サハマンション (単行本)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480832177

作品紹介・あらすじ

韓国語版136万部、日本版22万部突破の大ベストセラー、
『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の最新長編小説。

超格差社会「タウン」最下層に位置する人々が住む「サハマンション」とは?
30年前の「蝶々暴動」とは何か?
ディストピアの底辺で助け合い、ユートピアを模索することは可能か?

感想・レビュー・書評

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  • 「82年生まれ、キム・ジヨン」訳者が語る 韓国文学に共感する理由:朝日新聞デジタル(会員記事)
    https://digital.asahi.com/articles/ASPC851KJPC3UHBI00W.html

    「サハマンション」チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/294887

    筑摩書房 サハマンション / チョ ナムジュ 著, 斎藤 真理子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480832177/

  • 難しかった……超格差社会の底辺の人々の物語。視点と時間があっちこっち行くので、ちゃんと読まないと話のつながりがわからなくなる!
    ただ階級が全てではないし、権威は見せかけで1人1人は心のある人ばかりだなとも思います。
    貧困とかまで話を広げるならば、見た目や階級だけで評価してはいけないと思わされます。

  • 企業によって作られた都市国家「タウン」には、住民権を持つ「L」と二年間のタウン在留権を持つがあまりいい職種につけない「L2」、そしてLでもL2でもない「サハ」と呼ばれる人々がいた。
    身分制度ともいえる格差社会。
    世界最大規模の研究施設があり、優秀な研究者がいる一方で、サハマンションには犯罪を犯して逃げてきた人や住民資格を得られなかった人たちが住み着いていた。

    人を殺してしまった弟のトギョンと一緒に、ジンギョンはタウンに密入国し、サハマンションに辿り着き、住民になった。
    スーは病院で働きながらサハマンションで子どもの診察を好意で行っていた。スーとトギョンは一緒に暮らし始めるが、スーの医療行為がバレて、医師免許は剥奪、二人の生活はすぐに崩れた。薬を飲んで二人で死ぬつもりだったが、スーだけが死んだ。トギョンはサハマンションに逃げ隠れた。

    花ばあさん、管理室にいるじいさま、職業紹介所のおばあさん。年寄連中にはそれぞれに過去があり、胸の内を打ち明けることはない。
    トギョンは検挙され、死刑となった。身体の大きなウミは研究所で長年研究対象となっていたが、抵抗してため捕らえられてしまった。サハマンションの撤去が決まった。

    ジンギョンはリボルバーを調達して総理館を襲撃するが、総理たちはいなかった。総理など最初からいない、と総秘書の老紳士が言う。ジンギョンは彼にリボルバーを向けた。

    ---------------------------------------

    カースト制のように徹底された身分差別社会の話だった。
    優秀な技術や知能をもつ「L」と、汚れ役の仕事を引き受ける「L2」だけでも社会としては成り立ちそうなのに、なぜ40年もサハマンションの人たちの存在を許していたんだろうか。

    学生のころ、士農工商の下に「穢多非人」という差別的身分が作られたのは社会秩序を守るためだったと授業で習ったことが頭に蘇る。
    「農民が自分たちより下の身分である穢多非人を見て溜飲を下げていた」なんてことを教師が言っていたけど、差別されている側からしたらたまったもんじゃないだろうな、と当時から思っていた。

    でも「L」の人たちを武士、「L2」を農民、サハマンションの人たちと穢多非人にされた人たち、と考えてみると少し違う気がする。サハの人たちを「L2」の人たちはそこまで見下していないようだった。

    感染症に対する耐性を持つウミが研究対象として大切にされるのはわかる。しかし、それだけではなくて、研究員たちはウミたちを気の毒に思うを言っていた。
    一度落ちれば、身分が下がるだけで二度と上がることはない。不安を持ちながら格差社会で暮らす人々。
    格差社会を作ったはずの総理たちは存在しないらしい。

    身分とは、社会とは、と考えることはたくさんあった。
    死刑にされたトギョンと捕らえられたウミを想って総理館を襲撃することにしたジンギョン。成り行きとはいえ、彼女が撃ち殺した職員女性。トギョンの死と職員女性の死はどう違う?
    職員女性を撃ち殺したジンギョンと、サラを101号室に連れ込んで暴行しようとした警官は何が違う?
    ジンギョンとトギョンに両親がいたように職員女性にも家族がいたかもしれない。その家族は突然職員女性が撃ち殺されたことに納得できる?

