あなたには、殺せません

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028961

作品紹介・あらすじ

「犯人だって、好きで犯罪に走ろうとしているわけではありません。必ず迷いがあります。その段階でうちに来てもらえれば、犯罪の発生を未然に防ぐことができます」――そのNPO法人には、罪を犯すか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか。犯罪発生を未然に防ぐ!? 新しい形の倒叙ミステリ短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 殺人を犯すか悩む人がやって来るNPO 法人。
    殺害計画を細かく検証し、失敗するリスクを挙げていく。それで相談者に「危険で割に合わないな」と思わせて諦めさせる。
    そのはずなのだけれど、どう読んでも殺害計画に穴がないかの答え合わせをしているようにしか見えない。本当に止めようと思っているのか分からないから面白い。
    「ねじれの位置の殺人」、3人のうち2人は自分のためだから同情の余地はないけど、1人は人のために計画したのに。。。

  • 犯罪に手を染めようと思っている人の相談窓口、自分勝手な行動の結末はいかに #あなたには、殺せません

    ■あらすじ
    「犯罪など起きないほうがよい」
    殺人を計画する人の相談窓口には、様々な人がやってくる。自らの殺害計画を相談員に持ち掛けるのだ。相談員は罪を犯してしまわないように折衝するのだが…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ありえない超現実的な世界観にもかかわらず、会話のやりとりがリアルで微妙に事務的。こういう不思議な物語こそ、生の劇場で見てみたい。役者ひとりひとりの芝居に目が離せなくなりそう。

    全部で5つの作品からなる短編集ですが、様々な動機や殺害計画があってニヤニヤしちゃう。そして相談員の分析が的確すぎるんですよね。確かに!と思うこともしばしば。結末にも工夫があって最後まで飽きさせません。さすが石持先生、倒叙ミステリの名手だとあらためて感心しました。

    〇五線紙上の殺意
    二人組ミュージシャンの思惑。
    殺害の難しさを提示してくれる一作目、本設定のなるほど感もたっぷり。シンプルながら大好きな結末で、ミステリーはこうじゃなきゃね。

    〇夫の罪と妻の罪
    不倫が招いた夫婦の不幸。
    主人公である妻の人間味と愚かさが良く描けている。完全犯罪の難しさと、自らの罪はどこに帰結するのかを提示してくれる。

    〇ねじれの位置の殺人【おススメ】
    大学生グループで発生した事故、その後の人間関係のすれ違い。
    どんな不幸や許せないことをされても、自分本位の考えは、ろくなことにならないというアンチテーゼ。世にも奇妙な物語で映像化してほしい一作。

    〇かなり具体的な提案
    英会話教室の仲間の裏切りに対する復讐計画。
    どんなに丁寧に計画を立てても、完全犯罪の難しさがヒリヒリと分かる作品。

    〇完璧な計画【超おススメ】
    大好きな主人公!頭脳明晰で行動力のある女性で、殺害方法やロジックも筋が通っていて素晴らしい。そしてなんといっても結末も秀逸ですね。

    ■ぜっさん推しポイント
    本作の面白味は、相談員のアドバイスがいわゆる人生相談ではないというところ。悩んでいる人の心のケアをするのではなく、計画の無謀さを指摘して諦めさせるというアプローチなんです。相談員にもかかわらず、まるで温かみがないところが最高!

    ただ最終話で相談者に告げる最後の一言が重いですよね。我々もたとえ犯罪に手を染めなくとも、日常生活で肝に銘じておくことです。

  • 犯罪予備軍たちの駆け込み寺と呼ばれているNPO法人に今日も殺意を抱く人が相談にやってくる。

    この相談員が冷静で鋭い。

    悩める犯罪者予備軍の犯行計画の穴を次々と指摘していき、問題点を洗い出す。
    そんな杜撰な計画では無理ですよと言うわけだが…。
    果たして彼らの殺意は、相談員によってどうなったのか…。

    とにかく考えられない結末で、こんな倒叙ミステリーは初めてだった。
    この相談員って一体何者⁇と思わせるほどに。
    もしかして一番悪意があるのはこの相談員なのかと…思いたくなるのも不思議ではない。



    ○五線紙上の殺意
    音楽活動をするコンビに裏切られた恨みを晴らすためにしたこと。

    ○夫の罪と妻の罪
    夫の殺害を目撃した妻が、事件発覚前に動き出すのだが。

    ○ねじれの位置の殺人
    大学の仲間4人のうちの1人の死により、どうなったのか。

    ○かなり具体的な提案
    英会話講師の死を知り、殺意を募らせた結果…。

    ○完璧な計画
    同性カップルの破綻の結末。


    特にねじれ位置の殺人の結末に驚いた。
    ねじれてる。
    どれも結末はありえないと思ったのだが、しかしよくよく考えてみれば、誰も心の中は読めないわけで殺したいと思った相手も反逆してくる可能性はある。

