リガの犬たち (創元推理文庫) (創元推理文庫 M マ 13-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488209032

感想・レビュー・書評

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  • ヴァランダーのシリーズ2作目。2作目なのにいきなりスウェーデンを飛び出し、独立後においてもロシア支配が色濃く残るラトヴィアが舞台です。事件の発端は密輸船の乗組員が漂流する救命ボートを発見し回収しようと手繰り寄せたところスーツを着た死体が2体乗っているのに気づき、沿岸まで牽引してきたこと。歯の治療痕などから死体はラトヴィアのギャングであることがわかり、かの国の警察に引継ぎをするべく一人の刑事に来てもらいます。お互いに得意でもない英語で言葉少なに会話し黙って酒を飲んだリエパ少佐とヴァランダーはお互いに尊敬の念と親近感を持ちます。ラトヴィアに引継いだのでこれで一件落着したはずが、帰国したその日にリエパ少佐の身に起きたことによりヴァランダーは全く知らない土地であるラトヴィアに呼ばれ、良く状況がわからないまま大きな渦に巻き込まれてしまいます。距離的には近いラトヴィアとスウェーデンですが政治状況も歴史も社会制度も全然違っていて、ラトヴィアでは軍の支配の名残なのか警察の階級も大佐・中佐・少佐と称されているのでした。短い親交ながら信頼に足る人物とお互いに認め合ったリエパ少佐への義理という細い糸の繋がりだけで、土地勘も無く誰が敵で誰が味方なのかもわからないなかで、ほとんど不可能なのではないかというミッションを与えられて奮闘するヴァランダーの様子は、サスペンスの要素もあり、アクションもありながら、哲学的な思索もあって、不思議な作品でした。読み始めたばかりのシリーズでこの展開で少し戸惑いましたが、面白かったです。

  •  クルト・ヴァランダーもの2作目。このシリーズ、単なるドンパチではなく明確なテーマが据えられているので社会派警察小説というカテゴリーになるのだろうけど、何といってもヴァランダーの人間としての魅力が秀逸だ。ますます色濃くあらわれる人間的な弱さにとても共感をおぼえる。2作目にしてもはや僚友リードベリが亡くなってしまい、ヴァランダーは自問自答しながら独力での捜査を強いられる。事件は救命ボートで流れ着いた身元不明の射殺死体という発端だが、前作同様表向きの事件は本題ではなく、その根底にあるより巨大な邪悪なものがテーマとなっている。舞台はラトヴィアの首都リガへ飛び、そこでのロシアとの民族問題に巻き込まれてゆく。そうなるともう一介の警察官としての捜査という範疇を超越しているので、後半はもう警察小説というよりはそこまでやるかというミレニアムばりの破天荒なハードボイルド冒険譚のようになっている。これがリスベット・サランダーならもっと安心して見ていられるのだが、クルト・ヴァランダーなので結構ハラハラさせられる。二人の高官のどちらが悪の正体か。最後の最後にそれが明らかになるシーンは非常にスリリングでうまくできている。

  • 瓦解する共産主義。バルト海東岸のラトヴィアで暗躍する冷たい権力闘争。不確実な自由のため戦い続ける市井の人々。
    海岸に流れ着いたゴムボートの中に高級なスーツを身にまとった二人の男の射殺死体。調査を担当する田舎町イースタの刑事ヴァランダーは、思いもよらない形でスウェーデンからラトヴィアへ国境を越えた事件の主役を演じることに。諦観漂う警察小説の前半から想像もできない展開が待ち受けております。抑えきれない恋心。そのギリギリの踏ん張りに魅せられました。

  • スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『リガの犬たち(原題:Hundarna i Riga)』を読みました。

