Genesis 一万年の午後 (創元日本SFアンソロジー) (創元日本SFアンソロジー 1)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018306

作品紹介・あらすじ

【日本SFの新時代を作る書き下ろしアンソロジーシリーズ始動!】創刊号はベテラン堀晃を筆頭に、松崎有理、宮内悠介、高山羽根子、倉田タカシなど現在の日本SF界を牽引する俊英のほか、次世代を担う新鋭・久永実木彦、ライトノベル界で活躍する秋永真琴・宮澤伊織の新作短編を収録。日本SFの新たな潮流を創世するオリジナル・アンソロジー誕生。

感想・レビュー・書評

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  • ──ここに創元日本SFのフラッグシップとなる書き下ろしSFアンソロジーを創刊いたします。(まえがき)


    SFほどアンソロジーと相性の良いジャンルは他にないだろう。アイデアの凝縮された短編こそがSFの華であり、様々な著者のアイデアを横断的に楽しむことができるからだ。

    ということで創元社のSFアンソロジー、第一巻。
    小説7つとエッセイが2つ、日記(?)が1つ。

    好きなのは表題作「一万年の午後(久永実木彦)」。
    ヒトの手を離れヒトを忘れ使命のみを持ったアンドロイド、変化することなく星ぼしの探索を続けるアンドロイドたちの話。
    惑星Hに派遣された8体の彼らが、緩やかにしか変わらない惑星で一万年の時をただ観測することで過ごしていく、静謐で穏やかな日々。そして起こった一つの事件。
    著者受賞後の第一作とのことで今後楽しみです。

    マフィアの若いボスが、お忍びの姫と一人の男を探して下町へ行くお話「ブラッドナイトノワール(秋永真琴)」も良かった。
    人類に代わり夜種と呼ばれるヴァンパイアが世の覇者となり、希少な人類は王族とされて守られる世界。すてき。

    そもそもこの本を手に取る原因となった「草原のサンタ・ムエルテ(宮澤伊織)」は、以前短編売りのKindle本として読んだ第六回創元SF短編賞受賞作「神々の歩法」の続編。宇宙人に取り憑かれてスーパーパワーを手に入れ外来侵略宇宙人と戦うウルトラマン的少女の、サポートチームのおじさんの話。


    怪物が降ってくる世界で重量上げならぬ〈怪獣上げ〉がスポーツとして流行ってる世界の話「ビースト・ストランディング(高山羽根子)」も、変な舞台設定と裏腹に作り込まれた世界が面白かったし、オチが秀逸な「イヴの末裔たちの明日(松崎有理)」も好き。悪夢か薬物中毒のバッドトリップかと言うような作品「生首」もわけ分かんなくて楽しかった。
    エッセイはあのSF画家、加藤直之。
    「それでもまだ描きたいSFのイラストのネタはたくさんあります。」だそうで、こういう年のとり方いいなあと憧れます。

    第二弾までは出ているようなので今度読もう。ずっと続くと良いですが。

  • 表題作『一万年の午後』が一番好き。美しい風景とマ・フ達の心?の揺らぎが丁寧に描かれていて良かった。宮口悠介・秋永真琴・宮澤伊織さん達の作品も読み応えあった。

  • 2018年末に刊行された新しめの日本SFアンソロジー。短編8編+エッセイ2編が収録されています。

    アンソロジーを読むこと自体、ちょっと良い(と見込んだ)食事処にぷらっと入って「おまかせコース」を頼むようなもので、満足したい気持ちと、意外なものを味わいたい気持ちが同居していると思います。
    個人的には両ポイントともにちょうど良い感じの1冊でした。編集者の匙加減の素晴らしさもあるんでしょうが、SFというジャンルの中での振れ幅もなかなか心地良かったと感じました。
    (正統派SFもありつつ、一見ファンタジーでは?日記では?となる作品や、突き抜けたシュールさの作品があって、色彩豊かでした)

    1編挙げるとすると、個人的には「イヴの末裔たちの明日」が面白かったです。AIに仕事を奪われ、ベーシックインカムで養ってもらう世界を舞台に、「これから人間にできるのは新薬治験くらい」というネットの書き込みを見て治験ボランティアを始めた主人公は…という話。
    結末を読んで、こういう世界は本当にあり得るよなぁ…と思いました。でもそれはユートピアなのかディストピアなのか、正直悩んでしまいます。

