東京β: 更新され続ける都市の物語 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480864437

感想・レビュー・書評

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  • 社会

  • 東京の変遷を6テーマ、地区(湾岸、新都心ー新宿・臨海部、3つのタワー、水運、鉄道発症地・新橋、空港発祥地・羽田)で叙述。この地区を舞台にした映画や文学などの作品を取り上げ時代の変遷を追う、という描き方で、奥行きのある著作になっている。
    このような年の変化を取り上げた作家ではM.A.氏が有名だが、彼の著作はいささか強引で反論したくなるような箇所もあった。しかし速水氏の著作は(この本に変わらず)納得感の強いものに仕上がっている。取り上げられる映画などの作品もよく調べて上げているので、観たい読みたいと思わせるものも多かった。

    汐留の再開発地の記述で、
    新橋停車場駅舎
    「三次元解析によって正確に復元された駅舎だが、残念ながら周囲のガラス張りの超高層建築物に囲まれた結果、なんともみすぼらしく映る。
    昔のものを残す(再現する)街づくりが良しとされるが、文脈から切り離され、周囲からも埋もれた形で、建築だけ再現しても、かつての停車場が持っていた威厳は再現されない。」との記述。たしかにあれは駅舎目的で行っても通り過ぎそうになる程目立たないw。
    私はおそらく日本橋の高速道路地下化も同じようなつまらなさを呈すると思う。
    いっときの価値基準で江戸情緒を取り戻すなんて現在の日本橋は無理だし、清水草一氏や大山顕氏のいうように戦後モダニズムの象徴の方が独自性があると思う。百歩譲っても膨大な予算を無駄にせず済む。
    さて、現在進行形の東京では本書のあとがきで触れられる、若者の街として再生した秋葉原、今まさに再開発がされている渋谷に加えて、若者に敬遠され始めている世田谷、逆に日に日に勢いを増しつつある池袋や赤羽などの北部なども読んでみたい。
    長くなりました…w

  • 地域の変遷は興味深い内容だった

  • 東京を舞台とした小説や映画をもとに、当時の社会情勢を背景とした変化し続ける東京を論じる。完成せずに更新され続ける街・東京をテーマにしているので、本書の題名を試作品を意味する「ベータ」と名付けている。

  • 東京の街の変化ををメディアによる描き方から読み解こうとした作品。多面的な分析がされている最初の「東京湾岸の日常」が秀逸で、戦後から現代につながる臨海地域の変遷をうまく理解させてくれる。今も豊洲の市場問題で揺れ、オリンピックに向けて激しく変わっていく地域は臨海地域だけでなく東京を変えていくであろうが、それが他人や社会をどのように変化させ、小説漫画アニメテレビなどなどのメディアにどのように描かれていくのか、とても興味深い。あとがきにあるように筆者が次のバージョンを書きたくなるのがどのタイミングになるのか、あるいはそのような時が来るほどの物語性を孕んだ変化が高齢化の進む日本で起こるのか、しばらく待ってみたい。

  • タイトルからして「東京β」もサブタイ「更新(アップデート)され続ける都市の物語」もスタイリッシュ!
    試用版とか完結しないとかそんなこと言ったらどこもかしこも全てがβ版なんだろうけど、東京、というとすごくしっくりくる。そして、すごく真面目な東京という都市の変遷論なのだけど、切り口が映画や小説、漫画アニメなどのコンテンツで入りやすい。
    序盤からコミケが出てくる。これはウォーターフロント史を語るとなれば、出てこなくはないと思うけどここで出るか、とニヤリ。
    浅草に高層の建築物(浅草十二階)がそんなに早い時代にあったというのは初めて知った。しかもそれが半壊後は爆破で解体って、日本国内では今でもそうそうやらないのに進んでたんだなぁ。あ、お化け煙突は私は「こち亀」で知ったかな。この本では出てこなかったと記憶しているけど。
    そしてそして私としては当然(何が?)「パトレイバー」で引っかかるわけですが、それも出てきて満足。
    劇場版の松井さんと後藤隊長が語らうところの
    「それにしても、奇妙な街だな、ここは。あいつの過去を……」
    「オレたちがこうして話してる場所だって……」
    は、この本にぴったり、と言うかこの本のテーマズバリのセリフだと思う。
    それにしても劇場版2と、「釣りバカ日誌」にそんな共通項があるとは知りませんでした。
    読めて良かった。

  • 時代の節目には都市の変化がある。当然、日本の首都である東京ではその更新の落差と頻度は激しい。東京を舞台にした映画やドラマ、小説、漫画などに切り取られた東京をテーマごとにフォーカスした東京論。

  • 2016/7/12読了。
    先日読んだ佐多稲子の『私の東京地図』が、東京という都市を実に見事にメディアとして用いている小説だったので、そういうテーマの本を読んでみたくなった。本書はそのものズバリ、映画や小説やアニメなど様々なフィクションに描かれた東京が象徴するものの変遷を追って、東京の移り変わりを書き留めるメディア都市論だった。
    東京のスクラップ&ビルドについては、僕は基本的には古い風景遺産が壊されて味も素っ気もないファストな風景に変わっていくことを苦々しく思う者だが、本書の日本橋論にはちょっと目から鱗が落ちる思いだった。
    日本橋の上に架かる首都高速を不粋なものとして撤去を目指す運動があり、僕もそれにはシンパシーを感じていたのだ。ところが本書ではその首都高を、エネルギーに溢れていた半世紀前の日本人の魂が込められたもの、タルコフスキーの映画にも描かれたことがある世界的にも稀有な存在として、すでに遺産として見る視点が紹介されていた。なるほど。首都高ってもう新しいものじゃないのね、という驚き。
    新奇な風景も時を経れば遺産になる。東京が遺産として尊ばれる風景を生み出し続けるためには、更新され続けなければならない。なかなか興味深いパラドックスだ。

  • フィクションで東京を読み取るお話。

    前半の湾岸地域の格差の話は面白かったが、後半にかけて息切れしたかな。

  • 都市を語るのに、つくりものをベースに語るのが潔い感じ。創作物とはいえ、確かに時代を反映していると思いました。これを読んで、「パトレイバー」の基地が埋め立て地なのかを納得しました。あんな場所じゃ、出動に時間がかかると思ったら、むしろ、作業用レイバーがたくさんある場所に近いという合理性がありました。もちろん、独立愚連隊+左遷なのもあるでしょうけど。

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著者プロフィール

速水健朗 Kenro Hayamizu1973年生まれ。食や政治から都市にジャニーズなど手広く論じる物書き。たまにラジオやテレビにも出演。「団地団」「福島第一原発観光化計画」などでも活動中。著書に『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新書)、『1995年』(ちくま新書)、『都市と消費とディズニーの夢』(角川Oneテーマ21)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)などがある。

「2014年 『すべてのニュースは賞味期限切れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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