- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488457013
作品紹介・あらすじ
外資系の保険会社に勤める僕・坂木司には、一風変わった親友がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちの鳥井は外部との接触を極力避け、僕を通じて世界を見ている。そんな鳥井の関心を外の世界に向けるため、彼との食卓に僕が出会った身近な謎を披露していく。大人の視点で推理し、子供の純粋さで真実を語る鳥井は、果たして外の世界へとはばたくことができるのか。著者デビュー作にして人気の〈ひきこもり探偵〉シリーズ、待望の文庫化。文庫版著者あとがき=坂木司/解説=北上次郎
■目次
「夏の終わりの三重奏」
「秋の足音」
「冬の贈りもの」
「春の子供」
「初夏のひよこ」
感想・レビュー・書評
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坂木司さんのデビュー作。
日常に潜むミステリーを解き明かしていくのは自称ひきこもりの鳥井真一。彼を支え、同時に支えてもらっているのが純な男、坂木司。
不器用な二人の生き方と友情に惹かれる。
今回は、男を襲う通り魔の謎、視覚障害者を尾行する人の謎、若手歌舞伎役者に届けられるプレゼントの謎、迷子の少年の秘密などを鳥井達が解き明かす。理知的でぶっきらぼうな鳥井は魅力的だ。いつも本質をずばり突いている。でも、涙もろく善意の塊のような坂木がいるから、鳥井は鳥井らしくいられるのだ。
読んだ後があったかい。
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再読シリーズその4。
ひきこもり探偵シリーズ第一作にしてデビュー作。
ご存じない方のためにまたまた少しだけ説明させていただくと、ひきこもり探偵・鳥井真一は家から一歩も出ないタイプのひきこもりではなく、友人でワトソン役の坂木司の言葉を借りれば『ひきこもり気味の人間嫌い』であり近所に買い物するくらいは一人でできるし坂木が付いていれば電車にも乗れる。
ミステリーとしてはいわゆる日常の謎を解き明かすタイプでインディゴシリーズのように人が殺されるようなことはない。だがだからと言って軽いテーマばかりとも言えないのが特色だろうか。
初読(2009年)の時はそれほど感じなかったのだが、十年以上の時を経て改めて読み返すと、どうも鳥井の乱暴で攻撃的な態度が鼻に付く。一方で坂木が少しでも悲しんだり困ったりするとたちまちパニックに陥る。
野性的と言うか、まるで卵からかえったヒヨコが坂木という親を見て彼にべったりするような、そんな印象を受けた。
だがそれも仕方のないことかも知れない。
母親は彼を生んですぐに出ていき(そもそも子供は嫌いだったようだ)、父親は海外での仕事が多いことにかこつけてほとんど彼を顧みない(だが優しくはあるようだ)、彼を幼いころ育てた祖母は嫁(坂木の母)を罵り続け…と、とても家庭的とは言い難い状況で育ってきたのだから。
一方の坂木もまた単なる良い人ではない。中学時代にいじめられ追いつめられていた鳥井に声をかけ、以来友人になるのだがそれは『卑怯なタイミング』だったと自身で邂逅している。
その分鳥井がパニックに陥ることがあれば激しく取り乱すほどに動揺し仕事も放りだして駆けつけ、『僕は裏切らない』と『ありったけの声で叫ぶ』。
乱暴な表面も裏を返せば正直さゆえという彼の魅力をすべてを知っている坂木は、なぞ解きの度に彼の世界が広がっていくことを嬉しく思う一方で、いつか自分から離れていくのではと恐れてもいる。
二人の相互依存の関係が強すぎて、間に割って入れないほど濃厚過ぎて、時に痛々しいものを感じてしまう。
坂木は自身のことを『あまりに凡庸な家庭で育った型通りの人間』と評しているが、語られない部分で坂木自身にも何らかの傷を抱えているのかも知れない、などと勘ぐってしまった。
過去の自身のレビューを振り返ってもそのようなことは書いてないのでどうだったかは忘れてしまったが。
この二人だけで物語が延々進むのなら途中で挫折してしまうところだったかも知れない。
が、良い緩衝材となってくれる二人のおかげで少し楽になれる。
一人は高校時代の同級生で現在警察官の滝本。『誰にでも調子がいい』フレンドリーさはあるが、警察官だけに視点のするどさもある。
そしてもう一人は職人の木村栄三郎おじいちゃん。江戸っ子口調で気持ちが良いし、鳥井の態度も受け入れつつ言うべきところは言う格好良さもある。
他の方々のレビューにもあるように、ミステリーと言うよりは様々な人間模様、人生ドラマという要素が強い作品だった。
謎解き中にも鳥井の説教が始まったりするので、それが苦手な人もいるかも知れない。
鳥井・坂木コンビと同世代だったり若い人なら楽しく読めるだろうか。
三部作なので続編はあと二作あるが、再読はしなくて良いかなと思ってしまった。
坂木さん、ごめんなさい。
興味のある方のためにシリーズ作品一覧を挙げておきます。
①「青空の卵」本作
②「仔羊の巣」
③「動物園の鳥」 -
大好きな坂木さんのデビュー作♬
ひきこもり探偵シリーズ第1弾!
