作品紹介・あらすじ
《沖縄に40年以上通い続けてきた著者が描く「沖縄戦」》
ここは1945年の沖縄。ぼくの名前は「せいとく」です。
いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」とよばれています。
父に続き、兄も兵隊となり、ぼくは母と妹の3人で、南へ逃げることになりました。
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絵本作家・田島征彦は、40年以上取材を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描いてきました。
(『とんとんみーときじむなー』[1987年]『てっぽうをもったキジムナー』[1996年]『やんばるの少年』[2019年、いずれも童心社・刊])
本作では、長年の取材の集大成として、真っ正面から「沖縄戦」を描きます。
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「悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ」
田島征彦(「母のひろば」685号より)
感想・レビュー・書評
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<書籍紹介情報>
平和を願い、沖縄を見つめ続けてきた田島征彦が描く沖縄戦―ここは1945年の沖縄。ぼくの名前はせいとくです。ぼくは、母と妹の3人で、南へ逃げることになりました。
絵本作家・田島征彦は、40年以上取材を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描いてきました。(『とんとんみーときじむなー』[1987年]『てっぽうをもったキジムナー』[1996年]『やんばるの少年』[2019年、いずれも童心社・刊])
本作では、長年の取材の集大成として、真っ正面から「沖縄戦」を描きます。
<感想>
堺市出身の田島氏が沖縄戦を描く。
「沖縄戦を描くというのは、困難な仕事だ。悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ。」
絵本から平和の大切さをうったえる活動。
本文の
「戦争のくるしみを一番しっているのは、ぼくたちなんだから。」
最後の一文がこの絵本の世界を表している。
沖縄はさまざまな視点で論じられている。分断などいろんな意見もあるのかしれない。でも、シンプルに、戦争の恐ろしさ、今、世界で起きている戦禍について、これ以上拡大してはならない、私達も、いつまきこまれるかわからない不穏な情勢で、一刻もはやく平和で穏やかな日常を取り戻すことが必要だと思った絵本。
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1945年の沖縄。国民学校2年生のせいとくは、いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」と呼ばれている。おとうも、中学生のけんとくにぃにぃも、戦争に行ってしまった。戦いの準備を始めた日本兵に、一番上等の芋と黒砂糖を持っていくと、日本兵は、わしらがお前たちを守ってやるから、もっと持ってこいと言う。
3月の終わり、この辺りも危ないと、母と妹の3人で、南へ逃げることになった。毎日、毎晩、爆弾の中を逃げ回り、ガマ(洞窟)に入ろうとしたら、日本兵が立ち去れと言う。
4月になり、アメリカ兵が上陸。機銃掃射、艦砲射撃、日本軍とアメリカ軍の戦いの中で、島の人たちは死んでいった。やっとガマに入り、眠ったとき、恐い夢を見て泣いてしまったせいとくに、日本兵が怒鳴った。その声に驚いて泣き出し、泣き止まない赤ちゃんを、日本兵は切り殺した。
5月、ガマを出たせいとくたちが、焼け残った家に入ろうとしたとき、艦砲射撃が命中して、アンマー(母)は死んでしまう。その時、日本兵の斬りこみ隊とアメリカの戦車の衝突に巻き込まれ、せいとくは、アメリカ兵に助けられたものの、左手を失った。アンマーも死に、けいとくにぃにぃも戦死し、ひとりぼっちになったせいとくは、泣かなかった。
せいとくは、アメリカ軍の収容所の孤児院に入り、青空教室で学んでいると、離れ離れになっていた妹が帰ってきた。
戦争が終わって10年、高校生になったせいとくたちが作った畑は、アメリカに取り上げられ、軍事基地にされた。(49ページ)
※沖縄について丹念に取材を続け、絵本を書いてきた田島征彦さんの文章は心打つものがありました。絵は迫力はあるけれど、気持ち悪いとは思えない描写で、すごい作品だと思います。でも、図書館の新刊で、すぐに借りたものの、あまりに辛くて、レビューが書けませんでした。
それでも、この夏のNHK特集で、「久米島の戦争」を見て、やはり書いておきたくなりました。「久米島の戦争」は、日本軍が、アメリカ兵のスパイと決めつけた島民20人を、赤ちゃんも含めて一家皆殺しにした事件でした。(田島さんの絵本の中の年表にも記されています。)
私がつらくなるのは、二つのことです。戦争の中で日本兵が行ってきたことと、今も、アメリカ軍基地の多くが、沖縄に存在し続けること。
この絵本の中で、せいとくが言う言葉。「今はアメリカーに、占領されています。でも、沖縄が日本に戻ったら、こんなものはすぐなくしてしまうさぁ。だって、戦争の苦しみを一番知っているのは、ぼくたちなんだから。」
沖縄以外の県に住む私が、事実をまず受け止めることから逃げないようにしようと思っています。
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今年出版されていて気になっていた絵本。沖縄戦の一般人たちが辿った悲惨な状況をたんたんと絵本サイズで読める。主人公は泣き虫な男の子、二年生のせいとく。アメリカ軍の上陸でアンマー、妹と逃げ回る生活が始まります。
それなりに文字数あるので、絵本にありがちな内容薄すぎてこれだけよんでもわかんないんじゃない?っていうことにならず安心。もう少し知って欲しいけど、ひとまずこの絵本で沖縄戦を知るのはとても良いと思いました。★4にしたのは、この本からもっと進んで多くを知って欲しいから。沖縄で日本兵が沖縄の人にやったことは、割と簡単に読めるから知っていてほしい。他の国では絶対にもっとひどいことが行われているのだから(こっちは探さないと読めないし児童書はほぼない)。
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「沖縄戦を描くというのは、困難な仕事だ。悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ。」
という作者、田島征彦さんのことば。
この思いが、未来を背負う子どもたちに伝わりますように。
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平和を願い、戦争を忘れないために。
理不尽で、恐ろしく、悲惨な事が沖縄であった。
そして、今も世界で起きている。
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たじまゆきひこ(田島征彦)さんの絵は恐ろしくも美しく、「悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ。」との意図は果たされていると思う。
沖縄戦で家族を亡くし体を傷つけられ、物語の終わりでは戦争が終わって10年経ち、1955年。畑をつくってやっと収穫できるようになったところでiアメリカー(アメリカ人)に土地をとりあげられ、軍事基地をつくられてしまう。
「いまはアメリカーに占領されています。/でも、沖縄が日本にもどったら、こんなものは、/すぐになくしてしまうさぁ。」
この一文が何とも悲しく、本土の人間として限りなく申し訳ないと感じる。
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1945年の沖縄。2年生になるのにいつもないているせいとくは、「なちぶー(なきむし)」とよばれています。おとうも中学生のけんとくにぃにぃ(兄さん)も兵隊になり、せいとくたちも南へにげることになります。
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著者プロフィール
1940年大阪府堺市に生まれる。高知県で少年時代を過ごす。絵本に『祗園祭』(第6回世界絵本原画展金牌受賞)『じごくのそうべえ』(第1回絵本にっぽん賞受賞)『あつおのぼうけん』『ななしのごんべさん』(いずれも吉村敬子・共作)『とんとみーときじむなー』『てっぽうをもったキジムナー』『やんばるの少年』(いずれも童心社)『てんにのぼったなまず』(第11回世界絵本原画展金牌受賞)『のら犬ボン』『ふしぎなともだち』(第20回日本絵本賞大賞受賞/いずれもくもん出版)、35年間の画業をまとめた、自伝的画集『憤染記(ふんせんき)』(染織と生活社)などがある。
「2022年 『なきむし せいとく』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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