クリスマスに少女は還る (創元推理文庫) (創元推理文庫 M オ 4-1)

  • 東京創元社
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感想 : 118
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  • Amazon.co.jp ・本 (638ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488195052

感想・レビュー・書評

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  • そうとも、あの子は死んでいる。そうでなくてはおかしい。

    原題は「囮の子」。この邦題は素晴らしい。

    誘拐された女の子を、過去の類似事件から殺されることが予想されるクリスマスの日までに助け出せるかが主題になるが、手に汗握るタイムリミット・サスペンスではない。
    600ページを超す話だが、警察パートの大半は遅々として進まない捜査の描写にあてられる。それを読むことで、読者も半ば絶望しながらもすがるような思いで我が子を待つ親の気持ちになるのだ。

    最後に驚くべき真実が明かされるが、個人的には捜査に参加する法心理学者を巡る謎の結末の方に感動した。

  • ややネタバレ含むかな?
    少女の誘拐がモチーフになっているので、しんどくて一気には読めなかったけど、15年前の少年少女と事件、今の少年少女と事件、大人達が絡みあって終盤一気に収束して行くのは快感。
    古さを感じなかったので、20年前の作品だという事に驚いた。

    ※ポール・マリー神父とアーニー・パイル捜査官が似ているのは、ドクタークレイを追い詰める以外に何か意味はあったのかな?
    ※原題JUDAS CHILD、途中で気づいて裏切りの子?意味深、と思っていたけど、解説によると囮の子っていう意味だとか。
    日本語のタイトルも印象的だけど、原題も好き。

  • こんなに時間をかけて読んだ本は今までにないくらい、丁寧に読んでしまった。
    ミステリーの枠を超えファンタジーかとも思えるし、登場人物の多様性から群像劇とも思えるような。
    クリスマスを迎えるたびにこの本を思い出しそう。

  • クリスマスを控えた町から、2人の少女が姿を消した―
    家出か?誘拐か?
    町に住む刑事ルージュの悪夢が蘇る。
    15年前に双子の妹が殺された時と同じ状況だ。
    そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れた―「私はあなたの過去を知っている」
    一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出の機会をうかがっていた―
    衝撃と感動の結末。

    昨年末に入手して、クリスマス前に読もうと楽しみに寝かせていた一冊。
    この作者の作品には独特の空気が流れていると思います。

    犯人っぽさ漂う怪しい人物が複数いたけれど…まさかの犯人!
    サディーの存在の真偽は?想像なのか、霊的なのか―関係なく厚い友情があったと思うと切ない。
    アリはだいたいそういう、ルージュの妹の対だとは思ったけど。
    戻ってきたアリもだけど、神父といい、精神科医といい、登場人物たちの強さと言ったら…
    “透明な人”が主役でもあったと。

    信じる者は救われるってことかな-
    ゆらぎがあったとしても。

  • 少女二人が力を合わせて無事の脱出を祈るように読んでいたが最後の最後に、えっ、そうきたか…どんでん返しくらうとは…マジか~ 
    女目線で読むと、ルージュ派(赤毛)or アーニー派(金髪)どっちに惹かれるかってとこですが、私はアーニーかなw アリとも元さやに戻ったようで…って、えっ戻ってなかった?花ことば「友達でいよう」か ん~、アーニーよ、それでいいのか⁉

  • 人は闇を嫌う。恐れる。
    闇の中に光があれば、それに向かって歩みだす。
    光は希望で、光は正義だ。
    人は光に近づき、そのまぶしさに目を細め、
    そして穴に落ちる。

    もっと端的にいえば、
    ろうそくの明かりにひき寄せられ、
    炎で羽を焦がしかけた蛾の気分、というか。

    この前に読んだ同じ著者の作品「愛しい骨」も
    子供の殺人事件を扱い、犯人を追うのは残された兄弟という似たような設定だが、
    まったく展開も雰囲気も違う。
    強烈な女性が登場するところは、どちらも共通しているが。

    犯人の追及の過程もさることながら、
    途中で子供たちの居場所がわかりかけた後の、
    引き込まれ感はすごい。
    そして、私は穴に落ちたわけだが。
    このラストについては納得いかない人もいるかもしれない。
    単純な私は、穴の底でただただびっくりしただけで、
    不快感や怒りはなかった。