自称ひきこもりの鳥井真一と、その友人、坂木司の2人が日常の謎に臨むストーリー♪
おぉ〜主人公の1人が坂木司さん!
時々作家さんと同名の主人公出てくる作品あるけど(道尾さんの背の眼とか)こういうのテンション上がるタイプです笑⤴︎
ちょっとした日常ミステリーって、読み応えある〜とかめっちゃ面白かった〜とまではいかないけど、ゆるっと楽しめてなんかとても良き♡
☆3だけど、好きでした\♡︎/
ゆるっと読めて、じんわり心あたたまるストーリー♪
続編も読みたい♡-
2023/06/14
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日常ミステリー系。
引きこもり探偵の鳥井が個性的なキャラクターで引き付けられるが、それ以上に鳥井とその友人の坂木の関係性が気になって仕方がなかった。
結局のところ、坂木は、鳥井に引きこもっていて欲しいのか、それとも外出してほしいのかこういう関係をずっと続けて欲しいのかよくわからない。
共依存なのかな?
後書きを読んでも、著者の2人の関係性についての意図はよくわからなかった。
生きていく上での幸福は、誰かと分かち合う記憶の豊かさにあると僕は思う。
という坂木の言葉が深くて、私の心に刺さった。
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ひきこもり探偵という響きが魅力的で、しかもシリーズとくると、私には読みたい作品である。題名からは・・・。
プログラマーでひきこもりの鳥井真一と保険会社に勤める坂木司は高校時代からの友人だ。
この2人が日常の謎を解いていく。
5つの物語があるが、いずれも中途半端な感じを受けた。人の心の中を洞察力の高い鳥井が紐解いていく。ミステリーとしては後出しジャンケンのようで、意外性も高くない。坂木は純粋でお人好しなタイプだ。決してワトソンタイプではない。日常の中で心の奥底で展開されるだろう物語が顕在化しているのも現実的でないと感じる。そうかといってエキセントリックでないところが、中途半端な感じにさせられる理由かもしれない。
坂木司は作者の名前でもあり、その辺りも描写にやや空虚な感じを与えられた。
巣田香織の異常な行動、塚田基と安藤の事故後の関係、歌舞伎役者になった安藤に届いた不審物、佐藤と息子のまりおの関係、最後は事件ではなく少しほっこりする。
夏の終わりから始まり、初夏で終わる5つの物語、多少の季節感はあるが短い中で表現するのは難しかったのだろう。タイトルは作品の一部だと思うのである。私が読むタイミグがこの作品の描写とマッチしなかったのも残念な印象となったと思う。 -
読了。
やはり坂木さんの世界観はいい。
ミステリーだけれどなんだか読み終えた後はすごく幸せな気持ちになれた一冊でした。
子供の心をもち大人の推理力をもつ、鳥井真一。
誰よりも素直で真面目でお人好しな、坂木司。
このコンビの会話や生活の流れが常に微笑ましくて、一緒になって悲しくなったり嬉しくなったりしながら読んでいました。
鳥井に、自分の心の奥底を見抜かれて、突かれて、そして思いきり本心を声に出したくなるような気持ちになりました。
鳥井と坂木はいろんな変わった人達に出会い、囲まれて、そしてなんだかとても楽しそうで。
私もこんな2人と出会ってみたい。
不器用だけど、ちゃんと言葉にしないと伝わらない。人から裏切られるのは辛いし悲しいけれど、辛くても自分から一歩踏み出さないと変われない。
色々と共感できる部分も多く考えさせられた、そんな作品でした。 -
「和菓子のアン」の坂木さんのデビュー作が、探偵シリーズ...?ああ、たしかにミステリー作家カテゴリーでしたよね...という気持ちで図書館から借りてきました。
殺人..?(苦手)とか死体...?(苦手)とか勝手に想像して中々読み始められなかったのですが、思ったよりは平和なミステリーでした。謎解き的な感じかな。
ミステリー視点もきちんとあったけど、それより「人としての」観点から色々気づかせていただくことが多かったです。そうそう!と読みながらピンクの付箋つけてたら、本上部が真っピンクにー。
三部作らしいので、次も借りてこよう〜。 -
最初、
(う、私には合わないかも…。)
と、思ったのは、
主人公の名前を見たときだ。
『坂木 司』
あ、著者ですね。
と、いう事は、
どこまでもナルシスティックな物語の始まりか?
