- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488525033
作品紹介・あらすじ
心に傷をかかえた書物の魔道師キアルス、心に闇をもたぬ大地の魔道師レイサンダー、若きふたりの運命が太古の闇を巡り交錯する。『夜の写本師』の著者が放つ闇と魔法の物語。
感想・レビュー・書評
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前作「夜の写本師」の内容を忘れていたが、充分楽しめた。
2人の魔導士の話だが、その一人キアルスがタペストリーの旅をする話は面白かった。
私は地図を見ながら話を読むのが好きなのだか、この本の添付の地図はあまり意味を成さなかった。そこが残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時折思い出したように読むこの作者の本、ずーっと昔に読んだ「夜の写本師」に続く長編第二弾とのこと。8年も前のことなので前作の内容は全く覚えていないのだなぁ…。
前作の感想にも似たようなことを書いてるのだけれど、今回もまた作者が作り出した世界観や魔導師の在りようなどを十分に感じ取れたかと言われれば、頭の中はいささか混沌としているところはあり。
それでも、人の心に巣食う「闇」に対し戦いを挑む二人の魔導師レイサンダーとキアルスの姿には打たれるところはあって、レイサンダーと<暗樹>の二度の闘い、とりわけ<暗樹>とまみえてレイサンダーが光の奔流にのみこまれていく場面や一連托生とばかりに自らの闇の裂け目に<暗樹>を縫い込んでいく場面にはなかなか震えた。
前段で語られるタペストリーの中の世界もとても印象的で、テイバドールの半生がここでじっくり語られたことが、後半の二人の魔導士の行く末とつながって、混沌とした頭でも一定の興味を持って読み進むことが出来た。 -
「夜の写本師」に続く2作目。
同じシリーズで登場人物もダブりますが、続きというのとはちょっと違います。
若い魔道師二人の運命が帝国の危機に交錯し、さらに数百年前にまでさかのぼり絡み合う人々の物語。
コンスル帝国が繁栄を謳歌していた時代。
大地の魔道師のレイサンダーは、心のうちに闇を持たない半人前。
幸運の守りとして献上された<暗樹>が帝国を蝕んでいくとき、恐ろしいものだとはわかっても何をするすべもなく、城から逃げ出してしまう。
レイサンダーは追われる身に。
黒髪に緑の目で長身、という特徴がレイサンダーと似ていたキアルスは書物の魔道師。
心に深い傷を負い、衝動的に貴重な書物「タージの歌謡集」を燃やしてしまった。
レイサンダーと共に、不思議なタペストリーの中へと入っていくことになる‥
タペストリーに描かれているのは、かってコンスル帝国に侵略されて抵抗した人々。
一介の少年テイバドールが苦難を経て成長し、魔道師らの力添えを得て‥
古代を思わせる辺境の民人の暮らしに魅力があり、勇気ある決断を応援したくなります。
へたれの若者二人がこのタペストリーに学びながら、協力し合い、力を尽くしていく。
誰も見たことも聞いたこともない現象を、言葉の力だけでありありと描きあげていく筆力に感嘆しました。
結末は、それまでの濃厚さに比べると、急に終わる感じもなくはないですが。
希望の持てるシーンに、一気に風景が変わったところに自分も立っているような心地になりました☆ -
前作の続きなんだけど時代はかなり遡っている。
連続して読めばすぐにつながりそうだが間がかなり空いてしまったので入り込めないままほぼ終わりまで来てしまった。
登場人物に馴染まないまま読み進めたので、シーンの切り替えのたびに置いて行かれてしまう。私の読み方に問題があるのだろうが、途中何度か断念しそうになった。
2023.1.22
10
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夜の写本師に続く第二弾。息つく間もなく読みきった感じです。二人の主人公がどう絡むのか全然予想もつかず、ドキドキしながら読み進めるのがとても楽しかった❗次作品も食いぎみに(笑)購入しました。このシリーズ楽しいです!
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世界観に圧倒される。
乾石さんの頭の中に無限に世界が広がっていて、特別必要な部分だけを切り取って慎重に再現されたもの、という感じがした。場面ごとに空気ががらっと変わるのも凄いところだと思う。
中でも、テイバドールの話が一番印象に残った。
憎むなという父の教えが星の光となって背骨に宿っていて、闇に誘われるたびに、その星が正しく導いてくれる。その星こそがテイバドールの核であり、歌の元となったものではないかと思い、自分にそんな星があるかなと省みたりした。-
なんだかとても難しそうな本です。
背骨に宿っていて暗闇から導いてくれるんですね。きっとnanokaさんにも宿っています。あなたはそんな感じ...なんだかとても難しそうな本です。
背骨に宿っていて暗闇から導いてくれるんですね。きっとnanokaさんにも宿っています。あなたはそんな感じの人です。2016/02/21
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『イスランの白琥珀』を手に入れて読み始めたのだけど、なんか見たことある名前が出てくるなぁ…って思って今までのを見てみたら、『魔道師の月』のタペストリーの中の人々だ!って気がついて読み返しました。
単行本は図書館から借りたけど、やはり手元に置いておきたくて、文庫になったときに購入してそのまま…久々に読んでも面白かった。単行本を読んだ時に感想書いてるので詳しくは書かないけど、レイサンダー、キアルス、ティバドールの話が集約していくのは目が離せなくなるなぁ。そして、『太陽の石』が読みたくなっちゃう(^◇^;)
読み返して、悲しい別れもあったのね…って思い出したり。前は三人しか印象に残ってなかった(・・;)他のも読み返したらまた新しい発見ありそう。
再読の感想をブクログでは書けないのがちょっと残念だなぁ…
やっぱり私はこのシリーズが大好きだ!
