- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488186043
作品紹介・あらすじ
新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。刑事事件弁護士の著者が描く圧巻の法廷劇、待望の文庫化!
感想・レビュー・書評
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わずか190ページの長編(?)だが、重い。
舞台はドイツ。
新人弁護士の主人公が担当してしまったのは、家族同然の友人の祖父を殺害した男の弁護だった。
ネタバレになるのでこれ以上は慎みますが、付いている帯を読むと予想できてしまう。
が、分かっていてもおもしろい。
いや、おもしろいなどという感想は不謹慎かな。
腹にズシンとくる重みがあります。 -
ヨーロッパの負の遺産がこんな風に現れるとは。冗長なところが全くなく、一気に読了、これは面白い。
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以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいています。
本書は、先生がFBで推薦されていたドイツのリーガルミステリー。
作者のシーラッハは著名な刑事弁護士。短い文章をテンポよくつなぎ、結末まで一気に読ませます。
ベルリンの高級ホテルの一室で、高名な老人が命を奪われます。容疑者として逮捕されたのは、イタリア人の元職人コリーニ。
国選弁護に指名された新米弁護士ライネンは、被害者が幼馴染ヨハナの祖父であることを知り、個人の感情と職業的使命感の板挟みになりつつも弁護を決意します。状況からコリーニの犯罪は決定的。にもかかわらず動機について硬く口を閉ざすコリーニ。被害者遺族側には辣腕弁護士マッティンガーがつく圧倒的に不利な状況の中、ライネンは真相を追います。
背景には第二次大戦時の出来事がからみ、ドイツ刑法学の権威ドレーアーが大きな鍵を握っています。物語は裁判を縦糸に、ヨハナとの葛藤を横糸に展開します。ミステリーとしても一級品で出版後たちまちベストセラーになりました。また、本作がきっかけでドイツ政府が調査委員会をもうけるなど、実際に社会を動かす結果となりました。シーラッハ自身、祖父が戦争に関与していて、過去の戦争とどう向き合うのか問う側面もあり、多面的な読み方ができます。
S先生とは、ある規制を巡って長時間議論させていただきました。守るべき法益は何か、安易に規制を持ち出していないか。趣味の話と打って変わって、学者としての厳しい問題意識を教えていただいたのが懐かしい思い出です。久しぶりに一献傾けながら、お話をお伺いしたいものです。 -
このドイツ人著者の作品を読んだのは「犯罪」に続いて2作目。この作品をきっかけにドイツ政府も動いたというから衝撃作ですね。殺人事件の裁判を通して、過去のナチ時代と向き合った今作は、ページ数も少ない分内容も凝縮されている。
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映画が先か原作が先かいつも悩むところではあるけれど
フェルディナント・フォン・シーラッハの世界は昔から好きなので
原作を先に読んでみた。
いつもどおり一筋縄では解決しない事件。
戦争犯罪・愛憎・過去・現在、そして法律が込み入った世界を作り出していく。
そして作者の視線は常に弱者に温かい。
読了して映画はもういいかな?と思ったが訳者のあとがきを読んで思い直した。
事件の背後にあるドイツの歴史をまったく知らない私は小説の細かい伏線が読めていなかった。あとがきを参考に映像でさらに奥深い世界を体験してみたい。 -
ドイツの映画を観たいと思い探していたところ、このタイトルに行きつき、原作であるこの小説をまず読んでみることにした。
理解したことを書いてみると、戦争中の殺人は、命令だから罪にならない。指導者側にいたとしても時効がある。
そのような現代の法と照らし合わせた矛盾を暴く、重いストーリーだった。
私のこのような理解があっているのかどうかわからない。
映画を観てみたい。