- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010911
感想・レビュー・書評
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アイスランド警察シリーズ第5作。北欧の暗い風物のなかを鈍重なほどゆっくりしか進まない捜査。起こる事件は単純でありミステリ的には地味でともすれば平板ですらある。だけどついまた手に取ってしまう。どこにこんなに引き付けられるのだろう。北国の地域性に共感を感じるせいか、はたまたエーレンデュル、シグルデュルーオーリ、エリンボルグの捜査チームの魅力か。はじめはとっつきにくかった捜査官たちも、5作目ともなれば読み手にも馴染んで生き生きと映る。それぞれが抱えている私生活の問題が少しずつ語られて、北欧ミステリにありがちな影を落としている。加えて本作のテーマは移民問題だ。アジア系の少年が刺殺されるという事件が起こり、学校や地域での捜査の過程で浮かび上がる移民への反感。真相は逆に他愛のないものではあるが、閉鎖された小国の抱える問題が浮き彫りにされている。
それはそうと、巻末の訳者のことばには驚かされた。そんなこと考えてみもしなかったからびっくり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大好きなシリーズのひとつ。
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シリーズ5作目。テーマは移民問題だ。死体が見つかった。「黒髪が半分凍りついていた」。舞台はアイスランド極寒の地である。そこで移民のタイ人の少年が死んでいた。事件が進行するにしたがって移民に対する人々の感情が露わになっていくのが怖い。内省的な主人公の少し病的な雰囲気も良い。疑わしき人物を数人配して、読者の意識をかく乱させながら、一気にラストに向かって伏線回収。
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ミステリ。シリーズ5作目。
アイスランド。移民。家族。
このシリーズの特徴として、ストーリーの進行が遅いと感じる。
捜査の過程で、登場人物の苦悩や葛藤を濃密に描いている印象。
あまりにも考えさせられることが多く、気楽には読めない。
当然、それがこのシリーズの魅力。
今作では、犯人の犯行動機に、無力感を感じた。
これは若い頃に読まなくて良かった。大人向けの作品だと思う。 -
アイスランドの小説は初めてで、移民を巡って人それぞれの思惑があることを知りました。
シリーズものなので登場人物が背負っているものが前提にあり、理解できない部分もあったけど他の作品も読んで見たいです -
4月-14。3.0点。
アーレンデュル警部シリーズ。
タイからの移民の小学生が刺殺される。目撃者も無く、捜査は難航。アイスランドの移民に対する感情など、複雑な事情が。
解決はあっけないところから。でも哀しい。 -
あらゆる失踪事件に関心を持つエーレンデュルが女性の失踪事件を追うのは当然だけど、ミステリとして、それがミスリードの役割を果たしていたのか。
アイスランドって何代か遡るとみんな親類というのを聞いたことがあるけど、移民を嫌う人はそういうのが崩れるのが嫌なのかな。血統主義みたいな。
エリンボルクの歌にエーレンデュルがイラつくけど、エーレンデュル自身思わず口遊むのに笑った。
アンドレスの義父は次作以降登場するのか。
アイスランド駐在の米軍兵はフェンスの中で暮らしているのか。アイスランドに米軍基地があるのも知らなかったが。日本でも特に沖縄では、米兵はフェンスの内に囲われるといいのに。 -
アイスランドを舞台にした警察シリーズの第5弾。エーレンデュルを始めエリンボルクなどのプライベートな悩みや痛みを家族みたいに共有しながら読み進めた。どこにでもあるだろう移民問題とそれを取り巻く根強い差別意識が捜査を撹乱させる。毎回主人公の少年時代に囚われた強い想いに「もう、前を向こうよ」と叱咤しつつも、主要人物三者三様の深い描き方にシリーズが出る度に読んでしまう。ミステリーとしては私には物足りない。
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邦訳5作。今作もアイスランドの寒さがあり、人の心にある暗さ、重さが描かれている。移民を受け入れることへの反発、本音と建前の対立。差別があり偏見がある。そんななか殺害された少年。エーレンデュルたち警察の捜査はなかなか進まず、次第に町の人たちの感情、抱えているものが見えてくる。外国人を受け入れるということは日本も他人事じゃないというのがよくわかる。人種間にある壁、さまざまな問題とともに進む。派手なシーンがあるわけではないけれど人の奥深くにあるものを映し出しているようなそんな物語。