珈琲と煙草

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011239

作品紹介・あらすじ

異様な罪を犯した人間たちの物語。幼少期の体験を描く自伝的エッセイ。社会のさまざまな出来事についての観察とメモ。法の観念と人間の尊厳、芸術についての論考。作家としての物語へのアプローチの仕方……。数ページずつ綴られる断片的な文章は、たがいに絡みあい、複雑で芳醇な文学世界を構築する。『犯罪』で脚光を浴び、刑事専門弁護士から現代ドイツを代表する作家となった著者による、最もパーソナルで最も先鋭的な作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 思っていたものとは違い、最初戸惑いはしたけど、心地よい文章につられてつらつらと読んでいった。
    タイトルのない、短編のようなエッセイのような、時世に皮肉と共に一石投じているかのような話もあり。
    それぞれの話にはタイトルはなく、代わりに番号が話ごとに割り振られていた。
    完全に私に染みたかと言われると少し物足りない感じもあるけれど、よかった。

  • 古い記事から

    【特別寄稿】翻訳者エッセイ「シーラッハの朗読会」酒寄進一 フェルディナント・フォン・シーラッハのミニ・サイン色紙をプレゼント! : Web東京創元社マガジン(2019/07/24)
    http://www.webmysteries.jp/archives/18918280.html

    珈琲と煙草 - フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488011239

  • 倫理や法律について論理的且つシニカルな短い逸話が繰り返されるが、多くが伝聞や書物に基づくものでサッチャー元首相の逸話なども事実か物語なのか迷わせる。
    人権の話で、ドイツ基本法第1条では、「人間の尊厳は不可侵である」と定められているにも関わらず、2017年にベルリンで前年比60%増の947件の反ユダヤ主義の事件が起きており「私たちは言葉の外へは出られない。私たちの理解できるのは、理性だけだ。説明することを可能にするのは、つねに概念だ。 他に方法がない。しかし自然や生や宇宙にとって、そうした概念はなんの意味も持たない。重力波に善も悪もない。光合成に良心などない。 重力に対して、われわれは無力だ。」と法の無力性が語られる。
    「ヨーロッパで活動するユダヤ人は全て、ヨーロッパ文化の敵」と演説しウィーン帝国総督で約6万5000人のオーストリアのユダヤ人を死のキャンプに送った祖父については分量的にこの本では語り尽くせない為か寡黙になっている。逸話の更に深い詳細を期待したくなる一冊でした。

  • 小説とエッセイと観察記録が入り混じっているのだが、その区分けの曖昧さが面白い。

    シーラッハが弁護士だということを初めて知った。
    事実は小説よりも奇なりという言葉があるが、裁判というのは、言い方は悪いけれど、類稀なるドラマが展開されている場と言えるのではないか。

    仕事で、裁判の傍聴をしたことがあるのだが、その人が「語られる」こと、そしてその「語り」を聴いている当事者がいる空間。
    これを、私自身はどんなスタンスで聴けばいいんだろうと、戸惑ったことを思い出した。

    この作品では、誰もが震撼するような事件が扱われているのではない。
    事実があり、そこに誰かが、何かが解釈を施すことによる「え?そういうエピローグなの?」と首をかしげる。そんな違和を、ポンと、置いていく。

    相変わらず面白い。

  • シーラッハの作品は、とても不思議。刑罰などの作品同様、文章は(エッセイでもあるしなお)淡々としている。のに、とても惹かれてしまう。どういうこと?なんで?を残したままのエッセイやお話もある。でもそこに、たまらなく惹きつけられてしまう。
    面白いとかそういうのではなく、これはもう、この人の書く文章が、書き方や想いが、ただ好きだとしか言い表せない。

  • 異様な罪を犯した人間たちの物語。幼少期の体験を描く自伝的エッセイ。社会のさまざまな出来事についての観察とメモ。法の観念と人間の尊厳、芸術についての論考。作家としての物語へのアプローチの仕方……。数ページずつ綴られる断片的な文章は、たがいに絡みあい、複雑で芳醇な文学世界を構築する。『犯罪』で脚光を浴び、刑事専門弁護士から現代ドイツを代表する作家となった著者による、最もパーソナルで最も先鋭的な作品集。

    ショートショートのような落ちの短編が気に入った。

  •  タイトルに惹かれて読んでみた。
     近年目にした映画(『犯罪』『コリーニ事件』)の原作者なのね。ご職業は弁護士だとか。

     エッセイともルポとも短編とも見分けのつきにくい話が、長短さまざま48篇収められている。ブツブツと寸断されるので、なかなか読みすすむ勢いがつかず時間がかかった。

     とはいえ、そんなにサクサクと読む類の文章でもない。
     機知に富み、情報量も多い話が、職業柄か、理路整然とドライな筆致で綴られる。
    48篇それぞれの長さも(短いものは1ページにも満たない)、著者の独特のリズムなのだろうなと思う。

    「物書きであれば、創作した人間と言葉を交わし、その人たちと人生を共にできる。書く合い間に生じる時間はそのうちどうでもよくなる。書くことの方が本質だ。」

     長編は読んでない。本書に収められた短編の小説もどきの文章に登場する人物たちと著者がどれほど言葉を交わし、文章を練り上げたのかは分からなかった。あまり心に残る登場人物はいなかった。

     その中では、恋人だったボクサーのことを語る老婦人が印象的だったかな。
    「ボクシングは暴力と勇気と自己管理がすべて」

  • ある種の極み、何気にすごい作品やと思う。

  • 話の節々に、日本人と違う感覚を持っている人がいると感じた。この本ではコーヒーとタバコで自分の心を癒していたが、多分、人によってそれは何でも良い。自分の心を落ち着かせてくれるものを持っているという自覚が大事なんだと思った。あと、体に悪いものを結局好きになってしまうのは、世界共通であると感じた。

  • エッセイなのか小説のアイデアメモなのかショートショートなのか、弁護士であり小説家のシーラッハが書いた文章臭といった体の1冊。

    「法律なんだから守らなければいけない」法治国家で生きる以上それはそうなんだが、法律は本当に正しいのか?そのことは常に疑問に感じていたいと思う。

    戦争当時のドイツも日本も法に基づいてかの戦争をしていたわけだし、戦後ついこの間までのアメリカの黒人は法に基づいて差別されていたし、今のロシアは法に基づいてウクライナに侵攻している。

    万能でない人間が決めたものなんて、そんなものである。社会生活を営む以上順法姿勢は取っていても、あからさまに怪しそうな取り決めは疑ってかかるのがちょうどよい。

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