    答えは一つもないし、総理は存在しなかった。クエスチョンマークばかり溜まっていく。
    管理室のじいさま、真実を教えてくれないかな。

  • どんな結末を迎えるのか、終着点はどこにあるのか…え、そこで終わるの!?
    ジンギョンが、ウミが、トギョンが、サハマンションの面々がどうなったかは分からないまま本を閉じることになるのだけど、それはおそらく、著者が伝えたいのは単にストーリーだけではないからと考える。

    一つの事件が発端となって始まる物語、そのストーリーを追っていく内に、“タウン”における人々の暮らしや社会システムについても理解することになるが、それは架空の国家であるとは言え、私たちが暮らす現代社会と重なって見える部分は多い。問題提起としての舞台設定とも考えられるのではないだろうか。

    結局、総理団の真の姿、研究所の謎は明かされずに終わる。そこは正直消化不良、どういうこと??という気持ちは残るが、読んでいる最中の読み応えは抜群、ページを繰る手は止まらない本だった。

  • 全体の流れは何となく掴めるが、設定の説明とエンディングまでの伏線がやや不足している感じがする。

  • ひとつひとつは描写が素晴らしく、不気味さを上手に表現していて、次々読むのが楽しくなる。

    どうなるんだろう、どうなるんだろうと思って、ラスト。無。とりたてて印象の無いラストが残念。

    筆者は何か伝えたいことがあると思うのだけど、そうじゃないのかな。
    始終、『不気味な街の住人たち』で終わってしまった。

  • 抑圧されたタウンの、階級の底辺でもがきながら生きる人々の話。
    ひとつの国家が誕生し、それに立ち会った人々の苦悩と、国の外から逃れサハに行き着いた人たち。
    そこで生まれた二世、三世にとっては当たり前の世界が、大人になるにつれ、寛容できなくなっていく様子。
    サハの住民それぞれの視点で描かれる。
    差別、偏見、抑圧の中で生きるサハマンションの人々のリアルが辛い。とてもフィクションとは思えない。どこの世界でも起こり得ることだ。
    韓国での社会問題を多数組み込まれて作られた話という事で、作者の現代社会への問題提起を感じた。


    全ての人々の話がラストに向けて繋がる訳ではなく、その世界のマンションの住人のエピソードとして書かれるのでまとまりのなさは感じてしまう。
    その全部スッキリ描かれない事が、隣人感、リアルさを醸し出す要素なのかも知れない。

    あと、韓国風の名前がその音だけでは男女の区別が付かないのは難しさを感じた。

  • “「私たち、悪いことなんかしてないのにどうしてお互いすまながるのかな? 私に本当にすまないことしてるのは誰? 誰も私に謝らないよ。それが誰なのかもわからないし。だから私、このごろ悔しくてしょっちゅう涙が出る」”(p.88)

  • タウンの正式な住人として登録されていない人たち=サハが集まって暮らすサハマンション。住人それぞれの背景と事件、救われない中で助け合って生きること、暴力、権力の大きさ。結局、弟が助かったのか、施設に囚われた友人が助かったのか、わからない。あのラストをどう読めばいいのか…他の人の感想を読んでみたい。エピソードひとつひとつがおもしろいけれど、統一されたラストはなく、そもそもそれを期待して読むべき本なのかは分からない。主人公が生きるために、救われるために、罪のない案内係の女を殺したのも象徴的。サハマンションの人たちが憎まれる理由も、そうして確かにある。

  • 政府が企業にとって変わる国家のお話。国民はクラス分けされ、職業を割り当てられる。国民向けメディアは一本化。使ってはいけない表現がある。国家を不安にさせる分野の大学教育、職業は廃止。非公開組織の総理団の合議による特措法でいびつな公共性がうまれ、そこが諸悪の根源だとつきとめ、総理館に乗りこんだら空虚だった。誰を相手に訴えたら良かったのか顔のない政治が続いている。このクラスで仕方ないと国民が納得したらそのまま自然と維持される日常の怖さは現在進行形の話ではと捉えることも出来て深刻なテーマに思えました。

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著者プロフィール

チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』、2019年『サハマンション』、2020年『ミカンの味』、2021年『私たちが記したもの』、2022年『ソヨンドン物語』刊行。邦訳は、『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、ちくま文庫)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)いずれも筑摩書房刊。『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。『ソヨンドン物語』(古川綾子訳、筑摩書房)が近刊予定。



「2024年 『耳をすませば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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