厳寒の町

  • 東京創元社
3.66
  • (13)
  • (46)
  • (35)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 237
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010911

作品紹介・あらすじ

男の子の年齢は十歳前後。地面にうつ伏せになり、体の下の血だまりは凍りはじめていた。アイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた男の子は、両親の離婚後母親と兄と一緒にレイキャヴィクのこの界隈に越してきた。人種差別からくる殺人が疑われ、エーレンデュルら捜査陣は、男の子が住んでいたアパートや通っていた学校を中心に捜査を始める。世界のミステリ界をリードする著者が現代社会の問題にメスを入れた、シリーズ第5弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • シリーズ第5弾。痛ましい事件を捜査するエーレンデュル達。ミステリーの謎解きとしてはフェアでない構成だけど、アイスランドの外国籍を持つ人をめぐる状況など日本でも起きている問題を描く様は見事で読む手が止まらない。解説も良い。

  • 10歳くらいの男の子が学校帰りに自宅そば腹を刺されて死んでいた。エーレンデュルたちは悲惨な状況に心を痛めるが、タイ人の母親とアイスランド人の父親を持つ子シンドリだった。少年の学校では移民の子が1割くらいはいるといい、教師の中にも移民に敵対心を持つ者がいる、などがわかってくる。今から18年前の作品だが、著者がこういう作品を描くということは、現実のアイルランドでも移民とのあつれきがあるということなのか。

    シンドリは移民の子だから殺されたのか? 多文化共生、言うは易し、行いは難し。その中で揉まれる、受け入れ側とやってくる側、それぞれの思惑をインドリダソンは描きだす。だが着地点は「移民だから」というふうにはインドリダソンはしなかった。移民の子シンドリの死、という設定の中で、インドリダソンは移民問題を描いたのだと思う。

    集会でアイスランドの国民的詩人の歌を歌おうとした教師は、民族主義的だと言われ反移民的だとレッテルを張られる。が、聞き込みをすると、彼の意図は、アイスランドに来るのは拒まない。だけど俺たちアイスランド人の文化と言語は大切に育てるのは最低条件だ、というものだった。・・なかなかたいへんだ。



    2005発表
    2019.8.23初版 図書館

  • うーん、果たしてこれはミステリーなんだろうか

    今回も物語は暗くどんよりとした雰囲気のなか進みます
    なんでしょうかね、なぜこの感じをキープし続けられるんだろう?この文体の謎を解き明かしたいものです

    そしてどうやら今回は移民がテーマのよう
    物語の舞台アイスランドでは当初移民受け入れに積極的だったものの短期間に増加したことなどもあり、色々な問題が起きていることで現在はかなり規制されているようです
    物語に登場する人たちも移民反対やら条件つき賛成、無条件で賛成など様々
    翻ってわが日本の状況はというと移民は未だ認めていません
    あくまで外国人労働者といった種々カテゴリで期限付き滞在と言い張ってます
    日本もそろそろふわっとした状態を脱して、はっきりとした態度を世界から求められているような気がします

    個人的な考えを言わせてもらえば、いやいや世界の人に助けてもらわなかったら日本はこの先立ち行かないでしょ
    つまりは移民おねがーしゃす!の考えの人なんですが、そこに世界的な富の再分配的な考えを持ち込むのは反対なんですね
    なんで日本人がコツコツ積み上げてきたもんを無条件で食い散らかせなならんねん!というね

    そのかわり平等にチャンスをあげられる国、苦しい中でも精一杯前向きに努力を続けている人を助けてあげられる国であって欲しいなぁと思うのです
    なかなか 見極めが難しいし、日本人の意識というか土壌も変えていかないとねとは思うんで簡単な 話ではないんだけどね

    要するに移民を受け入れるのはボランティアではなく、共に進む尊敬しあえる仲間を得ることだと思いたいのよね

    なんか物語の筋と直接関係ないこと語ってますが、物語に 触発されて色んなことを思う
    これが読書だ!

    • みんみんさん
      もう人物名が上手く言えない(*_*)
      もう人物名が上手く言えない(*_*)
      2023/03/18
    • ひまわりめろんさん
      アイスランドの自転車もう辛そう(自分が寒がりなだけ)
      アイスランドの自転車もう辛そう(自分が寒がりなだけ)
      2023/03/18
    • ひまわりめろんさん
      アイスランドってめちゃめちゃ独自文化が発達してそうってのが特徴的な名前の時点でまるわかり
      それがいいのよ
      アイスランドってめちゃめちゃ独自文化が発達してそうってのが特徴的な名前の時点でまるわかり
      それがいいのよ
      2023/03/18
  • 前作はアイスランドの過去の歴史に絡めた話だったけど、本作は現在(と言うか21世紀)のアイスランド。人口30万人なら移民も入れざるを得ないだろと思ったら、それでも移民反対の人がいるという事実。そしてどの国も移民反対者は同じことを言ってる。

