母は死ねない (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815705

感想・レビュー・書評

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  • 「出産も、子育ても、
    自分の思い通りにいかない日々を積み重ねていく。
    その時間から、人生も人も思い通りにはできない
    というのを学んだ」

    この言葉は、最愛のわが子が失踪し、
    すべての力をかけて子を探した母が、
    子の死を受け入れた時に語られた言葉。

    圧倒されるというか、刺さるというか、
    語彙力無さすぎて表現し難いのだけれど
    残しておきたい言葉が他にもたくさんあった。

    その一部↓

    誰も好き好んで被害者になったわけではない。
    不条理な暴力にあっただけだ。
    その苦しみの上に、さらにスティグマを抱えて
    生きていかなければならないのだろうか。

    .

    私自身は、きっとこれからも間違い続け、
    不完全な母であり続けるだろう。
    また知らず知らずに、
    子供を傷つけてしまうに違いない。

    .

    人生は失うことの連続だった。
    これからも大切なものを失っていくのだろう。

    .

    いつかこの生を終える時が来るだろう。
    その日はゆっくりと来るかもしれないし、
    突然来るかもしれない。
    それでも人間はこの世に生を受けた時点で、
    終わりが必ずくる。
    生まれてすぐなくなる子もいれば、
    百二十歳まで生きる人もいるし、
    悲しい終わり方もある。

    .

    「花畑の花を踏みにじる権利なんて誰にもありません」

    .

    その日の情景はいまだに忘れられない。

    .

    子どもは母と一体化した相手ではなく、
    自分の思い通りにならない他者である。

    ...

    母は、人は、弱くても、不完全でもいい
    この本は、そう教えてくれた。

  • レポなのか?小説なのか?判別しかねる書き出し。
    借りた本でもあったので、3、4話で離脱。極端で、ちょっとついていけない、と思う私は、幸せ者か?

  • 命をお腹に宿した時、命をこの世に産み落とした時、その命に何かあった時、なぜ母親が苦しまねばならないのだろう。母親も一人の人間として喜びも苦しみも抱えて生きている。全ての母と子が一人の個として尊重されつつ大切にされる社会になることを願う。

  • 2023/10/22
    なぜそんなに人気なのかは分からなかった。

  • ちくまに連載された、さまざまな母が登場する17の短篇ノンフィクション。アベレージはもちろん高く、著者自身の話を含めてどれを読んでも静かに面白い。「母は死ねない」はこの作品のテーマや結論というよりは、ある話では著者の確信になったり、疑いの対象になったりしながら全編を漂っている。

  • 読み終えて
    自分の母親のことをしばらくの間考えた  

    ガリガリ君サイン
    知らなかった

  •  ここには様々な母が登場する。わが子を殺された母や難病の子を育てる母、精子提供で子を産んだり、特別養子縁組で子をもった人もいた。夫との関係も困難で、暴力や暴言で自尊心が失われた女性たちもいた。生き抜こうともがいても、死を選んだ母もいた。
     本書で取り上げた母や娘たちは、母であることの、あるいは母に対しての、理想と現実とのギャップに苦しんでいた。母親たちが「かくあるべき姿」があると思いこむ背景には、それぞれの問題だけが存在するのではない。母であることの美化も卑下
    も必要ない、かくあるべき親子も家族もないことに気づかせられる一冊だ。

    京都外国語大学付属図書館所蔵情報
    資料ID:659482 請求記号:367.3‖Kaw

  • 重かった。
    子育て大変なんて簡単に言えなくなってしまうほどに。感想もうまく言葉にできない。
    母は死ねない、ってそうだよね、と軽い気持ちだったけど、そんなもんじゃなかった。
    装丁からも静かな重みが伝わってくる。

    ここに出てくるのは母であり、娘である。
    そして不完全な1人の人間である。

    「らしさの呪縛」が心に残る。
    それは、気付かぬうちに自分の中にもあり、社会からも押し付けられるもの。

    いつでも思う。
    自分はちゃんと親できてるんだろうか、と。
    誰かと比べても仕方がないのに、比べてしまう。
    自己嫌悪にも陥るし、時に仄暗い安心を得たりもする。
    まさに不完全な自分を突きつけられるんだ。

    ここには、
    悲しい事件の被害者、難病を患うお子さん、特別養子縁組、同性で親になる事、お子さんを喪う事、自身が障がいを持っている事…どこかで自分がニュースの中の事としか考えていない方々が出てきて、その強さや、弱さや、語られる言葉は、自分にはすぐには消化できないものもあった。自分がもしその立場だったら、と考えても、何も出てこなくて、人は結局その立場にならないと分からないものなんだろう。その立場にたったって、どうしようもない中できっと無理くり進むしかないという感じなんだろうなと思う。分かるなんて偉そうなことはきっとできないから、ただ読み、受け止める事しかできないのだけど。

