- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492396476
感想・レビュー・書評
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2050年日本は持続可能かという疑問から行われたAIを活用した社会構想と政策提言という研究が2017年に公開され、話題となった。その研究の中心にいた広井良典氏が独自の視点で日本の課題や未来への展望を記した本。
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あまり新しいことが書いてあるとは思わなかったな。興味と重なる部分が大きく面白く読めたけれど。
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目的:
未来の社会像について、知見を得るため。
公共政策的な観点から、資本主義を乗り越える知見を得るため。
要旨:
少子高齢化が進む日本の未来について、AIによるシミュレーションの結果、「地方分散型」に社会が移行することによって持続可能な社会になるという結果がでた。
そして、「人口減少社会のデザイン」を実現するために個別的な「コミュニティ」や「まちづくり」、「地域再生」、「社会保障」といったことを論じていく。さらに、人類史という長期的な歴史の中で、その意味を考察している。
感想:
この本にて、「資本主義・気候変動・人口減少(福祉)」が結びついた。
気候変動も福祉に関しても、解決のためには「拡大・成長」という資本主義的信仰から抜け出し、「持続可能」な社会作りが必要であると説き、コミュニティや地域循環が重要だと述べられている。
でも本書は、著者が公共政策学者ということもあって、政策立案側からの意見が多い。そのため、ビジネスとしてどのように貢献していくかすごく考えさせられた。
特に、介護などの福祉に関しては、どうしてもその仕事に対するイメージが良くない。社会全体で取り組まなければならないが、その中でビジネスはどのように貢献できるのだろうか?
課題だらけの日本の未来について示唆に富む本だった。 -
賢い人が書いたのだろうという本。
前半は客観的事実をもとに、日本の人口減少における現状と行く末をわかりやすくまとまっていました。
・時間軸から空間軸へ
・第四のSカーブ
・死に場所の変化
・健康も外的、環境に影響を受ける
など面白い考察。
後半はかなり趣旨が哲学的、思想的な内容に。 -
「都市集中型シナリオ亅か「地方分散型シナリオ亅かが最大の分岐点で、持続可能性の実現には継続的政策が必要という論は納得できるところが多かった。
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いつもの広井良典先生。今は最初にこれを読めば間違いないのではないでしょうか。
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学術てきなデータがたくさんあった。
たくさんまとまっているので、後半はかなり読み進みづらかった。
が、これからの社会を考えるうえで読んでよかったと思う。
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SDG'Sに世界は動いているが、人口減少していく日本にあっては、危機的状況にあるという。そのため、回避するための提言を行っている。キーワードはローカライゼーション。
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人口や経済が「拡大・成長」を続け、“集団で一本の道を登る時代”だった「昭和」、人口が、減少に転じても「拡大・成長」志向の発想や価値観が残り、社会的現実とのギャップが生じてきた「平成」。
著者は「令和」の時代になった今、中心テーマになるのは「人口減少社会のデザイン」であると主張する。
今こそ、先送りしてきた分配や負担に目を向け、「持続可能な福祉社会」のモデルを模索するというのが、この本の主旨。主要な論点をまとめておく。
①将来世代への借金のつけ回しを解消するため、消費税を含む税の水準をヨーロッパ並みに引き上げる。累進課税による再分配効果は小さい。
②「人生前半の社会保障」つまり、若い世代への支援の強化が何より重要
③基礎年金を手厚くするとともに税でまかなう制度とし、報酬比例部分は逆に順次スリム化すべし。 ④地域ないし国土の構造として「多極集中」を実現するとともに、「コミュニティ空間」という視点を重視した“歩いて楽しめるまちづくり”を進める。商店街と高齢者向け住宅等を一体的に整備した高松市丸亀町商店街、歩行者と路線バスのみのトランジットモール化を行った姫路駅前など。
⑤都市と農村の持続可能な相互依存を実現すべく、都市・農村間の様々な再分配システム(農業版ベーシックインカム)の導入
⑥自然エネルギーなどを通じて地域内での経済循環を高め、環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」に繋げていく。
⑦企業行動ないし経営理念の軸足を「拡大・成長」から「持続可能性」にシフトしていく。
全体を読んで、若年世代への負担軽減、地域内経済循環などは既に言い尽くされてきた感があるものの、④については、自分が散歩好きなせいか、共感を覚えた。これも、言い換えるとコンパクトシティいう既存の概念に過ぎないが、高齢者のコミュニティ、介護予防、買物難民対策などの観点からも、”歩いて楽しめるまちづくり“は、国や自治体において、なんとか積極的に進めていく方針を打ち出してもらいたい。
なお、終盤の「死生観の再構築」や地球倫理といった論述は、それまでの記述に比べるとあまりにも観念的な感じが強く、素直に読み通せなかった。