金環日蝕

著者 :
  • 東京創元社
3.95
  • (95)
  • (149)
  • (82)
  • (10)
  • (3)
本棚登録 : 1348
感想 : 165
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028787

作品紹介・あらすじ

知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったが――。《本の雑誌》が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位『パラ・スター』の著者が贈る、〈犯罪と私たち〉を描いた壮大なミステリ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • たまたまひったくりの現場に出会した女子大生と男子高校生が、2日間限定で犯人探しをする。犯人は意外なところで判明したが、予想もしない事実が次々と明らかになる。後半に行くにつれ、全貌が徐々に明らかになるのだが、何気ない出来事が見事に繋がって、唸らされる。小説のベースとなる、個人の問題、家族の問題、社会の問題は、極々ありふれていて、本当に身近なもの。それだけに、救いようのない絶望感もリアリティがある。この作者の本、他にも読んでみたいと思いました。

  • 波に呑み込まれるように詐欺グループの一員になってしまっていた理緒。
    自分から詐欺グループに突っ込んでいった錬。
    対照的なようで他人からの暴力によって、さらに家族を守る正義感からこの道へ進んでしまった事を思うと似た者同士なのだろう。
    一般人に見えた人にも裏の顔があり、人の顔は一面ではない事を思い知る。

    2つの物語が重なった時よくあるパターンは、残り数ページで色々諸々が種明かしされ『あれはこれだったのか』とスッキリしてエンディングとなるのだが、この小説はその種明かしは早めに訪れる。しかしそこからの展開はエンディングに向かうというより第二章が始まったような濃さでまた引き込まれる。ものすごく長いエンディングと捉える事も出来るが。
    最後の種明かしも明言はしてないが、確実にそれと分かる表現で伝え方が上手いと思う。

    とにかく最後まで面白かった。
    好きな作家さんがまた一人増えました。

  •  詐欺をテーマにした面白くも恐ろしい小説。人間の悪意と残酷さが刻みつけるようで、読み進めるのが怖くて読み切るまで大変だった。
     様々な巧みな詐欺により登場人物達が続々と騙されていくリアリティある描写、そして読者的に信頼していたはずの人物すらある意味ではを働いていた部分などが特に恐ろしかった。そして彼らもまた詐欺をすることで感覚が麻痺したり、それを楽しんでいる自分を恐れ、良心を捨てきれないのにやってしまうのが恐ろしい。また詐欺に向かってしまうような理不尽で困窮した立場の話も多く出てきており、それもまたやるせなさや、それを強要するような人間の悪性に慄く。最後まで詐欺そのものの黒幕の姿が見えないこともタイトルも相まって恐ろしい。
     本作のラストでは詐欺をした過去もその才能もまた呑み込んでそうでない道を選ぶことができた人々のエピローグで話が締められている。詐欺の才能と本能を持つ人間は確かに存在し、そうせざる得ない状況に追い込まれることがある以上、詐欺は無くなることは決してない人間の必ず持つ多面性の一側面であり宿業のようなものなのだろう。だからこそ自らの宿業を認識した上でそれを跳ね除けていきたいという、か細いながらも強い希望を願わずにはいられない。
     

  • 犯罪を描いたこの物語
    登場人物たちがするすると吐き出す嘘の数々
    その度に胸が締め付けられ、そして愛おしくてたまらない


    大学生の春風が引ったくりを目撃し、犯人を追いかけていると、通りかかった学ラン少年も追跡に加わる。
    そんな場面から始まる物語は、青春ストーリー?
    それとも学園ミステリ?
    といった雰囲気。
    ずいぶんと足の速い二人は、とっても魅力的なキャラで良いコンビ。
    これからも軽やかに展開する予感……?


    しかし第二章
    同じ大学生の理緒が登場すると、ガラリと雰囲気は変わる。
    理緒の妹と母親。
    学ラン少年(錬)の弟と妹、母親、更に錬の隣人で友人の正人などが登場し、どんどん厚みを増していく。
    そして最初はバラバラだったものが、次々と繋がっていく気持ち良さ。
    今までの、これからの、全ての言動や描写に意味があり伏線なのだと気付き、音を立てて嵌っていく。


    でも題材が犯罪なだけに、苦しく辛い場面も多い。
    特に子どもたちを巻き込む犯罪は悲しい。
    どうかあちら側の世界へ行かないで!

