- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488025465
作品紹介・あらすじ
複数の人間が夢で共有する〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と、現実世界で起きる不審死。驚愕の真相にあなたも必ず騙される。鬼才が贈る本格ミステリ。
感想・レビュー・書評
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おはよう、アリス。
その言葉は赤の王様が言ったのだろうか。
不思議の国は死と生を繰り返すのかもしれない。
頭のおかしい奴しかいない。
それは、現実でも同じだろ。
でも主人公は、
「大好きな世界だった」と。
チェシャ猫だけが真実を、全てを知っている。そんな気がした。
チェシャ猫の姿が目に浮かぶ。
彼はきっと一匹。今までもこれからも。
彼が見ている世界を見ていたいと思った。
犯人がアリスではない事も、初めから知っていたんでしょ?
チェシャ猫はきっと、
この世界が大好きなんだな。
おはよう、アリス。
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'21年7月9日、読了。小林泰三さんの作品、4冊目。
コミカルな会話と、叙述トリック(と言っていいのかな?)、所々のグロテスクさ…全体的に、楽しんで読みました。ただ…今まで読んだ小林さんの作品では、僕には一番合ってないかな。
本家「アリス」は少年時代に一度読んだだけなので(正直、さほど好きでもないので)、本作に登場するキャラクターが殆ど判らず、いちいちググって読みました。なので、ゆっくりと楽しんで読んだ、かな…まあ、すごく、ではないけれど…面白かったです。
街の、近所の本屋さんで見ると、小林泰三さんと言えば「アリス」シリーズが置いてあるので、これが代表作なんだろうな、って…凄く期待大!だったから、かな?僕には前に読了した3作「大きな森の〜」「因業探偵」「記憶破断者」の方が、良かったなぁ〜。 -
すごく面白かった。
噛み合わない会話が多く前半読んで疲れてしまいそうで好き嫌いは別れそうな話ではあったけど私は好き。
独特の世界観とちゃんとした伏線回収。
ラスト一気に事実が分かるのがおもしろい。予想出来なかった。
ラスト10ページは思わず首を抑えてしまった。
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してやられた!のような驚きはなく、淡々と読み終わりました。私には登場人物が多くて覚えることができませんでした。殺すシーンの描写がとても細かく、痛々しい場面が鮮明に頭の中で再生されるようでした。
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あえての読みづらさ。特に現実と夢の世界がつながるまでの前半はつらい。
推理を放棄して読み進めた後半で伏線回収されるのが気持ち良い。
しかし読後の感想は「疲れた」 -
会話で話が展開していく。「」続きのやり取りに初めは抵抗があったけど、慣れれば問題ない。むしろ少しズレた会話が不気味な世界観を演出している。
可愛くも、どこかこわい不思議の国のアリスのイメージぴったりのホラーでした。 -
独特な世界観で起こる殺人事件。
頭のおかしい登場人物達の会話には苦労しながらも、楽しく読めました。
"絶対に騙される"というキャッチコピーに「ほぅ、随分と強気だなそこまで言うなら…」という感じで読んだのですが、いつの間にか夢中になって読んでいて、最終的に見事に騙され本気で悔しかったのを覚えてます。今まで読んだ中で一番「騙されたぁぁぁぁ!!」っとなった本なのでオススメです。ぜひ騙されて悔しんでください。 -
複数の人間が夢で共有する〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と、現実世界で起きる不審死。驚愕の真相にあなたも必ず騙される。鬼才が贈る本格ミステリ。
・レビュー
これ評価★4か★5で迷ったなぁ。まあ4.8くらいだと思っていただければ。個人的にはラストシーンと読者が忘れがちな序盤からの細かな伏線を評価して★5に落ち着けたいと思う。
さてこれから読む人は注意点がいくつか。ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『スナーク狩り』の知識が基本的な物語の理解に必要になる。もっとも、最低限必要なのは一部の設定とキャうラクターとエピソード。解らない固有名詞出てきたらWikipediaで調べるってやり方でも十分に理解できる。スルーして読み進めちゃうのはあんまり勧められないかな。できれば読む前に三作品のWikipediaに目を通しておくといいのかもしれない。感覚的には『鏡の』の知識が多く必要だったかな『スナーク狩り』に関しても作中では説明がなくてやや不親切だから調べておくのがいい、こちらはアリス好きでも知らない人が多いと思うし。
中身に関して。この作品は、好きな人と読むこと自体が耐えられない人とで分かれそう。一つは原典に当たるルイス・キャロルのアリスシリーズの言葉遊びとか、会話のナンセンス節が肌に合わない人は、この作品も同じように無理だと思う。そう思う程には原典を踏襲しているというか、オマージュが非常に上手い。不思議の国の住人たちの性格や口調、言動もオマージュしつつ、それでいて連続殺人事件という背景に合わせたオリジナリティを持っている。もう一つ合わないとしたら、結末だろうと思う。結末に関してはあまり書くことはできないが、嫌いな人は嫌いだろう。個人的には大好きな終わり方だった。あとは、アリスに興味がなく、単にこのミスなどを観てミステリ目的で読んでみたという人はアリス系の知識がないかもしれない上にいちいちアリスを絡めてきて下手をするとSFともとれる設定でどこがミステリなんだろうと思うかもしれない。正直なところ、このミスは当然商業目的でもあるのであまり本格を期待すべきじゃない……と思う。でも僕は個人的にはこれはしっかりミステリであるとは思う。未読だけれど『生ける屍の死』のようにあえて現実世界にはありえない設定下でロジックを組むのはルールだと思って受け流してしまうのがいいのではないか。
その特殊な設定なのだけれど、読者は現実世界と不思議の国を交互に読んでいく。登場人物は現実世界と不思議の国で相互リンクしている。不思議の国で死んだものに対応する現実世界の人間が死ぬ。これが最初なかなか戸惑うところだけれど、50ページくらい読めば慣れるとは思う。慣れれば面白い。前述の苦手ポイントをクリアした人なら(笑)
絶対騙されると謳ったミステリである以上、当然トリックが仕込まれている。ところがミステリ好きなら違和感はミスでなく伏線であると勘が働くので正直気づく人は気づく。レビューを読んで見ると、気づいたつもりだったけど騙されたという人が多かった気がするから、騙されたくなければ油断せずに読み進めるといい。最初に書いたけれど、読み終える頃にはすっかり忘れてしまっている伏線がすごく多い。二度読むと、一度目にはミスリードにひっかかっていたということがよく分かる作品。ただし一度目に読み終えた時にはミスリードをミスリードと気づいていないからそんなに沢山伏線があったとは思わないようで、評価を下げている。一度目で納得したことは作者に「真の目的とは別の論点で納得させられた」ことであると思ったほうがいい部分がいくつかある。亜理やアリス、井森やビルの発言なんかは特に遠回しだから煙に巻かれる。気になった人は二度読んでみてもいいかもしれない。詳しいネタバレレビューを書いてる方のブログなんかでも確認できるかもしれない。
順調に騙された人は終盤感心すると思う。清々しいほどに騙される人は多いかもしれない。トリックを全部見切った人も別の視点で驚くかもしれない。そして全てを看破したとしても設定が設定だけにそこそこ楽しめるんじゃないかなと感じた。エンターテイメント性というか実験的にミステリを変わったやり方でやってみたという雰囲気があって楽しく読むことができた。
ダークファンタジー的な雰囲気のある二つの世界の平行殺人事件、アリス好きは一読の価値あり。