    マリオンの性別に関して、原作は性別が不明な書き方をしてるそうで、訳者さんはそれを分かった上で男性寄りに描いた、からの鏡の話は驚いた。
    確かにあのタイミングの鏡は男性はどう思うのか。
    仮に女性だとしても果たして今際の際に鏡を見るのか…?と。元々ルックスやファッションに意識が向いてるような人として描かれている描写はなかったと思う。

  • 刑事エーレンデュルシリーズの5作目。今回は人種差別を扱っている。なんとも悲しいミステリーだ。長年、主人公を支えたマリン氏が亡くなり、このシリーズももう終わりかと思ってしまう。

  • 北欧ミステリ沼に浸り込むきっかけとなったこのシリーズ。新作が読めて嬉しい限り。移民問題という非常にリアルでセンシティブな題材を扱っていて、まさにアイスランドの今を見せつけられた感があります。しかし、事件としてはちょっと浅め。何よりこれまで作品に漂っていた闇が全く感じられなかったので、むしろ茫然としてます。学校や生徒たちに尋ねていく過程はスリリングでしたが、こんなことある?と言わざるを得ない真相。救い、とはとても思えないのですが。6作目の凍てつく夜に期待してます。

  •  アイスランド警察シリーズ第5作。北欧の暗い風物のなかを鈍重なほどゆっくりしか進まない捜査。起こる事件は単純でありミステリ的には地味でともすれば平板ですらある。だけどついまた手に取ってしまう。どこにこんなに引き付けられるのだろう。北国の地域性に共感を感じるせいか、はたまたエーレンデュル、シグルデュルーオーリ、エリンボルグの捜査チームの魅力か。はじめはとっつきにくかった捜査官たちも、5作目ともなれば読み手にも馴染んで生き生きと映る。それぞれが抱えている私生活の問題が少しずつ語られて、北欧ミステリにありがちな影を落としている。加えて本作のテーマは移民問題だ。アジア系の少年が刺殺されるという事件が起こり、学校や地域での捜査の過程で浮かび上がる移民への反感。真相は逆に他愛のないものではあるが、閉鎖された小国の抱える問題が浮き彫りにされている。
     それはそうと、巻末の訳者のことばには驚かされた。そんなこと考えてみもしなかったからびっくり。

  •  アイスランドのレイキャヴィク捜査官エーレンデュルシリーズ第4段(邦訳)です。

     今回は、移民の子供が下校途中に刺殺されて居た。シングルマザーのスニーはタイ人で元夫がアイスランド人でアイスランドに移住していた。

     殺された子供エリアスは、タイ人で人種差別者達に殺害されたのか、ドラッグに関わって居たのか、人種差別者で学校教師キャルタンも容疑者の1人だった。

     エーレンデュルは、この事件の他に行方不明の女性の消息も追って居た。

     移民受入れが、社会問題となっているアイスランドでタイ人の子供が殺害され人種差別主義や移民反対派の社会背景が暗いアイスランドを更に陰湿に暗く寒くしている。少年の殺害と失踪した女性の捜査に加え、弟を亡くしてしまった責任に苛まれ、娘エヴァや息子シンドリからも信頼されず、かつての上司は病死し心の拠り所も無く不安定なエーレンデュルの心境が手にとる様に伝わる。

  • 犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ4作目。タイ人の母を持つ男児が殺害される。現在のアイスランドにおける移民問題を背景に、鋭く掘り下げていく。結局、殺された理由はあまりにやるせなく、現代社会が抱える闇を目の当たりにする。

  • ミステリ。シリーズ5作目。
    アイスランド。移民。家族。
    このシリーズの特徴として、ストーリーの進行が遅いと感じる。
    捜査の過程で、登場人物の苦悩や葛藤を濃密に描いている印象。
    あまりにも考えさせられることが多く、気楽には読めない。
    当然、それがこのシリーズの魅力。
    今作では、犯人の犯行動機に、無力感を感じた。
    これは若い頃に読まなくて良かった。大人向けの作品だと思う。

全39件中 1 - 10件を表示

アーナルデュル・インドリダソンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アーナルデュル・...
ネレ・ノイハウス
アーナルデュル・...
アーナルデュル・...
ジョエル・ディケ...
スチュアート・タ...
レイフ・GW・ペ...
アーナルデュル・...
アレン・エスケン...
アーナルデュル・...
ドット・ハチソン
ピエール ルメー...
ピエール・ルメー...
クリス ウィタカ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×