    う〜ん。相談員さん、あなたは彼らの復讐を諦めさせたかったわけですよね、それとも…と改めて確認したくなった。

  • 罪を犯すかを悩んでる"犯罪者予備軍"の人たちの駆け込み寺と言われてるNPO法人。NPO法人の相談員に相談して罪を犯さないようにする、が目的なんだけど、読んでて何かおかしいと思った。この相談員はプロの殺し屋かな?と思えて、更に怪しい。
    確かに相談者たちの言うことを否定はしてる。
    でも、「?」となり「おや?」、「おやおやおや?」、「え〜‼︎」、「そっち〜‼︎」というオチ。騙された感じでこれはどんでん返しなのかな?
    相談員の言葉をよく聞いてどう捉えるかによって、相談者たちの今後が決まる。吉と出るか凶と出るかは本人次第。この相談者はどうするのかを最後に分かるけど、そこが面白い。

    この作品を読んでて、今の私の状況そのものだと思いました。今度、仕事の内容が変わるので同僚たちと猛勉強中。この前説明会に出席したんだけど、講師はただ解説本を朗読してるだけで何の説明もなし。全く分からない。その時貰った解説本を自分たちで読んで何とかしないといけない。毎日、みんなであーでもない、こーでもないと議論してる。難しく書いてあるし、専門用語ばかりで読み込めば読み込むほど分からなくなる。でも、「ここの文章はこういう解釈でいいのでは?」とか「ということはその逆はいいってことだよね?」ということが出てきて、こういう言葉はあまり使いたくないけど、"抜け道"を見つけることができた。こういうのが似てると思いました。

    この作品に登場する"相談員"か職場に来てくれないかな。色々指南してほしい。

  • 初読みの作家さん。

    設定は斬新で面白いし、各話の結末も面白いと言えば面白い。
    それなのに、何故か退屈。
    相談の時に飲み物を持ってきてくださいね、という設定にも全く意味は無かったし、この相談所の本当の目的と存在意義もわからなかった。
    各話の結末に至ることを、相談員はわかっていたのか否か。

    文芸誌に初出の物をまとめただけなので、各話でいちいち冒頭に同じことを読まされたのにも飽きた。
    最終話はもう飛ばし読み。

  • 犯罪を未然に防ぐため、その計画を聞いて、その欠点を見つけ出すことで計画をの実行を断念させる。
    設定が新しくて面白かった。
    もちろん単純に計画を断念するはずもなく…そのあとの展開も様々になっているところがまた良い。面白かった。

  • いやー面白い!!
    寝る間を惜しんで読みきってしまった。

    殺人を考えている人の駆け込み寺のNPO法人。
    ここで相談することで殺人を思い止まる、はずが、あれ?!

    短編集で、それぞれ違った展開になるので、それぞれの結末でびっくりする。
    相談員の感情が全くと言っていいほど感じないので、おめでたいくらい冷静で善意なのか、はたまた相当のサイコパスなのかわからない。そこがまた面白い。

    続きが読みたい!


  • 殺したい相手がいる、けれども警察には
    捕まりたくない、そんなジレンマを抱える
    犯罪者予備軍の駆け込み寺のNPO法人に、
    殺意を持った人が相談に行く設定が面白い。

    相談に行く側は深刻で思い詰めた様子に対して、
    聞く側の相談員は動じないカウンセラーようでも、
    小さな穴も見落とさないやり手の銀行員のようでもあって、話す内容の重みとそれをやり取りする
    人の見た目のギャップに意外性を覚える。

    相談員は、殺人を未然に防ぐために訪問者の
    実行を思いとどまらせようと説得するかと
    思いきや、実行した時に起こるであろうことを
    一つひとつ淡々と検証して否定でも肯定でもない
    フラットな態度に意表をつかれて、殺人の相談
    という非現実的な状況を勘違いして忘れそうに
    なる錯覚感がおかしかった。

    ・五線紙上の殺意→なんだか小狡い
    ・夫の罪と妻の罪→そうきたか
    ・ねじれの位置の殺人→やっぱりね
    ・かなり具体的な提案→バカだなぁ
    ★完璧な計画→うーん、そうなるよね




  • いやぁ、ブラックだった。
    こんなNPO法人あったら怖すぎるなぁ。
    一作目が殺人に成功したので、毎回こんな感じの話?と思いきや色んなバージョンの話があって飽きなかった。
    全体的本当にブラック。

  • 犯罪を考えている人の相談にのるNPO法人、その中でも一号室は人を殺めようとする人が入る部屋。完全防音、録画録音なし、相談員は細身で特徴のない男性。五つの短編では、いつもその部屋で相談する。そして、相談者はアクションを起こすのだけれど…。
    毎回、相談員が的確な回答するので、推理小説マニュアルっぽい印象を受けて、新鮮に面白かった。相談員から考えていることに的確な分析を受けながらも、相談者はアクション(つまりは殺人)をするのだが、結末も色々で、あー、今回はこんなオチかぁと、楽しめました。
    殺人計画だらけなので、中学校以上。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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