- Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488201180
作品紹介・あらすじ
「価値のないもの、誰も盗もうとはしないもの」だけを標的にする怪盗ニックは、引きも切らない多彩な依頼に大忙し。年齢を重ねても仕事の腕と頭脳は衰えず、予期せぬ危機にもとっさの機転で対処する。文庫版全集第5弾は、〈白の女王〉サンドラ・パリスとの共闘、ホック世界の名警官レオポルド警部やニックを名乗る偽者との対決、実在したミステリ書店が登場するクリスマス・ストーリーなどを含む全14編(うち本邦初訳9編)を収録。
感想・レビュー・書評
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一九六六年に始まった怪盗ニックシリーズだが、第五巻は一九八九〜一九九六年に書かれた作品が収められている。もう私も生きていた時代だと思うとぐっと身近に感じる。
時は確実に流れており、ニックは「初老」、グロリアは「中年」と表現されていた。「初老」の方はサンドラからのユーモア混じりの言及(「魅力的な初老」)なので、間に受けていいのかわからない。サンドラもニックから「相変わらず魅力的」と評されているが、年齢に言及するならば「中年」だろう。懐かしのチャーリー・ウェストン警部補との再会シーンでは、年をとった彼のことをニックははじめ誰だかわからない。ウェストンの方は「おれはすぐにお前に気付いたぞ」。片思い。
各話、お決まりのパターンは崩さないものの、色々工夫が凝らされていてこの巻もとても楽しかった。
・まさかのあの人やあの人やあの人が依頼人になる。
・グロリアを「この世で唯一の女性だ」とか言った舌の根も乾かぬうちにサンドラを助けにいってかなり親しげにしているし。
・グロリアが就職した。
・ニックの活躍が小説化され掲載されている《エラリー・クイーン・ミステリー・マガジン》が本屋にあるという描写があった。
・ニックのお父さんの話がちょこっと。
・解説の、第六巻への引きが強い。
次は最終巻。寂しい〜。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
89年~96年に発表された作品を収録。ここまで来るとネタも現代のモノが出揃ってきていて、なんだかとても『今』の物語になってる。凄い。
長寿シリーズゆえ、マンネリになるかと思いきや、今回収録された作品はヒネリとバリエーションが素晴らしく、どれを読んでも飽きない面白さでした! (この本に収録された、ミステリアス・ブックショップは実際NYに遊びに行ったときに伺った事を思い出しました) -
もともとホックの短編は大好きで、機会あるたびに手にとって入るのだけど、その中でも怪盗ニックのシリーズは、一番最初に好きになった作品群である。価値がないもの専門の泥棒というのはそれだけでびっくりするような発想だと思う。大金を払って価値のないものの盗みを依頼するのはなぜかという謎が当然発生するし、作品によっては殺人が起きてその犯人を捜したり、もちろんどうやって盗み出すかという興味も生むし、敵役との対決や警察との駆け引きというサスペンスもある。なんとも贅沢な楽しみかたができる短編シリーズである。
それにしても、こんな集大成の短編集が出ていたのは知らなかった。ホックがなくなってからもう10年も経つわけで、人気のあるシリーズだから出るべくして出た企画だろう。いっぱいあって嬉しいなと思いながら手に取った。
初期のものはずいぶん読んだけど、どれだけ書いても切れ味がほとんど衰えていない感じがしてすごいなと思う。ホックは謎作りについてはもう天才としか言いようがない作家だけど、その能力が遺憾無く発揮させていると思う。まあ、物語としてはちょっと大味なところがあって、良くも悪くもパズルストーリィなんだけど、それ以上のものをこの作家に求めるのは野暮というもの。手を替え品を替え繰り出してくる魅力的な設定を、ただひたすら楽しむのみである。その中でも「29分の時間を盗め」が意外性が高くて一番楽しめた。 -
怪盗ニックの第五作。
非キリスト教徒の身としては、
クリスマスにはそんなに思い入れはないが、
人を許したり、贈り物をしたりという
心温まる季節の話を読むのは好きだ。
と思ったら、サンタクロースが殺される話もあった。
ニックがマジシャンとして豪華客船の舞台をつとめる話が
面白かった。
ライバルのサンドラ・パリスも登場して、
やとわれた話や、蛇に噛まれた彼女を助けに行った話も。
ニックの偽物が現れて、長年の恋人グロリアが我慢できずに、
ニックにお金を出して偽物を盗んでと頼むのも面白かった。
あと、マット・スカダーの新作のためにローレンス・ブロックが
サイン会のために書店に現われたのも。 -
2018/04/08読了
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相変わらずの粒揃い。