同名の主人公はきっとものすごくイイ人で…
と、思っていたら、案の定。
坂木は果てしなくイイ奴で、
彼の周りには、いつの間にか人が集まってくると言う、
魅力的なキャラであった。
そして読後、
その取り巻きのなかに私もはいっていた。(^^;
結局、そうなってしまったのは、
泣きのツボ、が彼と一緒だった所。
私より先に坂木が、
坂木より先に私が。
とにかくどちらかが泣くと、どちらかが泣いている。
なんか、泣き虫。
すぐ感極まっちゃってさ…。
相棒の引きこもり探偵(?)の鳥井(←彼も魅力的なキャラである。)
と共に、日常のちょっとした謎を解いてくほのぼのミステリー。
殻を破らねば目にする事もない、青空の果てしなさがとても眩しかった。 -
もう返す言葉もありません。
ぐうの音も出ません。
自分がどれほど臆病だったか思い知らされてしまいました。
真っ直ぐな坂木さんと無愛想だけど相手を無視しない鳥井さん、そんな2人が他人に言えない悩みを抱えた人の秘密を暴き、1人じゃ解決出来なかった問題を一緒に考えてくれる。
坂木さんは優しく微笑み、時に涙ぐみながら。鳥井さんは迷惑そうだけど、実は誰より相手の気持ちに寄り添っている。
そして相手の抱える問題が明らかになるにつれて、その問題を薄々知っていて見てみぬふりをしていた自分の姿を突きつけられる。
1人で解決出来る問題なんて本当は存在しない。
なのに他人の悩みや問題に手を出すことに脅えているんだ。
誰かの内に踏み込むことをおそれているんだ。
拒絶されることだったり、飲み込まれることだったり‥いろんなことを怖がっている。
相手を受け入れることも、相手に自分を受け入れてもらおうとすることも、どっちもすごく勇気のいることだって知っていた。
でも知らないふりをしていたし、そんな相手がいないって目をそらしていたと思う。
「僕は裏切らない!」
坂木さんのように確信を持って叫べたら、
「もう、真一が幸せでない限り、私は幸せにはなれないんだよ」
こんな言葉を心から言えたら、その1点においては自分を信じることが出来るのに。
私も絶対揺らがない何かが欲しい。
そして坂木さんと鳥井さんの関係が何があっても揺らがない安定したものになりますようにと願ってしまう。
続きが読みたいけど、ちょっと読むのが怖い気持ちもあり…。-
takanatsuさん、あけましておめでとうございます。
新年早々、私の大好きなこのシリーズをtakanatsuさんが読み始めてくださって...takanatsuさん、あけましておめでとうございます。
新年早々、私の大好きなこのシリーズをtakanatsuさんが読み始めてくださって
この歳にしてお年玉をもらえたかのように、うれしいです♪
包み込み、慈しむ坂木、殻に閉じこもっているようで必死に手を差し伸べ続ける鳥井、
鳥井に見抜かれ、坂木に救われて、ふたりに温かく関わり始める人々。
ひととひととの繋がりが胸に沁みる作品ですよね。
卵→巣→動物園と、タイトル通り、鳥井の行動範囲も広がって
ふたりの関係も少しずつ変化してはいきますが
takanatsuさんが読んで後悔するようなことはけっしてないと思うので
ぜひあとの2冊も読んで、素敵なレビューを綴っていただきたいです(*'-')フフ♪2013/01/04 -
まろんさん、あけましておめでとうございます。
コメントありがとうございます。
坂木さんと鳥居さんの関係がとても魅力的な作品ですね!
た...まろんさん、あけましておめでとうございます。
コメントありがとうございます。
坂木さんと鳥居さんの関係がとても魅力的な作品ですね!
ただちょっと心配になってしまいました。影響受け過ぎなのかもしれません…。
「読んで後悔するようなことはけっしてないと思うので」
まろんさんがそう言ってくださるなら安心です。
続きも楽しみです♪2013/01/04
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ずっと本棚にあって、ようやく読めた。一日の最後に一編ずつ読んだ。日中に、『今日はどんな話だろう』と考えるくらいに、ひきこもり探偵シリーズの虜になった。
著者プロフィール
坂木司の作品