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前作、「夜の写本師」を読んで、これは凄い作家だ、と思い知った。
感想、書いたつもりだったけど書いてなかったかー。
とりあえず、読中のツイートを。
<blockquote class="twitter-tweet" lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">「夜の写本師」の続刊、「魔道士の月」をようやく買ったので読み始めてる、やっぱこの人すごい。めちゃくちゃ骨太でどっしりとしたハイ・ファンタジィ。ファンタジィ好きなら、たぶん既にチェック済みだとは思うけど、もし未読なら是非。かなりお勧めです。こんなに面白いファンタジィ、そうそうない。</p>— いけだ (@ikeda_seitaro) <a href="https://twitter.com/ikeda_seitaro/status/594904283855728641">2015, 5月 3</a></blockquote>
<script async src="//platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script><blockquote class="twitter-tweet" lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">なにが凄いって、前作もそうだったのだけど、「視点変更」の見事さ。ハイ・ファンタジィであるということは、舞台設定の巧妙さが重要なポイントだけど、そのための手法としての視点変更が本当に素晴らしい。この視点変更によって、物語の重層さが構築され、奥深く堅牢な「世界」が立ち現れてくる。</p>— いけだ (@ikeda_seitaro) <a href="https://twitter.com/ikeda_seitaro/status/594905579895656448">2015, 5月 3</a></blockquote>
<script async src="//platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script><blockquote class="twitter-tweet" lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">そして、その「視点変更」が物語の転換としても抜群の効果を発揮していて、ここしかない、というポイントにガチッと嵌まっている。抜群のリーダビリティと相俟って、読者を物語へと引き込む具合が本当に素晴らしい。いやはや、凄い作家さんです。ほんと。</p>— いけだ (@ikeda_seitaro) <a href="https://twitter.com/ikeda_seitaro/status/594906642782662656">2015, 5月 3</a></blockquote>
<script async src="//platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>
まあ、ツイートで言いたいことは大体書いた。
終わり間近の、混沌とした部分は、ちと消化不良かな。
ここまで抜群に読みやすかった分、するっと意識が上滑りしてしまう。
続編は、いまのところ3巻あるのかな?
でも、まだ文庫になってないようなので、読むのはしばらく後になるかなー。
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面白かった~
「太古の闇」というコワーイ物体を封じ込めるという話。
前作『夜の写本師』にちょこっと登場するクセの強い人物キアルス(書物の魔道師)のその後が描かれていますが、今回はある家の壁にあった「タペストリー」に織り込まれた古い時代の人々の物語が主役を張っています。
人の営みや想いがずっと繋がって続いてこの先もどこかに…という歴史の流れを感じられて、読んでいてとてもワクワクしました。 -
ずっと紛失していたオーリエラント魔導師シリーズ1巻目の「夜の写本師」を発掘し再読したので、前から買って読んでいなかった2巻目の「魔導師の月」をようやく読破。
思えば「日本のファンタジー」を毛嫌いしていた僕がファンタジーを読み漁るようになったのは「夜の写本師」がきっかけだった。なので続編はとても楽しみにしていた。
そして、期待は裏切られた。
まず、この本は「夜の写本師」の続編ではなく、あくまで同シリーズの作品ということ。裏表紙を読めば分かるものの、何も読まずに本屋で即購入したのが勘違いの原因だった。
だが続編ではなくとも世界観は同じであり、共通するキャラクターも登場する。
今回の主人公の内一人は前作で主人公を(特に後半で)支え導いていた書物の魔導師キアルス(別名は一巻のネタバレになるため伏せる)。キアルスが大事な存在であるシルヴィアンを救えず失ったところから始まる。また、もう一人の主人公は闇を抱えない半端な魔導師レイサンダーは仕えていた帝国に贈り物として献上された“邪悪なもの”から逃げるところから始まる。
また、この小説は前作同様「過去の主人公」が存在する。そして、その過去を知り、二人が出会った時に“邪悪なもの”を解く光が生まれる。
前作の続編ではないと気付き失望したのは一瞬。
日本ファンタジー小説の中でも卓逸した作品となっている。
前作を読んでいない方にも読んだ方にもお勧めしたい。 -
ソフトカバー版を既読。物語を読む楽しみがページ数の何倍も詰まっている作品だ。はじめて読んだとき、「夜の写本師」を読んだからこその感動であると理解したうえで、前作よりもこちらのほうを非常に気に入った。それはどちらの作品もだいすきだというのが大前提ではあったが、キアルスに魅了されたことがおおきかったかもしれない。この複雑な世界を構築しながらキャラクターにも魅力を持たせるということをやってのける作者には、みずから翻弄されたい気持ちにもなった。さいごにキアルスが得たものと、見上げた夜空の姿に胸がいっぱいになった。
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三冊目。前二作品の自分が書いたレビューを読んでも、いまいちパッと思い出さなかったので、ていねいに書いておかなくては。
レイサンダーの名前は記憶しているのだけど、どこで出てきたんだろう?