    「ヘニング・マンケル」作品は、今年の3月に読んだ『北京から来た男』以来ですね… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    【CWAゴールドダガー受賞シリーズ】
    スウェーデン南部の海岸に、一艘のゴムボートが流れ着いた。
    その中には、高級なスーツを身につけた二人の男の射殺死体が抱き合うように横たわっていた。
    彼らはいったい何者なのか?どうやら海の向こう、ソ連か東欧の人間らしいのだが…。
    小さな田舎町の刑事「ヴァランダー」は、この国境を超えた事件に思いもよらぬ形で深入りすることになるのだった!
    注目のシリーズ第二弾。
    -----------------------

    警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズの第2作… 第1作の『殺人者の顔』、第4作の『笑う男』、第5作の『目くらましの道』、第7作の『背後の足音』に続き、本シリーズを読むのは6作目です、、、

    刊行順に読めてませんが… 古書店で探しながら読んでいるので仕方ないですね。


    1991年(平成3年)2月12日、イースタ警察署に「間もなく2人の死体を乗せた救命ボートが漂着する。」という匿名の電話が掛かってきた… 翌日、電話の通りに救命ボートがモスビー・ストランドで発見された、、、

    乗っていた死体を検分すると靴もネクタイもスーツは高価な物ばかりで、身体には銃創と拷問された痕跡があり、胸を銃で撃ち抜かれていた… 歯科治療の痕から東欧出身者だと推定され、救命ボートの特徴からもそれが東欧製であることが判明した。

    外務省(Utrikesdepartementet)を通じ各国に問い合わせるとラトビアから死体の身元に関する情報が送られて来るとともに現地から捜査官が派遣されて来ることとなった… ラトビアからやって来た「カリウス・リエパ中佐」によると殺された2人はマフィアの仲間でラトビアでの逮捕歴があるということであった、、、

    ヘヴィースモーカーの「リエパ中佐」に辟易しながらも、「クルト・ヴァランダー」は小柄でひどい近眼の「リエパ中佐」の熱心な働きぶりと鋭い洞察力に敬服する… イースタ警察署に保管してあった証拠物件の救命ボートが盗まれるという事件も発生したが、1週間の滞在後「リエパ中佐」が遺体を引き取って帰国すると共に捜査は全てラトビア側に引き継がれ、スウェーデン側にとっては一件落着に思われたのだが、実はこれは氷山の一角に過ぎなかった。

    「リエパ中佐」が帰国した翌日、イースタ警察署に「リエパ中佐」が何者かに殺害された旨を報じるテレックスが送られてきた… ラトビア警察からの捜査協力要請を受けて「ヴァランダー」は初めてバルト海をわたりラトビアの首都リガに飛ぶ、、、

    そこで「ヴァランダー」が垣間見たのはかつての社会主義大国ソヴィエト連邦が崩壊する瀬戸際で起きた、ソ連支配下の国における独立運動とそれを阻もうとする勢力との壮絶な闘いだった… 全てが軍によって、あるいはソ連に通じる人脈によって掌握されている社会で、自由を求める代償は、生命の危機である。

    地下で果敢に闘う人々、その動きを抑え込もうとする勢力、その中で裏切りや密告を警戒し、疑心暗鬼になって暮らす人々の姿が見える… また同じ人々が命懸けの信頼、同士愛、愛国心をもって独立運動を進める姿も見える、、、

    そのような人々の極限の姿が、それまで国家や政治にはあまり関心がなかった「ヴァランダー」の心を揺さぶる… 理想に燃え自由を求めて一介の田舎警察官にすぎない自分を信頼して、助けを求めるラトビアの人々をシニカルに見つめ、巻き込まれないとする「ヴァランダー」だが、しだいに自由と独立という大義のために闘う人々を信じるようになる。

    連絡係の女「イナセ」が襲撃で殺されたり、「リエパ中佐」の同士で「ヴァランダー」にこの国の事情を話してくれた「ウピティス」が逮捕されたり、ホテルの売店で働く女「ヴィラ」が危険を冒して自宅にかくまってくれたり、「リエパ中佐」の妻「バイバ・リエパ」と交流したり、という個人的体験をすることで、「ヴァランダー」はこの国の人々の置かれた状況を理解し、非合法なカタチで真相究明に協力することに… 「リエパ中佐」の上司である「ヤゼプス・プトニス大佐」や「ユリス・ムルニエース大佐」、その部下「スィズ軍曹」等のうちの誰かが黒幕と睨んだ「ヴァランダー」は、「リエパ中佐」が遺した証拠を入手するためにラトビア警察に侵入し、事件の真相に迫る。、、、

