未知の鳥類がやってくるまで (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.88
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本棚登録 : 167
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804945

作品紹介・あらすじ

「行列」「開閉式」「東京の鈴木」などに書き下ろし「未知の鳥類がやってくるまで」を加えた全10作の短篇集。SF的、幻想的、審美的味わいと本をめぐる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 幻想小説または奇想小説というべきか。不思議な世界を描いた短編集。既視感がある文体やストーリー展開と感じたのだが、何が原因だろうか。大きなカタルシスを感じることがなく、とはいえもう少しで気持ちがいい領域に行きそうなところまでは感じた。私にとっては苦手な部類に入る作品である。だが、もう少し読んでいけば癖になる可能性もある。好みだったのは、「行列」と「箱」。「行列」には美しさを感じたし、「箱」では田舎で代々伝わる習わしのような怖さを感じた。

  • 何の情報もなく読み始めたので(恥ずかしながら著者のお名前さえも知らなかった)、まだ発見されていない鳥の話だと思っていた。
    わたしは鳥が大好きなのだ。
    でもこの本は違う。

    最初の『行列』を読んだとき「あぁ、こういう感じか」と思った。とても感覚的な文章。ストーリーではなく、言葉の美しさや行間の静けさ、ここから受け取ったイメージを自分の心に投影して、それを眺めるような。
    わたしには難解過ぎるのではないだろうかと思ったが、読み進めてみるとなかなか面白く、『箱』『東京の鈴木』『開閉式』「一生に二度」など楽しく読めた。

    とはいえ、ストーリー性を重視する傾向が強い最近のわたしには、少し不向きな短編集だったかなと思う。

  • 不思議な読後感。ページを捲ると、ひゅん、と一瞬で別の世界に連れていかれるような感覚。別の世界というか、日常と非日常の隙間にストンと落ちる感じかも。
    表題作と「おまえ知ってるか、東京の紀伊國屋を大きい順に結ぶと北斗七星になるって」が好きだった。

  • 絲山秋子賞を受賞したということで、これは読まねばと手に取った。
    どれもアイデアが斬新で、瞬発力のある短編ばかりだった。驚くようなどんでん返しやオチにむけて話が進んでいくわけではなく、そのつどの場面転換に意外性があって読ませる。

  • ひとつひとつの長さも、言葉も、
    なにがではなくいい。
    静かで青く霞んで、寂しくて、ちょっと優しい。
    ちょっと小難しく振る舞うのも好き。
    並んでほしい漢字や言葉があるのも好き。
    10個のおいしい飴
    .
    行列(プロセッション)
    おまえ知ってるか、東京の紀伊國屋を大きい順に結ぶと北斗七星になるって

    未知の鳥類がやってくるまで
    東京の鈴木
    ことわざ戦争
    廃園の昼餐
    スターマン
    開閉式
    一生に二度

  • 2020.12.26市立図書館

  • 未知の鳥類がやってくるまで 西崎憲氏
    幻想と日常のはざま描く
    2020/5/16付
    日本経済新聞 朝刊
    翻訳家や音楽家など多彩な顔を持ち、8年ぶりとなる小説作品集を刊行した。「日常と何かが違う『気配』や『感触』を書きたい」。現実と非現実が溶け合う幻想的な短編を10作収める。「人間の想像力や夢を核にした」短編集だ。

     にしざき・けん 55年青森県生まれ。作家、翻訳家、音楽家。文学ムック「たべるのがおそい」の編集長を務めた。著書に『世界の果ての庭』『全ロック史』など。
    「みんな理屈がわかった顔をして生きているけど、実際は世界の9割ぐらいのことは分かっていない」「不思議なことや解釈できないことの裏にも暗号やコードが隠れている。そのコードが分からないように書くと、こういう小説になる」
    現実に似ているようで、どこかねじれた奇想の世界をつづった。「不思議なことを作為的ではなく淡々と書ければ」との思いでつづった文章は、大げさでなく静かで美しい。
    書き下ろしの表題作は、出版社に勤める主人公が校正刷りを無くしてしまうところから始まる。台風の日の深夜に開いているレストランや、早朝から上映する映画館など、現実と夢の境のような場所を描く。「執筆の2週間前に台風が来た。誰もいない駅などの非日常感が強く頭に残っていた」という。
    「春と夏、昼と夜の境はいつなんだろうとよく考える。人間も友達と話すときや会社にいるときなど、いくつも人格を持っていて、そのボーダーにこそ人間の状態が表れている」。ものごとの「境界」が溶け合う空間を表現した。
    物語のプロットは「朝起きたら頭の中にある」。日中に考えていたことが、明け方に夢うつつで形になるのだと明かす。「相反するものを結びつける詩的な考え方」が発想のベースにあるという。
    どの作品も、幻想に酔っているうちに終わりを迎え、狐(きつね)につままれたような余韻が残る。「繰り返し読める重層的な作品」をめざしたという通り、ページをめくるたび新しい印象を受ける。これからも「『すごい』としか言えなかったり、言葉を失ってしまったりする」小説を書いていきたい。(筑摩書房・1700円)

  • とてもすきだった。

    不穏で不可解。ときどきぎくりとさせられる。でも思いがけぬユーモアや、やさしさとしかいいようのない感覚にも包まれる。

    ・表題作「未知の鳥類がやってくるまで」は、そのやさしさに触れて、ちょっと涙がにじんだ作品。タイトルもすごく好きだけど、鳥は、出てこない。
    ・冒頭の「行列」は、不可解がきわまってユーモアを感じる作品。長新太の絵本『ちへいせんのみえるところ』を思い出した。
    ・「おまえ知ってるか、東京の紀伊國屋を大きい順に結ぶと北斗七星になるって」なんでこういうすてきなタイトルが浮かぶのかな。雑誌「たべるのがおそい」もそうだったけど、命名のセンスが絶妙。西崎作品に出てくる少年たちって、子どもっぽさと妙に悟りすましたような大人びたところが同居していて好き。少年の冒険談。
    ・「箱」と「開閉式」は不気味さを存分に味わう作品。意味わからんといえばそうなんだけど、「開閉式」なんか、比喩というよりももっと生々しく直感的に「こういう扉ってあるかも」と思わせられる。

    さまざまな彩りの作品をあつめた充実の短編集でした。

  • 西崎憲の最新作。
    丸善ではSFの棚にあったが、幻想小説の棚でも良いような気がする。読んでいる最中の酩酊感が非常にキモチイイ。

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著者プロフィール

1955年生まれ。翻訳家、作家。著書に『世界の果ての庭』『蕃東国年代記』『ヘディングはおもに頭で』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』ほか。訳書に『郵便局と蛇』コッパード、『第二の銃声』バークリー、『ヘミングウェイ短篇集』など多数。電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主宰。

「2022年 『郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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