます。作家が小路さんですから、面白くない理由がない。最後の落ちは、「こころ」を愛する読者目線で書かれているのが感じ入りました。
    小路さんと共通の好みを発見して、ますますこの作家が好きになりました。

  • 話虫を干す話虫干し作業をする話

    最初、なんかに似てる~とか思いながら読んでたらそういうことでしたか!と納得しました。
    だいぶ昔に「こヽろ」を読んだので細かいところは忘れてる自分が残念。
    もう一度読まなきゃって気になりました。
    ちょっと尻すぼみ感はあるけど、私も彼らと生活を共にしたら「こヽろ」を知る者としては同じようにしてあげたくなるよね。
    違う名作でも話虫干してほしいです。

  • 本の物語に自分が存在しているというのは羨ましくもあり、まさに読んでるときの感覚はそれだなぁ…と、主人公をみて思いました。羨ましくなる本です

  • どこかずれた物語。舞台は小説「こゝろ」。

    本の中に入り込んで、物語をめちゃくちゃにしてしまう「話虫」。それを退治し、物語を正常な状態に戻す「話虫干」。
    小説「こゝろ」の世界が改変された。
    出てこないはずの登場人物、どころか作者まで現れた。
    登場しないはずの登場人物の誰かが話虫である。話虫干遂行中図書館員の糸井は、「私」と「K」の友人になりすまし、話虫が何者かを探っていた。が、相手はなかなか尻尾を掴ませない。登場人物は益々増えて…

    どこに落ちるかわからず、やきもきしながら読んでいました。
    しかし残念なことに、私は「こゝろ」を読んだことがない。粗筋は知っていますが。古典文学苦手。知っていればもっと面白かったかもしれない。

  • 夏目ファンならこんな状況になりたいだろうなぁ。

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著者プロフィール

1961年、北海道生まれ。広告制作会社勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で、第29回メフィスト賞を受賞して翌年デビュー。温かい筆致と優しい目線で描かれた作品は、ミステリから青春小説、家族小説など多岐にわたる。2013年、代表作である「東京バンドワゴン」シリーズがテレビドラマ化される。おもな著書に、「マイ・ディア・ポリスマン」「花咲小路」「駐在日記」「御挨拶」「国道食堂」「蘆野原偲郷」「すべての神様の十月」シリーズ、『明日は結婚式』(祥伝社)、『素晴らしき国 Great Place』(角川春樹事務所)、『東京カウガール』『ロング・ロング・ホリディ』(以上、PHP文芸文庫)などがある。

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