    終盤は、緊張感の続く、スパイ映画さながらのサスペンスフルな冒険活劇となっていて愉しめましたね… 旧社会主義国家であるバルト諸国の闇を見事に描いた快作でした。

    やっと、「ヴァランダー」と「バイバ・リエパ」の出会いを知ることができました… やっぱ、できれば順番に読みたいですね。



    以下、主な登場人物です。

    「クルト・ヴァランダー」
     イースタ警察署の刑事

    「リードベリ」
     故人。クルトの元同僚

    「マーティンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「カール・エヴァート・スヴェードベリ」
     イースタ警察署の刑事

    「ハンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「ビュルク」
     イースタ警察署の警察署長

    「ムルト」
     検死医

    「エッバ」
     イースタ警察署の交換手

    「アネッテ・ブロリン」
     イースタ警察署鑑識課の刑事

    「クルト・ヴァランダーの父」
     画家

    「ビルギッタ・ツーン」
     外務省の役人

    「スツーレ・ルンルンド」
     本部から来た刑事

    「バッティル・ロヴェーン」
     本部から来た刑事

    「カルリス・リエバ中佐」
     ラトビア警察の中佐(リガの犯罪捜査官)

    「ヤゼプス・プトニス大佐」
     ラトビア警察の大佐でリエパ中佐の上司

    「ユリス・ムルニエース大佐」
     ラトビア警察の大佐でリエパ中佐の上司

    「スィズ軍曹」
     大佐たちの部下

    「バイバ・リエパ」
     カルリスの妻

    「イネセ」
     バイバの仲間

    「ウピティス」
     バイバの仲間

    「スツーレ」
     クルトの別れた妻

    「リンダ・ヴァランダー」
     クルトの娘

  • シリーズ2作め、ラトヴィア国なんて、本当に良く知らないから、世界地図見ながら、成る程ねぇ、こーゆー地理関係なのか!なんて感じ入りながら、読了!
    ラトヴィアで、事件解決なんて、ヴァランダー刑事さすがです!

  • 刑事ヴァランダーシリーズ第2作。

    ある冬の早朝、スウェーデンの海岸に救命ボートに乗った二つの死体が漂着する。
    彼らは誰で、一体どこから流れ着いたのか。

    捜査協力のためバルト三国はラトヴィアの都市リガから、スウェーデンのイースタに派遣された警察官、リエパ中佐。
    その彼が帰国当日に殺害され、今度はヴァランダーがリガへ向かい・・・

    1990年代、ペレストロイカの煽りで揺れ動くラトヴィア国家。
    その病巣を暴くべく革命を企てる活動家たちと協力しながら、事件解明へ動くヴァランダー。

    活動家たちとヴァランダーの接触は絶対に知られてはならない。そのために、現実とは思えない(いや小説なんだけども)危険を冒しながら体当たりの捜査を進めるヴァランダーの活躍と、ド派手なアクションシーンに今作もアドレナリン全開!

    行ったこともないのに、想像の中でのラトヴィアの暗く寂しい風景が頭を離れない。
    はぁー、面白かった・・・。

  • ヴァランダーのシリーズ第2弾

  • 面白い。題材に驚かされる

  • 途中から、急転回のスパイ小説。何度か、眠気に襲われながらも、結末が知りたくて、読了した。

  • 警察小生のシリーズの中では、少し異色のもの。殺人事件があり、死体もあるのだが、物語はその謎解きというよりも、それを捜査する人たちの国を超えたドラマになっていく。ベルリンの壁の崩壊前夜の物語。既にソ連ではベレストロイカが始まるあたりのことで、その時代背景も少し織り込まれている。

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