役に立つ一次式: 整数計画法「気まぐれな王女」の50年

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  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535554627
#OR

作品紹介・あらすじ

"役に立たない"はずの整数計画法が"役に立つ"方法として大復活を遂げた"世紀の大逆転ドラマ"を描く。本邦初の応用数学ドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  • 応用数学、整数計画法を巡るドキュメンタリー。最後のノーベル賞のくだりは特に興味深かった。数学的な解説はほんとにサラッとしてるので、わからない人でもわかったように感じながら読める。

  • 一次式という切り口で「役に立つ数学」をめぐるドラマについて、著者の専門である数理計画法やそのうち金融工学にも言及された応用数学(OR)の概略と歴史・人物像を織り交ぜた誠に内容満載の本である。

    数学史の本は巷に数多あるが、応用数学については躍動感のある歴史を語れる人は意外に少なく今野浩先生が第一人者であると思います。

    既に、『[[ASIN:B000JA1X3E 整数計画法とネットワーク・フロー (1975年)]]』を古書で20年以上前に入手していたが、その翻訳の裏話が書かれているとは恐ろしい。この本はなんと初版500部限定であったそうです。おまけにそこで述べられていたアイディアが時を経て、非常に重要な役割を演ずるあたりの記述には感銘を受けました。

    その他にもOR分野における超天才や、奇人・変人の逸話が満載です。
    後半は感動ものです。特に応用数学を関心を持った高校生や大学生には一度手に取ってほしい一冊です。

  • 請求記号 : 417||I
    資料ID : 10508578 , 10600410
    配架場所 : 工大君に薦める , 工大保存書庫

  • 『役に立つ一次式』 整数計画法「気まぐれな王女」の50年

    本書では、オペレーションズ・リサーチの手法の一つである整数計画法の発展について、著者である今野氏自身の研究の歴史と紐付けながら解説されている。数学研究者の世界というのは、僕自身も想像がつかないが、極めて優秀な数学的素養を持つ人たちの集まりであるようだ。大学時代の数学科の卒論発表を聞いた際に、解説された証明が「ちんぷんかんぷん」だったことが思い出すと、頷くほかない…と、納得。

    さて、聞き慣れないカタカナなので、説明しておきましょう。オペレーションズ・リサーチ(以下、OR)とは、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法である。
    (Wikipediaより出典)
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%9A%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81

    ORの大きな目的の一つは、現実の問題を数学によって解決、もしくは最適化すること。いわゆる、証明や数式と格闘するだけではなく、社会人として我々が直面するビジネス上の課題解決に適用できる点を僕自身はけっこう気に入っている。分かりやすい例だと、ナップザック問題が有名かつ理解しやすい。限られた選択肢の中で、ある目的を達成するために最大の効果を得るには、どのような組み合わせにすべきか、という問題を解決できる(数式上の表現とは異なるが、やりたいことはそういうこと)。

    本書の内容は、僕のような素人に向けて、ORがどのように育ってきたのか、何故現在になって再度注目を集めてきたのか、という疑問に基本的な答えを与えてくれる。整数計画法については、どのようなものかの概要を知ることもできるだろう。
    よって、整数計画法って聞いたことあるけど、何なの? という方は一読してみることをお勧めしたい。
    さらに詳しい内容に興味がある場合には、だいぶ物足りない内容かと思う。


    昨今、IT業界では「ビックデータ」という流行語があり、大量に蓄積された構造化/非構造化データを分析し、経営判断の高度化を目指すという一つの方向性が謳われている。これはどちらかというと、統計分析やデータマイニング、テキストマイニングといった技術を適用し、大量データ(テラどころか、ペタを超える!)を分析することと、それだけの分析を実現するためのコンピューティング環境を如何にすべきか、という論点で盛り上がっている印象。特に、IT業界人はコンピュータが好きなので、後者が熱いのかもしれない。
    一方で、ビジネス側の視点では、企業に分析スキルが備わっておらず高度な分析を実施し、業務へフィードバックするというプロセスが実現できないのではないか? という点が、この手のソリューション普及を妨げる一つの課題ではないかと考えている。それよりも、人間の頭で解決しきれない組み合わせの最適化を解決する方が投資対効果が良いのではないかと、前職でソリューションを検討していた頃に、ずっと考えていた。

    データを分析した結果というのは、鉱脈が見つかる場合もあれば、思ったほどの資源は得られない場合もある。もちろん、ORでも実時間以内に計算できない、であるとか解がないという結果になってしまうなど、検証してみなければ分からない点は多々ある。

    こうして考えてみるに、分析・最適化ソリューションというのは改めて実現して効果を出すまでの道のりが険しいな、と思わざるを得ない。とはいえ、そこを打破していくのが人間の力だし、知惠の出しどころ。難しいことを避けていてはinnovationは産まれないですし。

    実務でORに携わることはしばらくなさそうだが、引き続き、情報にはアンテナを張っておきたいと思う次第です。

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著者プロフィール

中大

「1992年 『数理決定法入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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