    親になりたかった人、なりたくなかった人、成り行きだった人みんな違っていいはずなのに。
    一度選んだ選択は全てではなく、そりゃ迷うこともあるし、前に進むことも、戻ることもあるのに
    どうして他人が何かを決めようとするんだろう?
    普通って言葉は使い方が難しいけど、少し特別な環境の方が多かったから、誹謗中傷の表現も多くて良くも悪くも人は1人では生きていけないのだと感じるが
    最近は、やはり簡単に負の言葉をぶつける事がとても気になる。
    逆もあるんだと思うのだけど。

    色々な感情が渦巻いてしまって上手く表現できない。
    耳に障がいをお持ちの母の強さが、とても印象に残った。
    特別養子縁組をされて移住した方が住む、人に優しい街も。


    親も子も別の人間で別の人生がある。

    母は死ねない、というか、死にたくない。
    自分が恵まれているから言える事なのかもしれないけど。子育て大変と愚痴をこぼしながら、自信なんて持てないままで、前に進む。

  • 母親としての著者自身のことも折々に交えながら、DVを受けている母親、AID(非配偶者間人工授精)(+α)で子どもを授かった母親、突然失踪してしまった子どもの母親、難病の子どもを持った母親、児童殺傷事件の被害者の母親、中絶を経験した母親、レズビアンの母親、特別養子縁組で子どもを育てる母親、自死を選んだ母親など、様々な状況に置かれた母親を取り上げるノンフィクション。一般的なノンフィクションというよりは、文学的エッセイに近い文体。
    かなり重い、壮絶な状況に置かれた母親がたくさん登場し、胸が苦しくなった。特に、子どもが失踪して後に白骨化した遺体が見つかったり、事件に巻き込まれて子どもが殺されてしまった母親の話は万感胸に迫るものがあった。一方、重度の聴覚障害を抱えながら難病の子どもを育てつつ、「産んでごめんねとは思わない」というユカコさんの話には希望を感じた。
    また、多くの人の中に母親というものの「呪縛」が厳然としてあることも感じたが、本書で言われているように、そのような「かくあるべき」ということから解き放たれ、不完全さを受け入れるということも(夫など周りも含め)必要だろう。
    本書では、いずれの話でも父親の存在感が薄いように感じたが、子どもを育てるという点で、授乳以外に父親も母親と変わるところはないはずであり、自戒も込めてだが、もっと子育てにおける父親の役割が高まっていくことが、「母親の呪縛」を解く上でも重要だと思う。

  • 図書館にて。
    多分ツイッターの書評で紹介されていて借りてみた。
    最初、著者の子育て日記のようなものかと思っていたら、子供や親子に絡んだ事件を掘り下げて取材していて、濃い内容に驚いた。
    特にキャンプ場で女の子が行方不明になった事件を丁寧に取材していて、ワイドショーや週刊誌のような書かれ方ではない、寄り添い興味本位ではない文章にホッとする思いだった。
    そう、同じ親として、あの事件では全く他人ごとではない恐怖を味わったのは私だけではないはずだ。
    もしも自分の子供がいなくなったら、とか友達の子供が同じ目にあったらなど、すぐ隣で起きかねない事件としてぞっとした人も多いと思う。
    そんな目線でこの本は書かれている。
    いろんな事件や子育てのエピソードを章ごとに取り上げていて、ちょっと盛り込みすぎでお腹一杯、読むのに疲れてしまった感も否めないけれど、ありそうでなかった読者と同じ目線で書かれていた貴重な一冊だと思う。
    昔読んだ「結婚しないかもしれない症候群」を思い出した。

    あと、「母は死ねない」という題名にはすごく思いが込められているなと読んで思ったけれど、もう少し違った題名ならもっと読者は手に取りやすいような気がした。
    なんだろう、母という自分たちの存在に対しての悲壮な覚悟と、母以外の存在に対する攻撃的なニュアンスを感じた気がして。
    この本は母というものを明るくとらえたものではないかもしれないけれど、死という言葉を使わなくても良かったかなと思ったりもした。

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著者プロフィール

河合 香織(かわい・かおり):1974年生まれ。ノンフィクション作家。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一賞および新潮ドキュメント賞をW受賞。ほか著書に『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件』(『誘拐逃避行――少女沖縄「連れ去り」事件』改題)、『絶望に効くブックカフェ』がある。

「2023年 『母は死ねない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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