- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488451097
作品紹介・あらすじ
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。
感想・レビュー・書評
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「さよなら妖精」の太刀洗万智が社会人になって事件を取材するミステリー。ミステリーと通りいっぺんのカテゴリーで括ったが、登場人物が謎解きのためのピースとして扱われる多くのパッとしない作品とは違い、悩み苦しむ生きている人間たちが登場する。その取材対象を万智がどう向かい合っていくのかがこの本の本質と感じた。
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女性ジャーナリストが自らの正義を貫く姿が目に焼き付く名作、太刀洗万智シリーズの短編集。
主人公であるジャーナリストが様々な事件事故の取材の中、独自の直観力と推理力で真相を見抜いていく。報道の意義や効果が何たるかを考えさせる傑作です。
全6編からなる短編集ですが、どれも読みごたえのある秀作。自分はタイトル名と同じく真実の10メートル手前が一番好きでした。少しずつ事実が垣間見えてくるとともに、ラスト10メートルの恐怖がリアルに伝わってきます。
ただ「王とサーカス」と比較してしまうと、テーマの1つであるジャーナリズムに対する主張というかイズム的なものがどうしても軽く感じられてしまいました。
また主人公のキャラクターは強烈ですが、他のキャラクターが今一つ生きていません。思想や経験に対するぶつかり合いなどをいれると、もっと血の通った深みのある物語になるかと思いました。
それでもいつもの米澤穂信作品のとおり、ミステリーとしては安心して読められる傑作でした!本シリーズの長編を期待します。 -
「真実の10メートル手前」☆☆☆☆
情報を人に伝えるとき、スクープと分かった時点で世に出すべきなのか、精査するべきなのか。
立ち止まることのできる能力を持たなければならないが、立ち止まることが正解とも限らない。
ジャーナリストに限らず、何かを人に伝えることがあるすべての人は自分に問い続けなければならない。
「正義漢」☆☆
「恋累心中」☆☆☆
「名を刻む死」☆☆
やっぱり人が死ぬだけの読み味が悪いだけの作品は好きじゃないなあ。
「ナイフを失われた思い出の中に」☆☆☆
『さよなら妖精』に登場したマーヤの姉がジャーナリストとなった大刀洗万智を訪問し、「あなたはどのようにして、ご自分の仕事を正当とされるのですか?」と尋ねる。
『さよなら妖精』と関連性が強い作品だし、評判も悪くないので期待していたのだが、著者が他の作品でもたまに見せる回りくどさが強く出ていて好きになれなかった。
たとえ恥ずかしさみたいなものがあっても、大切な友人の姉にくらい真摯に向き合ってはっきりと自分の考えを伝えた方がいいのではないか。
あと、被害者が死の間際に複雑なダイイングメッセージを残すとか、犯人がわざわざ自分に不利なヒントを残すとか、逃亡しながらクイズを作るとか、そういうのが嫌い。
「綱渡りの成功例」☆☆
仕方なかった、で済むと思うけどな。緊急避難もあるし。
あと私は牛乳アレルギーなのでコーンフレークには何もかけずに食べます。 -
太刀洗万智の性格、生き様が短編集の中から滲み出てくる1作。
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さよなら妖精で太刀洗真知の高校生の頃を知っているからこそ、また太刀洗さんの人となりがわかり読み応えがある。責任を背負いながら真相を追究していく太刀洗さんと、なんともやり切れない事件ばかり。
さよなら妖精の最後では、守屋と縁が切れていてもおかしくないと思っていたけど思わぬ登場はやはり嬉しいもの。 -
'21年4月28日、読了。
見事な短編集、でした。記者、大刀洗の、記者としての矜持、覚悟、優しさ等…読んでいて苦しいほど、でした。
以下、ちょいネタバレかも…未読の方、ご注意ください。
みな良かったけど…最後に収録の「綱渡りの成功例」が、一番好きです。災害にあった老夫婦の、重たい「憑物」を、たった一つの問で剥がしてみせる大刀洗さん、そしてその後の判断の、なんという優しさ…。自らは針の筵に座り、血を流しながらも、重たい何かを背負っていく、その覚悟。感動しました!
この作家さんの小説は、ハズレが無い。特にこの「大刀洗シリーズ」は、3冊みな素晴らしかったです。もっと、読みたいな、と思いました。 -
さよなら妖精と王とサーカスを読んでたのに、タイミング合わず随分遅れての読了。
全二作と違って短編なので割とサクッとした印象。
作者が太刀洗の事を気に入ってるんだなぁと強く感じる作品でもあり、それもあり彼女の色々な側面が垣間見れた。
王とサーカスの前に読めばよかったな。
ファンからすると守屋の再登場が嬉しかったけど、もう少し絡んでもよかったのにとも思ったな。
続編に期待したい。