    そして、
    雪が降る中、売却されてしまった野球場で野球が始まる場面は、
    ぜひ映像化してほしいと思うほど、美しかった。

  • 少女が二人誘拐された。
    一人は副知事の娘で超がつくほどの美少女。
    もうひとりは、中の上くらいの家の女の子。しかし、とにかくユニーク、ホラー映画マニアで悪趣味ないたずらもしょっちゅう、およそ正反対の二人だが無二の親友。
    実はこの町では10年以上前から何度も類似の事件が起きている。美少女が誘拐され、クリスマスの朝に凌辱された遺体が発見されるというおぞましい未解決事件。
    さらに犯人は捕まっているものの類似事件が過去にあり、その被害者は今回の事件を担当することになるハンサムな警察官の双子の妹。
    双子と言っても、二人はありえない一卵性双生児の兄妹で離れがたく結びついていた。
    彼が優秀な子供たちが集められている学校の寮に入り、離れてしまい妹を救えなかったその時から彼は心に穴を抱えて生きている。
    さらに、顔の半分に傷跡がありながらも魅力的な謎の女性博士が現れ、過去の事件も今回の事件も同じ犯人、つまり拘留されている神父は無罪だと主張する。
    さらには二人ずつ誘拐されているうちの、一人が犯人の真の目的であり、もうひとりは囮や手段であるため、本命を手に入れた犯人はすぐさま一人を殺す、この場合は美少女はまだ生きているが、もう一人の親友は殺されていると断定する。
    しかし、少女たちは二人で犯人の隠れ家から逃げ出そうと手を取り合い模索していた。

    この話の魅力の八割はホラーマニアのサディーの活躍に尽きる。
    彼女はいい子キャラではない。冒頭は言葉をあまりしゃべられない少年をひどくからかったり、結果的にけがをさせたりしている。
    けれど、その少年も彼女の魅力に引っ張られているということが中盤でわかる。
    グウェンを溺愛し、彼女に悪影響を与えると引き離したグウェンの娘の友達としては賛成しかねるが、彼女のことが好きだった。
    主人公ルージュや少女たちの通う学園の校長はルージュに容疑をかけられたときに、もし自分が少女を恋人に選ぶ嗜好があるならサディーを選ぶという。
    サディーの母親が断言するように、皆が彼女を好きになるという魅力的なキャラなのだ。
    さらに、その親友グウェンも自分ならサディーを見捨てて逃げてしまうかもと自責の念に囚われたりしながら、必死で脱出方法を考えるやはり勇敢な子供なのだ。
    子供だけではない、登場人物はそれぞれ個性的だ。
    過去の被害者であるルージュは事件を追いながらも、娘を奪われた怒りですべてを破壊してしまった父の過ちを調べ、母や己の再生へ向かって歩き出す。
    他も最初はやな奴と思った人間が実はけっこうロマンティストだったり、強いと思っていた人が過去の傷に苦しめられていたりとミステリーとしてより群像劇として楽しめる。
    無実の罪を着せられ、牢獄で性的な虐待を受けた神父の人物造形もすばらしい、普通は彼の心境のうつりかわりなどスルーしてしまうだろう。
    ただ、あまりに登場人物が多すぎて混乱してしまうのも確かだ。
    犯人もだいたい途中で見当がつく。しかし、犯人の書き込みがほかの人間に比べて希薄だ。

    最後にタイトル、特に邦題はすばらしい。

  • かなりの分量で、少女疾走事件がおわるまでの一部始終を描いたミステリ。登場人物の描き方によく分量が割かれているために、多面性があって面白い。最後に、ああタイトルはそういうことだったのか、という展開へ。
    天才の集まる不思議な学園や、顔に傷がえる女性、コミュニケーションのうまくとれない少年、捕らわれの神父など様々な舞台やキャラクターが出てくる。しかし、ミステリアスな一方、だんだんそれらのミステリアスさは別にどうでもよかったようで、ただ冒頭で世界観を作っていただけ、というのが残念。ただストーリーにグイグイ引き込まれる面白いミステリだった。

  • 蔵書。何度読んでも面白い。何回か読まないと理解出来ない所もあり。

  • 長い上に、そろそろトシなのか、翻訳物は登場人物とその役割が
    なかなか頭に入らなくなってきていて、
    読みながら何度も最初のページの紹介一覧を見返しました。

    でも、今は警察官となっている双子の妹を亡くしたルージュや
    ちょこちょこと顔を出し入れする(笑)さまざまな人たちにも興味惹かれ、
    また当然ながら、誘拐された少女たちの運命がどうなるのか
    興味津々で読み進みました。

    最後、こういう終わり方をするのか?というか
    こういうエンディングはあり?というか、
    うーん、予想もしない終わり方で非常に余韻が残りました。

    ★4,7という感じで、★5にしました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「こういうエンディングはあり?」
      クリスマスの定番ですから、つまり日本人には判り難いお約束事と言えるかも。。。私は好きですけど。
      「こういうエンディングはあり?」
      クリスマスの定番ですから、つまり日本人には判り難いお約束事と言えるかも。。。私は好きですけど。
      2013/04/11
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