夜愁 下 (創元推理文庫 M ウ 14-5)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488254063

作品紹介・あらすじ

1944年、ロンドン。夜ごと空襲の恐怖にさらされながら、日々の暮らしに必死でしがみつく女たちと男たち。都会の廃墟で、深夜の路上で、そして刑務所の中で、彼らの運命はすれ違い、交錯する。第二次世界大戦を背景に、赤裸々に活写されるのは人間の生と業、そして時間の流れと過ぎゆく夜。大胆な手法を駆使して、人間という存在の謎に迫る、ウォーターズ渾身の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦後の英国で生きる人々の人間関係の変遷を、1947年に始まり、1944年、1941年と、時間を遡るかたちで描いていく。この6年間位のあいだに小さな人間関係サークルの中が激動する。読み終わった時に、この形式で書かれたことにそんなに重要な意味というか意義があるのだろうかちょっと考えてしまった。美しい希望を持って始まったある出来事が短い時間であっという間に無意味な物にかわってしまう虚しさだろうか。

  • 現在の閉塞的な状況から過去へ、さらにその過去へと話は遡る。

    どうしようもなく行き詰った現在、主な登場人物それぞれに大事件が起きた過去、出会いを書いたさらに過去。

    段々と現在の登場人物に息吹が吹き込まれていく書き方で読み進むほどに過去へ戻り、現在の人間関係がくっきりと浮き彫りにされて行く手法は流石サラ・ウォーターズ!と思った。

    ケイの相手を追い詰めるほどの不器用な愛し方が読んでいて切なかった。で、レジーの無責任っぷりにかなりむかついた。どうしてヴィヴはあんなどうしようもない男とずるずると付き合っていたのだろう。
    同性愛者同士の切ないきりきりとする恋愛関係と男女間の腹立たしい恋愛関係がとても対照的だった。

  • 1944年。ヘレンは福祉援助局で働いている。爆撃で家を破壊された人々が再建にあたって政府から補助をもらえるように申請する窓口で。ヴィヴィアンは食糧庁でタイピストとして働いている。ケイは救急隊で救急車を運転して、爆撃で怪我をしたした人や遺体を運んでいる。現在から遡るように人の過去を描く。それは戦火の日々の生活を思い起こすことだ。

  • 上巻に同じ。

  • 上巻だけ一度読んだことがあるが、冗長すぎて挫折してしまった。今回数年ぶりにリトライ。

    戦後の1947年、戦時中の1944年、さらに1941年と時が遡っていく構成。ミステリーと言われているが、特に謎めいた事件が起きるわけではない。

    戦時下という状況がなくとも成り立つような話かもしれないが、戦火かまびすしい極限状態だからこその盛り上がりなのかもしれない。

    本の紹介文から各種のレヴューまであいまいに濁しているものが多いが、そう書かざるを得ないような感慨がある。
    最後のラストシーンが美しいがその余韻を読者に残す為にあえて、この構成にしたのだろう。一巡して最初の章に戻ったときに、とある人物の視点から読みなおすと実に切なくなる。

  • 読み終えて、「えっ!これで終わり?」というのが正直な感想でした。
    これでこの話はおしまいだけど、さあ、この話をどう受け取るの?と作者に問題を突きつけられたような気分。
    読み終えたらすぐに続けて「あとがき」を読む人が多いんじゃないかな・・・と思います。

    下巻では上巻と同じように、二つの章に分かれていて、最初が1944年、その次が1941年。
    過去に遡っていく話なので、登場人物たちがどうやって出会ったのか、物事の原因がどこにあったのか、それが全て過去の出来事から明らかになっていきます。
    それらに驚いたような出来事はありませんでした。
    ほぼ想像通りと言っていい内容。
    それがこれまでのこの人の作品とは違うものとなっています。
    今まで読んだもの、映画で見た作品は緻密に上巻で伏線を張りめぐらし、それを見事に下巻で覆す、または別の見方ができるという手法だったけど、この作品ではそんな驚きはありません。
    作品全体もそうだし、読み終えての感想も静かで淡々としたものでした。

    このお話は最初、登場人物が暗闇にいるような、疲弊した状態から始まり、輝かしく希望を感じる状態となります。
    つまり、過去へ話がいっているという事は、実際はその逆な訳で、その登場人物の未来を知っているがために、ラストの輝かしさが虚しく感じられてしまう。
    そして、この小説ではレズビアン、ホモ、男女の恋愛の関係が描かれていますが、女性を描いた部分は繊細で美しいのに対し、男性を描いている部分は低俗で汚らしくおバカに描いていると感じました。

    読んでいて楽しい気分になる本ではないし、面白い!と言い切れる本でもない。
    だけど、何故か心にしみじみとくる、印象深い一冊となりました。

  •  普通の小説では、禁じ手とされる手法を用いていると思う。
     いや、禁じ手ではないんだけど、小説を読みなれた人ならば「ああ」と言いたくなる類の手法。
     けれども、登場人物が魅力的だからか、あるいは、作者が物語を愛し、それを描写し続けるからか、最後まで惹きつけられながら読んだ。ラストの1行にときめく。くそう。やられた。

  • レビューを書いていて、改めて感じる。
    何と読み終わるまでに3週間を要している。

    久し振りに難解な小説を読み終えた気分。

    戦争に翻弄される女性を中心に書かれているのだけど、
    主人公はケイなのか、ヴィヴなのか、それともダンカン?

    「何か面白くないよな」と思いつつ読み終えたのだが、
    読み終えた瞬間、もう一度最初から読み始めたくなる。

  • 結末(と言っても、年をさかのぼって書かれているため、時間的には始まり)が一番キラキラと光っていました。出会った二人の行く末をわかっていても、なぜか幸せな気持ちになりました。全編をとおして薄暗く重苦しい空気がたちこめているのですが、読後感は澄んだ気持ちになれます。特殊な事情を抱えた人物ばかりで共感を得られるような人はいないのですが、一番好きなのはケイです。揺るぎない信念を持っていて、それを曲げられないがために自分を苦しめているように見受けられますが、最近の草食男子よりもずっと男らしいです。描写があまりにも生々しくリアルな部分があるので、読み飛ばした箇所もありましたが、読む価値のある作品だとは思いました。

  • 感想は上巻に記載してます。

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