青空の卵 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488457013

感想・レビュー・書評

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  • 再読シリーズその4。
    ひきこもり探偵シリーズ第一作にしてデビュー作。

    ご存じない方のためにまたまた少しだけ説明させていただくと、ひきこもり探偵・鳥井真一は家から一歩も出ないタイプのひきこもりではなく、友人でワトソン役の坂木司の言葉を借りれば『ひきこもり気味の人間嫌い』であり近所に買い物するくらいは一人でできるし坂木が付いていれば電車にも乗れる。

    ミステリーとしてはいわゆる日常の謎を解き明かすタイプでインディゴシリーズのように人が殺されるようなことはない。だがだからと言って軽いテーマばかりとも言えないのが特色だろうか。

    初読(2009年)の時はそれほど感じなかったのだが、十年以上の時を経て改めて読み返すと、どうも鳥井の乱暴で攻撃的な態度が鼻に付く。一方で坂木が少しでも悲しんだり困ったりするとたちまちパニックに陥る。
    野性的と言うか、まるで卵からかえったヒヨコが坂木という親を見て彼にべったりするような、そんな印象を受けた。

    だがそれも仕方のないことかも知れない。
    母親は彼を生んですぐに出ていき(そもそも子供は嫌いだったようだ)、父親は海外での仕事が多いことにかこつけてほとんど彼を顧みない(だが優しくはあるようだ)、彼を幼いころ育てた祖母は嫁(坂木の母)を罵り続け…と、とても家庭的とは言い難い状況で育ってきたのだから。

    一方の坂木もまた単なる良い人ではない。中学時代にいじめられ追いつめられていた鳥井に声をかけ、以来友人になるのだがそれは『卑怯なタイミング』だったと自身で邂逅している。
    その分鳥井がパニックに陥ることがあれば激しく取り乱すほどに動揺し仕事も放りだして駆けつけ、『僕は裏切らない』と『ありったけの声で叫ぶ』。
    乱暴な表面も裏を返せば正直さゆえという彼の魅力をすべてを知っている坂木は、なぞ解きの度に彼の世界が広がっていくことを嬉しく思う一方で、いつか自分から離れていくのではと恐れてもいる。

    二人の相互依存の関係が強すぎて、間に割って入れないほど濃厚過ぎて、時に痛々しいものを感じてしまう。
    坂木は自身のことを『あまりに凡庸な家庭で育った型通りの人間』と評しているが、語られない部分で坂木自身にも何らかの傷を抱えているのかも知れない、などと勘ぐってしまった。
    過去の自身のレビューを振り返ってもそのようなことは書いてないのでどうだったかは忘れてしまったが。

    この二人だけで物語が延々進むのなら途中で挫折してしまうところだったかも知れない。
    が、良い緩衝材となってくれる二人のおかげで少し楽になれる。
    一人は高校時代の同級生で現在警察官の滝本。『誰にでも調子がいい』フレンドリーさはあるが、警察官だけに視点のするどさもある。
    そしてもう一人は職人の木村栄三郎おじいちゃん。江戸っ子口調で気持ちが良いし、鳥井の態度も受け入れつつ言うべきところは言う格好良さもある。

    他の方々のレビューにもあるように、ミステリーと言うよりは様々な人間模様、人生ドラマという要素が強い作品だった。
    謎解き中にも鳥井の説教が始まったりするので、それが苦手な人もいるかも知れない。
    鳥井・坂木コンビと同世代だったり若い人なら楽しく読めるだろうか。
    三部作なので続編はあと二作あるが、再読はしなくて良いかなと思ってしまった。
    坂木さん、ごめんなさい。

    興味のある方のためにシリーズ作品一覧を挙げておきます。
    ①「青空の卵」本作
    ②「仔羊の巣」
    ③「動物園の鳥」

  • 全体としては☆二つなのだけど、心惹かれるところもある。
    取りあげられているテーマは、普段は意識しなくとも私たちの身近に潜んでいる問題が多くて、「ああ、考えないといけないことなのに、今までちゃんと考えてこなかったな」と反省。とくに、主人公・坂木の他人へのお節介なくらいの親切さは、自分の無関心さと正反対なものだったから、けっこう真剣に反省してしまった。

    けれど、ミステリとして、というか物語としてのおもしろさは、残念だけどいまひとつ。作者の言いたいことがあまりにも前面に出てしまってるな、と感じる部分が多くて、物語や登場人物に入り込めなかった。
    つまらないと切り捨ててしまうほどでもないけれど、シリーズの続編は読まないだろうなあ。作者が取り上げるテーマとか、主人公二人の関係の行く末が少し気になるけれど。

  • テンポがよろしくない。
    その上、内容、主人公がアレだと読む側の体力が保たない。

  • ちょっと気持ち悪い。

  • 微妙。
    主人公の坂木司が正直ウザかったです。
    鳥井真一さんと父親の誠一さんの関係が救われた感じです(*´-`)

  • 好みに合わず。

  • 引きこもりの友人がからまった人間関係の糸を
    解いていく…という、ちょっとしたミステリ仕立ての
    ドラマ小説。
    登場人物はみんな優しいです。
    悪意満々で人を傷つけようとしている人は皆無。
    そこがなんだか納得いかないというか…
    こんなお綺麗な世界の話には共感できないなーと
    感じました。
    感動調のつくりなので、楽しめますけどね。

  • うーん。(*_*)。
    主人公坂木とひきこもり鳥井の距離がよくわからない。

    何気ない日常の謎を解決していくのは、今までの作風と一緒ですな。鳥井の頭脳キレキレっプリも。ただ、坂木が邪魔すぎて、先に進まない。

  • 日常の謎系ミステリとしてチョイスしました。
    正直、自分には合わない作品だなと感じました。いまいち登場人物の絡みが馴染めなかったり、心理描写が過剰に感じたり。推理もちょっと回りくどいように思いました。
    読みやすい文体なのでさくさく読めましたが、次巻を読むかどうかは考え中

著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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