    あと、個人的に短編を読むときに気にしているのが、どれだけ早くその短編の世界を理解できるか、です。
    別に早い方が良い訳ではなく(遅すぎると短編だと終わってしまいますが…)、書き出しに個性が出ると言うか。割り切って説明調で書くケースもあれば、最初に象徴的なパーツを掘り下げて書くケースも。
    本著を読んで感じたのは、前者のような親切かつクイックな、ある意味ラノベ的な書き出しもアリだなぁというコト。時代に合わせた変化なのでしょうか。

    各短編それぞれの個性が組み合わさった、面白いコース料理でした。
    次巻も読んでいきたい、出版元の矜持を感じる作品集です。

  • 東京創元社が、社名の「創元=GENESIS」を冠して二〇一八年に刊行したSF書き下ろしアンソロジー第一集。各作品の前に編者による洒脱な紹介コメントも寄せられていて、「日本の現代SF小説界、作家も出版社も一丸となってこんなメンツで盛り立てていきますぜ」という顔見世興行的な気合いの入りようが感じられる。今のところ二〇二一年の第四集まで毎年刊行が続いているようだ。
    SFに限らず同時代の作家の好きと思える小説に出会えることには、古典名作を楽しむのとはまた違う喜びがある。創元さんの四年前のお薦め、彩り豊かで「ぜんぶ好き」とはいかないが、これだけいろいろ並べて出してくれたことにありがとうという気持ち。

    以下、備忘メモ。
    ■久永実木彦『一万年の午後』
    聖典(ドキュメント)に従い「特別」を作らないことにこだわるマ・フたち。マ・フとは、人類が遺した人類そっくりなロボット。
    ■高山羽根子『ビースト・ストランディング』
    ちょっとよくわからなかったけど、木綿が人類を救った?(違)
    ■宮内悠介『ホテル・アースポート』
    やっと読みやすいのがきた。SFなのにミステリー。弦楽器や香水もいい味出してる。
    ■秋永真琴『ブラッド・ナイト・ノワール』
    王族とかヴァンパイアとか、ラノベっぽい。でも嫌いじゃない。好みが似てたのか(眼鏡とか)。片仮名タイトルが続くなあ。
    ■松崎有理『イヴの末裔たちの明日』
    ここまででいちばん好き、王道の、すぐそこの近未来らしさ。AIに次々と仕事が奪われる時代、「人間にできる仕事」というキーワードで求人検索する主人公の姿が、なかなか笑えない。
    ■倉田タカシ『生首』
    不条理もの。夢みたいな目まぐるしい混沌。意味はわからないけど不思議に好き。
    ■宮澤伊織『草原のサンタ・ムエルテ』
    (未読)「本格的近未来アクションSF」とのことだが、私の頭にはぜんぜん入ってこなくてギブアップ。みんな大好きらしいガンダムが私にはぜんぜん見られない感覚と似ているが、この作品がガンダムと似てるかどうかは知らない。
    ■堀晃『10月2日を過ぎても』
    トリは大御所らしい。しかも大阪SFというジャンル?らしい。高齢者ばかりになったマンションの理事をしてる設定もリアル。でもちょっと受け止めきれなかった。

  • 2回目読了。今後長く付き合っていけそうなSF作家を決める点でも、このアンソロジーは役に立つ。この創元日本SFアンソロジー GENESIS は今後定期的に刊行する予定でもある事から再度読み直して気合を入れることにした。現在3巻まで発行されており、近いうちに他の2巻も読み進めて行くことになるだろう。さて、各作品の感想を述べる。

    久永実木彦「一万年の午後」
    先日、「七十四秒・・」を読んだばかりなので詳細は割愛する。勿論、今後目が離せないSF作家の一人である。

    高山羽根子「ビースト・ストランディング」
    パス

    宮内悠介「ホテル・アースポート」
    SFとミステリーのハイブリッドの作風で、どちらも好きな私にとっては二度おいしいものとなっている。ただ、ミステリーとしては単純な仕組みであった。私が中山七里で鍛えられているのが一つの要因かもしれない。それよりも、序盤のシーンがSF特有の描写・背景であって、それもあってか作品にのめり込んでいった。

    秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール」
    出だしから引き込まれる。設定もなかなか面白い。終わっみたら、昔の映画を観たような懐かしさも感じた。躍動感溢れる展開も面白く、他の作品も読んでみたい衝動に駆られる。

    松崎有理「イヴの末裔たちの明日」
    なかなか書店ではお見かけしないSF作家なので、現在古書検索を重ね、徐々に作品が集まりつつある。作風がリケジョなので、リケダンの私としてはすごく読みやすい作品を書いて戴き感謝している。ご存知の通り、科学のというのはSFアイディアの宝庫であり、どの科学を用いても面白いSF小説を書けるはずなのであるが、松崎さんは寡作である、それが実に勿体無い。馬力のある作家なので今後の作品・活躍に期待したい。

    倉田タカシ「生首」
    パス

    宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」
    「神々の歩法」の第2弾との事だが、第1弾を読んだかは記憶が曖昧。SF活劇というイメージで、読んでいるとその躍動感にどんどん引き込まれていく。「裏世界・・」とは少し異なる描き方にも共感できるし、少し異なる程度なのが良い塩梅とも言える。この作品でもアニメが作れるのではないか、そのためにはシリーズ化も必要では?

    堀晃「10月2日を過ぎても」
    最近、眉村卓の遺作の単行本を読んだが、最後は読むにつれて同情が深まっていった。やはり、どこかの時点で断筆をしておく必要があると悲しいかな思ってしまった。本作品もそれに近いような読後感を持った。かつての「太陽風交点」の様な素晴らしさはまるで見られず、単なる文字の羅列と化している。堀ファンには申し訳ないが、これが悲しい現実かと。

  • 2018年12月創元SF文庫刊。アンソロジーのGenesisシリーズ1作目。久永実木彦:一万年の午後、高山羽根子:ビースト・ストランディング、宮内悠介:ホテル・アースポート、加藤直之:SFと絵、秋永真琴:ブラッド・ナイト・ノワール、松崎有理:イヴの末裔たちの明日、吉田隆一:SFと音楽、倉田タカシ:生首、宮澤伊織:草原のサンタ・ムエルテ、堀晃:10月2日を過ぎても、の8つの短編と2つのエッセイを収録。戦闘の設定と展開の圧倒的な面白さを持つ宮澤さんが良い。これが読めただけで満足。人と吸血鬼の立場と関係をハートフルに描く秋永さんも好み。松崎さんのAI世界もオチが効いていて楽しめました。

  • SF。短編集。エッセイもあり。
    これは良い企画。5年、10年と続いてほしい。

    久永実木彦「一万年の午後」
    人類絶滅後のロボットたち。綺麗な文章が印象的。

    高山羽根子「ビースト・ストランディング」
    怪獣を持ち上げるスポーツ。相変わらず奇妙な設定が持ち味。好き。

    宮内悠介「ホテル・アースポート」
    SF設定でのミステリ。ミステリとしては小粒だと思うが、上手くまとまってる。舞台設定が良い。

    秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール」
    吸血鬼&マフィアもの。ラノベやマンガぽさが強い。成田良悟『バッカーノ!』風な印象。好き。

    松崎有理「イヴの末裔たちの明日」
    近未来の技術的失業。リアルなテーマを、静かな文章でコミカルに描く。作者らしい。好き。

    倉田タカシ「生首」
    かなりの異色作。自分はついて行けなかった。

    宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」
    SFアクション。『裏世界ピクニック』のイメージが強いが、こんなのも書くのか…。

    堀晃さんは、日記風ということでスルー。

  • 魅力あふれる6つの異世界。没入した頃に物語が終わるので現実世界に取り残された気持ちになる。
    年1,2回ペースで続刊予定ということで楽しみ。

  • 一万年の午後が好きだった、
    生首がおもしろい

    AIは最終的に心が宿るよね多分

  • 東京創元社から創刊された日本SFのアンソロジー。
    先行のアンソロジーには河出文庫の『NOVA』があるが、本書はそちらともまた違った雰囲気で面白かった。あと、収録作家が被ってないのには吃驚した。
    続刊も出るようだしこちらも楽しみだ。

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