- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488547127
感想・レビュー・書評
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ダークファンタジーの巨匠、ジョナサン・キャロルです。
前の作品で、なんか普通のミステリーっぽくなっていたので、うむむと思ってたけど、やっぱりジョナサン・キャロルは違います。
これ以上ないほど、キャロル色の作品。
「薪の結婚」とは、生きていくなかで大事なことが起こったときに、木を拾いそれに拾った日付を刻んでおく。そして、人生の最後のときにそれらを燃やすという、なんともロマンチックなことを言っているのだが…。
自分の人生を、淡々と語る主人公が切ない。
も、何を書いてもネタバレになりそうなので、このさいさっぱりと書かないことにしますが、あの主人公の造詣は、キャロルだからできることだとすごく思う。
キャロルを読んでない人は、人生損してますよ!!
いいもん、読んだよぉ。 -
すごい久しぶりのジョナサン・キャロル。昔、「死者の書」で出会って、「月の骨」「空に浮かぶ子供」「沈黙のあと」辺りを読んだけど、何となく肌に合わないものを感じて遠ざかってた。図書館で持ち歩き用の文庫本を探していてふと見かけたので、何となく読んでみた。
前半はもう投げ出そうかと思ったほどつまらなかった。主人公の社交状況なんか興味ないし。でも「死んでいた」の辺りから、いきなり面白くなった。 とはいえ、最後まで読んでもすっきりしない。ホラーっぽいけどホラーではない、安心できそうでできない……やっぱり何となくわからなくてもやもやする。大体、主人公が、本の中で言われているほど、責められなくてはならないほど自己中心的な人間とは感じられないし。欲しいものを手に入れて何が悪いのか。たとえそれで傷つく人間がいたとしても、それはそれ。どうせそういう行為はいつか自分に戻ってくるもの。それが人間だと思うのだけど。
まあ……やはり何となく合わないということで。 -
市田泉訳ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』が思ったより面白かったから、訳つながりで初キャロル。
面白かった。個人的には色々ツボなんだけど、ストーリーにいくつか引っかかるところがあってこの評価。でも色々考えさせられる原石がそこここに見られて、素敵だった。
以外ネタばれ。
主人公ミランダは、ミランダであるがゆえに利己的。そこまで利己的には見えなかったけど。ごく普通の感じじゃない?そして、利己的性質は単なる性格なのか、それともヴァンパイアだからなのか。
まあ、このことは私にはどちらでもいいのだけど。人間の自分勝手さの暗さ。人間は自分勝手で当然。
人を愛することも利己的な行為かもしれない。そう思うと怯えてしまう。
それでも愛したいって思うんだね。 -
キャロルは好きでずっと読んできたけど、この本だけは途中でひっかかっちゃって、最後まで楽しめませんでした。そんなふうに人間を断罪していいんか。利己的なところもあるし、助け合うのも人間でしょ。納得いかないー。
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ジョナサン・キャロルの新刊は、触れないわけにはいきますまい!手放しで絶賛というわけではなく、かと言って面白くないなんてことはなく。キャロルの作品は私にとってどれもそうなのだが、「人に薦めにくい」話なのだ。自分は好きで、共有できたらいいなぁと思いつつ、これはちょっと人を選ぶよな…と思ってしまう。
今回も愛しい普通の健全たる日常が、何処からかほころび異質なものに変化していく描写は圧巻。善意の顔をした悪意がはびこり、希望は絶望と同義の世界だ。何が本当なのかわからない。どうなるべきなのか、それすらも―――それのみが―――わからない。ラストはまったく違うけれど、スティーブン・キングの「霧」(映画の『ミスト』じゃない方の)エンディングがかぶってしまった。「霧」のエンディングの一言を、これでも感じていいのかどうか。それとも?
長らくキャロルを訳されていた浅羽莢子さんが亡くなられ、今回からは市田泉さんが訳されている。ひとりだちしている翻訳者の方に失礼なのかもしれないが、よくぞここまで浅羽さんテイストを引き継いでくださったものだ!と勝手に感涙。次回も安心して期待できますぜ。 -
紹介文ほど面白くなかった、というのが実感。残念。
ただ主人公が仕事を通じて関わっていく人々が魅力的で、特に老嬢と、その知り合いの警官といった個性的な人々とのやりとりが素敵です。
残念なのはただひとつ。主人公の男の趣味の悪さでしょうか。
(まだしも元夫のほうがマシだと思うんだが) -
キャロルの作品は初めて読んだ。
うーん。途中まですごく面白かったんだけど、
途中からの急展開の部分がついていけなかった。
これが、キャロルの持ち味だとしたら、
他の作品もちょっと…という感じ。 -
久しぶりにキャロル作品を読んだ。ダークファンタジーと称される彼の作風は、要するにキングなどの“モダンホラー”的な恐怖小説(ホラーもファンタジーの一種だと思う)とはまた違う、純粋な恐怖というより「原因」があるゆえの恐怖、悪意の介在による運命の急展開といった感じの恐ろしさが持ち味で魅力。どんでん返しはある意味お約束で、意外性や衝撃という点では旧作に及ばないが、衝撃>後に残る重さ、だった初期作品より、後に残る重さが衝撃を上回ってじわじわ来る。生まれなかった/失われた子ども、という彼がよく使う主題はもともと“痛い”ものだけど、誰もがある程度は背負っているであろう「罪」に対する容赦のない断罪も含め、今回の後味の重さはすごい。それでもそうした物語を、あくまで淡々と、清潔感すら漂わせながら描くキャロル節(浅羽さんに代わっての市田さん訳も違和感なくて良かったです)がやっぱり好きです。