闇を持たない魔術師。まあ、初っ端からラスボス闇樹相手に尻尾まいて逃げ出す。
んー。なんか、ハウルっぽい。
そして、本の魔術師キアルス。
こちらもいきなりいじけて、大事な大事な「タージの歌謡集」を火に変える失態。
二人とも、何やってんの?
とまあ、ここまでは二人の魔術師のヘタレっぷりを面白く読んでいるのだけど、タペストリーの魔力から遥かな過去、テイバドールの時代へ。
部族と帝国との争い、双子ちゃん魔術師の登場、病み姉アーチェ。うわー。燃える!
吟遊詩人の思わぬ攻撃力に、ちょっと見直しをかけた私でした。
まあね、後は二人の魔術師がそれぞれの成長を遂げるといえば簡単にまとめられてしまう(笑)
キアルスと奴隷少年エブンの会話が好き。
魔術師の資質を問い、それがないことに気落ちするエブンに向かって、キアルスは「自分の中にあるものを数える」ように諭す。
足が速いことや、教える力、努力家であること。
それらを持っていること、選択肢がたくさんあることを喜ぶように言う。
魔術というチートな力が渦巻く世界にあって、でも、己の手元を見よと言えるキアルスがいいな、と思った。 -
「静かにうちよせる波、ときおり響く海鳥の声、半日航路の対岸には帝国本土の連絡港ヂャイの町が白くへばりつき、空も海もイルモネス女神の美の錫杖にかきまわされて、冬でも菫青石(アイオライト)の底なしの青さだ。」
ページを開くとすぐに、こんな文章で書かれた美しい描写。
前作「夜の写本師」と同じ世界でありながら、時間軸が違い、これはその頃から1000年もの昔の話。さらに作中ではそこから400年もの昔にも旅立ちます。
ギデスディン魔法の創始者キアルスなどが登場し、その魔法の成り立ちもおもしろいし、若かりし頃の彼の未熟さもまた読み手にはたまらない。
あとがきにも「本書は前作に先立つ物語であると同時に後日談でもある」と書かれているとおり、どちらから読んでも支障はありません。
さて、壮大な大地、雄大な時間とともにとにかくスケールが大きくて、引き込まれます。何だか、神話を読んでいるような気分です。
この世界には通常に息づく魔道師ですが、その成り立ちが丁寧に書かれているのも魅力です。魔道師とはいえば、万能で何でもできるかのように思うけれど、決してそうではないということ、闇を引き受け、それでいて闇に飲み込まれないようにしないといけないということなどが綴られていますが、今作では「太古の闇」が登場することもあって、闇に思いを馳せることになった1冊でした。
魔道師はその生い立ちや才能から誕生するもののようですが、魔道師に限らず誰もが大なり小なりの闇を抱えて生きています。
誰かを妬むこと、呪うこと、復讐したいと思うこと、など闇の力を強めてしまう心の動きもあります。
私たちも闇を知ることで相手の闇に気付き、寄り添う優しさを手にしたりもしますが、一方で大きすぎる闇は自分を滅ぼします。時には無自覚に飲み込まれてしまうこともあるかもしれない。
人の業とも思える太古の闇は、退けることはできても滅ぼすことができない、というのも印象的でしたね。
これは確かに異世界ファンタジーで確立された世界観に酔いしれたりもするのですが、根底には人の業、人の持つ闇について綴られたもう1つのテーマがあるようにも感じています。
更にこのシリーズは続いているので、記憶が薄れる前に読んでいきたいと思います。 -
『夜の写本師』に登場する、キアルス君が主人公の一人です!
暗樹にまつわる話も面白いですが、私はテイバドールの話が一番面白くて、ちょっと泣きそうになりました。
最初は、キアルスが何でこんなに詩集のことを気にするくだりが出てくるのかよく分からず、途中でテイバドールの過去話に入った時には、そこ掘り下げるの?!と焦ったのですが。。この話がないと成り立ちませんでしたね。
私は『太陽の石』を読んでしまったので、オルヴァン、イスリル、ソルプスジンター、デイサンダー、それからナハティの力に繋がる記述があるたびに、おお!と楽しみながら読ませていただきました。 -
夜の写本師の衝撃的な出会いから、本作も手に取った。夜の写本師に登場する老練な魔術師の若かりし頃の物語である。夜の写本師の、登場人物や土地柄の移り変わりのダイナミックさに比べると、タペストリーで紡がれるストーリーが主軸の本作は悠久の大河のごとく淡々と物語が進んでいくように感じた。そのため、前作のノリを期待すると少し残念であった。しかし考えてみると、初期の2作でこのような流れの異なる作品を書けるというのはなかなかできることではないようにも思う。シリーズと著者の今後がますます楽しみになった1作であった。