    錬、あなたは一人じゃない。
    もう一人で戦わなくていいんだよ。
    ぎゅっと抱きしめたい……

    • aoi-soraさん
      優しいですか?
      ありがとう(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)
      Manideさんは約1年前に読了ですね
      私は皆さんがレビュー上げてるのを見て予約したか...
      優しいですか?
      ありがとう(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)
      Manideさんは約1年前に読了ですね
      私は皆さんがレビュー上げてるのを見て予約したから、およそ1年待っていたんだわ(@@)

      さっきManideさんの本棚へお邪魔しましたが、テストだったんですか?
      いつも色んなことに挑戦していて、すごいなって思います!
      私もダラダラしてちゃダメですね(⁠─⁠.⁠─⁠|⁠|⁠)
      2024/03/17
    • Manideさん
      優しいですよ(^^)
      いつもそう感じてます。

      1年ですか…
      長いですね。
      予約ている人の、分類ごとの平均貸出期間を計算して、おおよその受取...
      優しいですよ(^^)
      いつもそう感じてます。

      1年ですか…
      長いですね。
      予約ている人の、分類ごとの平均貸出期間を計算して、おおよその受取日を示して欲しいですよね。図書館システムの進歩に期待ですね。

      そう、テストだったんですよ〜
      ギリギリうかってそうで、ホッとしてます。
      少し前に帰ってきて、いま、だらだらしてます。

      久々に本を読むか、勉強するかを迷っているところですが、なんとなく、そのまま寝そうな気もしてます…
      お昼寝が好きな私です(*´꒳`*)…zzZ♡
      2024/03/17
    • aoi-soraさん
      休息は大切です
      寝ましょう(笑)
      休息は大切です
      寝ましょう(笑)
      2024/03/17
  • 春風と錬、二人のテンポ良いやり取りに、序盤から、ぐいぐい引き込まれた!
    登場人物それぞれの過去が壮絶すぎたことと、終わり方に拍子抜けしてしまったので、そこはちょっぴり残念だったかなぁ…

  • 熱心な書店員さんなど、口コミで広がっているような感じで、発売前から気になっていた。
    が、あいにく年間のランキングでは上位に入らなかった印象。

    タイトルが文学的?なので、純文学かな、とふんわり思っていたら全然違ったが、一気読みだった。

    ミステリというかサスペンス?糸がつながっていくところは、気持ちよく読める。
    登場人物たちの意外な裏の顔にも、背筋が凍るような思いをしたり。
    そんなに事情を抱えた若者ばかりではないだろうけどね…

  • 主人公がひったくり現場に遭遇したことをきっかけに、さらに大きな事件に巻き込まれていく話でした。
     女子大学生と男子高校生のかわいいバディものかと思ったら、違いました。

    現代日本の闇が色々と出てきました。読みやすく、悪くなかったと思います。

  • ひったくりの被害に遭遇した女子大学生と男子高校生が犯人を探し求めるが、このことが過去の大規模詐欺事件へと繋がっていることに気づく...。
    400ページとボリューミーだけれど1日で読み終わるほど惹きつけれた作品❕。
    特に登場人物一人一人の個性的なキャラクターが面白かった。(錬とその兄妹の掛け合いが携帯小説みたい)
    序盤から錬という少年の頭のキレや行動になんか裏がありそうに感じながら読み進めていたが、まさか彼も父親と同じように人を騙し(錬は悪事をしておらずいい意味で)ていたとは。詐欺で家族を含めた多くの人の人生を狂わせた父親と同じ行動(目的が違っていても)をとっていたのがどこか皮肉めいている。
    犯人探し自体はスムーズに解決されたけれど、錬に似た男性の写真など未解決の部分もあり少し心残り。作者さんはあえて残したのかな❔

  • ページターナー本。一気読み必須。
    ひったくりにあったおばあさんを助けたことが、思いもよらない展開に発展していく、その裏切られ感がなかなかよい。次々と展開する第二の顔、第三の顔に翻弄させられるのもまた楽しい。
    それぞれに深い傷を負った若者たちが、トラブルを解決する中で自分を成長させていく。でもそんなに簡単に傷は癒えないわけで、続編がありそうな予感。

  • 人は綺麗事では生きられない。
    犯罪に手を染めたくなくても手も染めてしまう人、息をするようにそれを行う人、実際にいると思う。そんな人たちが一つのきっかけで集まって事を明らかにしていく。


    犯罪に巻き込まれた人が犯罪を犯す側にもなる、という、これって当たり前を壊された時の反動なのだろうか。これでもかって犯罪に巻き込まれた人と犯罪を犯した人が集まっているのがエクスペンダブルズ的なものを感じる。

    各登場人物の心情は結構しっくりきたけど、主人子にだけ同調しきれずに終わった。相性がよくなかったなぁ。

    2024.2.4
    18

全165件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

岩手県生まれ。『陸の魚』で雑誌Cobalt短編小説新人賞に入選。『いつまでも』で2008年度ロマン大賞受賞。集英社オレンジ文庫に『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ(全5冊)、『どこよりも遠い場所にいる君へ』コバルト文庫に『屋上ボーイズ』、ノベライズ『ストロボ・エッジ』『アオハライド』シリーズ、他の著書に『パラ・スター 〈Side 宝良〉』などがある。

「2022年 『読んで旅する鎌倉時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿部暁子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×