薔薇の名前〈下〉

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013523

感想・レビュー・書評

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  • 始まりから終わりまで、頭の中で壮大な映画が繰り広げられているものの、途中しばしば難解なせりふや引用が用いられるので、四苦八苦。高品質なミステリー小説であると同時に、登場人物を通して哲学的議論に触れられるのも面白い。翻訳もすごい(ような気がした)と思ったが、そしたら国際的な翻訳の賞を受賞していたようだ。読む時間が無駄にならない一冊。

  • ミステリとしては凡庸。
    だけど、この作品はミステリではなく、知的探求への扉。
    読み進めるに従い、己の知識と知力と知的好奇心を問われて行く。
    どこまで楽しめるのだろうか。
    楽しむためにどこまで頑張れるのだろうか。
    そう言った意味で、短いスパンではなく、何かの折に再読して自分の成長を確かめるための指針になるような一冊。

    思わぬおまけとして、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』を再読したくなった。
    あれ、若い頃頑張って頑張って読んだんだけど、いまならもっと面白く読めるような気がするの。

  • 多角的、多義的重層構造の、
    思索の図書館に迷い込み、
    読むことの喜びを感じる。
    恐ろしいまでに潜考を強いられるが、
    読書の醍醐味を味わえる。

  • 損をしました・・・。
    なぜかと言うと、キリスト教のこの時代への深い知識無しに読んでしまったから。
    私の6年間の学校教育程度の知識では全く足りない!

    ですが、作品自体の凄さと言うのはわかります。
    異端について論じている時、笑いについて論じている時、
    教皇と皇帝の争いについて論じている時等・・・
    あぁ、もう少し知識を持って読んだならばもっともっと楽しめただろうに。

    このミスを見てこの作品を読んだのですが、殺人の謎解きだけで言えば単純。
    でも、そういう括りにしてはいけない作品だと思います。

    もう少し寝かせて、知識を深めてから読み直したいと思いました。
    そういう意味での星3つです。

  • 修道会の掟が全てを支配する山上の僧院で、秘密の写本をめぐって繰り広げられるミステリー。舞台が謎多き巨大な文書館なので、本好きにはそれだけでたまらない。
    上巻から続いている修道士ウィリアムとその弟子アドソの冒険活劇の流れはそのままに、外界の<権威>である教皇の勢力や、異端審問官も加わり、物語はいっそう混乱した展開を見せる。論理的・科学的な理屈の面白さだけでなく、僧院長、文書館長、修道僧など各キャラクタの面白さが際立ってくるのが下巻の魅力。事件の真相に迫るにつれて、どんどん濃密になっていく。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「論理的・科学的な理屈の面白さ」
      全部が理解出来た訳ではありませんが、スリリングでしたね。
      「論理的・科学的な理屈の面白さ」
      全部が理解出来た訳ではありませんが、スリリングでしたね。
      2012/09/11
  • 私が小説として最も興味深く読んだところはキリスト教の正統と異端の部分(但し異端の拷問や死についての描写はちょっと残虐すぎて辛かった)と、イタリアの歴史や中世ヨーロッパの在り方だ。

    敬虔なるキリスト教信者にとって『聖書』(福音書や黙示録なども含む)は『六法全書』と同じようなもので、彼らにとっての法律は聖書に記されていることなのだ。
    それでも『聖書』はひとつなのに対して、キリスト教にはいくつもの宗派(セクト)が在る。
    そしてそのそれぞれの宗派によって聖書の解釈はそれぞれに異なる。
    国によって国民性もそれぞれに異なる。

    それぞれの人がそれぞれの信じる真理を述べる。そこが面白い。

    ウィリアムはいつでも正しいことを述べる。
    学僧である彼は科学やら数学やらを用いて真理を追求し導き出す。
    過激だったり偏ったりする真理を持つ人々と対比させることで、双方の説教がより面白みを増し、ウィリアムの現代的な考え方が際立っている。


    舞台となるイタリアの修道院に様々な国やイタリアの各地方から集まってきた修道僧たちという図は、私が若い時に一人旅をしてポルトガルの田舎町のペンサオに滞在していた時のことを思い出させた。
    そのペンサオに集まった宿泊客はみんな違う国の人間だった。
    その時は英語で会話をしたが、この小説の中、中世という時代ではそういうわけにはいかない。

    語り手のアドソはドイツ人で、アドソの師匠ウィリアムはイギリス人で、舞台はイタリアである。
    ラテン語があり、ギリシャ語があり、アラビア語があり、と様々な言語が出てくる。
    これは先に書いたこと(しるしというもの→記号論)に繋がっていく仕組みになっているわけである。


    実に面白く興味深い本だった。

  •  読み始めたのは17のとき。読み終わったのは24のとき。高校時代に下巻が図書館で貸し出し中だったのが、このタイムラグの理由です。たしか。<br>
     エーコは本職が記号学者で世界的な業績もあげているはずだが、彼の記号論著作の邦訳と『薔薇の名前』邦訳をもっている人間の割合って、1:628くらいじゃないかと思う。わたしも他の著作はもってません。628に属します。<br>
     で、娯楽作品としてうまくできていたと思う。異端論争とか『詩学』とか、小難しいネタを盛り込んではいるけれどあくまで舞台小道具として映える程度の使い方、主になる筋はわかりやすい。こういう蘊蓄スパイスの塩梅については、学者なのにセンスあるなと思います。探偵役の修道士さんも、頭がよくってその上むやみに話の分かるおっちゃんという感じで良かったし、語り手の修行僧も初々しく真面目だったり超情けなかったりしてうまくキャラが立っていたと思う。総じて言えばおもしろかった・・・<br>
     ハズ。なのに印象が薄い。なんで・・・?あまりに娯楽作品としてまとまりすぎてしまったか。あ、でも読了後友人と「笑い」について議論した覚えがあります。抑圧的な言説を「ズラす」手段として「笑い」を提示するっていうのは、もう言われ尽くされた議論であるかどうか?そこにあらたな可能性はあるのか否か?・・・でもやっぱりよく内容を覚えていないなあ。

  • 全体的に薄暗い中世の修道院の雰囲気を感じられて良かったです。
    キリスト教やこの時代背景について詳しかったらもっと面白いと思います。いつになるかわかりませんが勉強して再読したいです。

  • 本で埋め尽くされている夢のような迷宮が出てきます。

  • もうね、この作品ある国内有名作品しか
    出てこなくなったのよ。
    だってこの作品と異端部分除いちゃえば
    ほぼ一緒なんだもん…

    犯人も一見するとなんだけれども
    それを読んでしまっていたので
    もうこれこの人で決まりでね?と
    思ったらまさにでしたし。

    そして犯行理由もやっぱり
    狂気でしたね。
    一番守っているであろう人間が
    一番の反キリストだったのよね。

    そして別の一面もあります。
    修道士としてあるまじきことをした
    アドソが憑りつかれる一時の
    抱いてはいけない感情ね。

    でもそれは、ある種の権威により
    あっけなく終焉を迎えるのです。

    難解かな?
    ミステリーに別ものが混じっているからね。

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著者プロフィール

1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。
トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。

「2022年 『中世の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウンベルト・エーコの作品

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