中国台頭: 日本は何をなすべきか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532350291

作品紹介・あらすじ

中国経済脅威論、崩壊論をともに退け、激変する中国の現実を豊富なエピソードを通じて活写。ビジネス、経済から政治、外交に至るまで、中国若手世代の息吹を伝え、構想力豊かに未来志向の日中関係を展望。日本の選択を担う現役世代の責任を問い、日中和解の可能性にも踏み込んだ注目の書。

感想・レビュー・書評

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  • ○中国経済脅威論は二重の意味で間違い。

    中国経済好調の原因として賃金や為替をあげるのは、中国経済に対する過小評価。

    以前多くの難問を抱える中国経済を脅威視するのは、中国経済に対する過大評価。

    深刻な問題として
    1、 国家財政に対する過重な潜在負担。

    国有企業に対しての貸出の4割程度は不良債権化している。

    将来これを財政で処理しなければならない。

    さらに年金。

    中国では高齢化が進んでおり、年金が問題となってくる。

    生活水準が上がるので、それにしたがって年金も相当高い水準で給付しなければならないが、その年金の原資の積み立てはほとんどされていない。

    年金の足りない部分は財政でみなければならない。

    国家債務はGDP比で100%を超えているのではないかといわれている。

    日本も国家債務比率が130%を超えているが、中国と日本のGDPの規模を考えるとかなり重い。

    これを解決するためにはとにかく、高い成長を維持しなければならない。

    2、 農村・農民問題

    国民の所得が低いのに、農作物の価格は、国際相場よりも国内価格のほうが高い。

    3、 失業問題と高齢化

    7%の成長率を維持し続けなければ国民の不満が爆発する。さらに農村人口の都市移転を引き受けなければならないため、さらにきつい。

    4、 経済成長に伴い、水消費量の増大が問題。

    利の水不足は年間400億トンとされ、668の主要都市のうち、水不足に直面するものが400都市超。

    さらに人口の増加、生活水準の高度化によりこの問題はさらに顕在化してくる。

    5、 経済は資本経済だが、政治は相変わらずの共産党支配だということ。

    いつまでも「政経分離」が持つわけがない。

    ○ 中国にはさまざまな所得階層があるので、金持ちのとこは金持ちだし、貧乏なトコは貧乏。

    だから、金持ちの都市同士がくっついて製品を開発したり、製造すれば、「安くていいもの」が作ることも可能。

    その際に中国製品でよくある「安かろう悪かろう」ではない製品が台頭してくる。

    ○ 日本は過去、莫大な予算を農地改良その他に投じ、高関税と輸入障壁で輸入品から国内農家を守ってきた。

    おかげで農産品の価格は軒並み高い。

    このような過保護な政策の割りに、日本の農業は衰える一方。

    米の生産調整(減反)のため総面積の4割に近い田んぼを休止させているのに、米在庫が増え続けて米価が下げとどまらない。

    やる気を失った農家は耕作を外部に委託する人が急増した。

    このため、農業経営の大規模化、耕作の委託などが進みつつある。

  • 著者は在中国日本大使館で働いていたことがあり、著者の中国滞在期の実経験による、具体的な中国経済についての話が大部分を占める。
    中国経済について述べながら、日本の経済の叱咤しつつ日本へのエールを送っているといった感じを受ける。

    日中関係における政治的な問題点を、経験や人間的関係においてもっと改善できるのではないかという提案をしている点で面白いし、共感のできる本であると思う。

    でも、この本は日本のビジネスマン、企業家が読む本なのかなと思う。政治、国際関係のレポートを書くための資料としてはあまり使えないかもしれない・・・と思った。
    ので、満足度はイマイチ。

    中国でのビジネスを考えている人や、中国の驚異的に台頭する経済に不安を覚える人、日本経済に対して不満を持っている人が読むと、いいのかもしれない。文章はさほど固くなく読みやすい。

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著者プロフィール

日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家
1958年生まれ。1980年、東京大学法学部卒業、通商産業省入省。通商政策局公正貿易推進室長、在中国日本大使館 経済部参事官、通商政策局北東アジア課長を歴任。2002年、経済産業研究所上席研究員。東亜キャピタル取締役社長を経て、2012年より津上工作室代表。2018年より現職。

「2022年 『米中対立の先に待つもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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