温かな手 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M い 6-2)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488493028

感想・レビュー・書評

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  • ほのぼのとした謎解き。

  • 人の綺麗な生命エネルギーを吸って生きているという不思議な地球外生物が、人類の殺人事件を解き明かすという異色ミステリー。

    石持さんの『君が望む死に方』が好きだったので、読んでみた。
    短編集でさくさくと進める。
    短編ゆえに深さはないけれど、気軽に推理を楽しみたい人にはいいかもしれない。(一応、自分でも推理できるように書かれているとは思う)

    ただし、見目麗しい宇宙人の兄弟が謎を解き明かしてはくれるが、これが本当のことかはわからないというのがオチにつく。
    彼らには人同士の殺し合いなど微塵も興味がないが、その場に居合わせる自分達のエサ(生命エネルギーを与えている人間の語り部)の魂が穢れるのを嫌い、協力というかそれらしい理由をくっつけてくれるという展開を見せる。
    「ええーそうなの?」となるけれど、ラストの流れは嫌いじゃない。

  • 「白衣の意匠」
    「陰樹の森で」
    「酬い」
    「大地を歩む」
    「お嬢さんをください事件」
    「子豚を連れて」
    「温かな手」

    殺人事件を扱っているものも多いはずなのに、全体が日常の謎系のミステリであるように感じた。
    傑作とまではいかないが、佳作が多い短編集。

  • 素敵!!!

    石持作品は、日常にちょこんと置かれた異常なシチュエーションでの推理が楽しいけれど、
    この作品はいわば真逆の、異常な状況であまりにぽつんとおこる、
    不思議で、ありえそうな事件を淡々とひもとく物語。

    どうして淡々なのかは、ここが異常ポイントで、
    そう、探偵役がなんと、人間ではなく宇宙人?だからなのです。

    宇宙人だから、人間が死んでもじたばたしない。
    あくまで論理的。
    しかも推理の理由は悪を憎むとか犯人が憎いとかではなく、
    自分のエネルギーであるパートナーが事件で傷ついたり、
    あるいは事件をキッカケに悪に染まることを防ぎたいがための、
    純粋なまでの利己主義な事情。

    だけど決して彼らが冷たいだとか非情だとか、
    そういったトーンで書かれてはいない。

    論理立てて推理を組み立てるために冷静にあるための、
    いわば作者の完全なる用意周到なお膳立て、という感じなのだ。

    もちろん地球外生命体とのパートナー関係なので、
    あくまでもその関係はプラトニックであり、イコール、
    パートナーは人間として成長することはない。
    だって、相手への独占欲とか嫉妬とか、そういったものとはかけ離れているから。

    それがゆえにパートナー達も今の関係を、
    余剰エネルギーを与えつつ、体型が維持できていいな、くらいに、
    ある意味超然?泰然?と構えている訳なのだ。

    とはいえどこかでこの関係は不自然だ、と、パートナーも認識している。
    相手を受け入れたり理解しようとしてもがくのが人間の成長の糧である訳で、
    その部分をハナから欠いている関係で成立しているアンバランスさを理解するほどには、
    パートナー達は賢く、そうして優しくあるから。

    エンディングはある意味、予測十分可能。
    そうしてオチも、わかりきっているほどに明白。
    それでも割に、穏やかな読後感。

    石持マジックのレパートリーの深さに、またまたため息の一冊なのでした。
    あぁ、いい読書だった!

  • 人間の生命エネルギーを糧にする謎の生命体が探偵役という、非常に特殊な設定ですが、内容は鮮やかな謎解きでシンプルな形になっていると思います。生命エネルギーをくれる共生者のパートナーの「魂を汚したくないから」、事件を解決する、という事件解決への動機が面白い。冒頭で山場を一瞬見せる、予告的な話の始め方、連作で最終話で締めるストーリー展開など、私の好きな要素が入っていて好きな作品でした。今まで読んできた石持浅海さんっぽくない作品に感じましたが、面白かったです。

  • 人間ではない生命体の名探偵。
    一見ピュアなようで、実は人間的な感情が無いだけで冷淡な面も見せるという独特のキャラクターは他にはない個性的なものです。
    石持氏の作品の中ではかなり異質な部類に入ると思いますが、微妙に中途半端な空気感が嫌いではないです。
    ただ、ミステリーとしてはそんなに深いものではありませんでした。

  • 「なぜ他人の白衣を着たまま死んだのか」「なぜ痴漢は車内で刺されたのか」
    「なぜ知人は突然失踪したのか」
    など、提示された謎に関しては興味を惹かれました。
    ただその行為(犯行)に至るまでの動機が弱く、事件が解決してもすっきりしません…。

    また、ギンちゃん、ムーちゃんの選んだパートナーがどれだけ純粋な魂の持ち主なのか
    よく伝わってこなかったのも残念です。

  • 彼らは長生きみたい。
    最後は人間同士を残して帰った

  • さくさくと読みやすい連作集。
    違う石持作品も読んでみたい。

  • 連作短編集。

    人死にが多い割には、どことなく「日常の謎」的な雰囲気で、さくさく読める。

    でも基本的に一話完結なので、先が気になっちゃって一気読み! って感じにはならなかったな。

    ラストが少し切ない。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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