ブエノスアイレス事件 (白水Uブックス 63)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070635

感想・レビュー・書評

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  • やや毒母気味の詩人の母親の影響下で育ったせいで自己肯定感の低いエキセントリックな女性彫刻家グラディスと、巨根だけど正常な恋愛においてはイ○ポ、旺盛な性欲をもてあますあまり穴があったらゲイのお尻でも強姦するクソ男で美術評論家のレオポルドという男の、基本は恋愛もの。

    グラディスは自分の容姿(というか顔)にコンプレックスがあり、レオポルドがくそ男であることにも気づかない、典型的な被害者体質。ふたりが出会うまでの遍歴から語り起こされてるけれど、とにかくレオポルドがゲスすぎて読んでる間ずっとムカムカ。後半でのマリアとの会話内容も、あまりの身勝手さにずっとイライラ。こいつ早く○なないかなと思いながら読んでいたので、ラストはそれなりにハッピーエンドだったのだけが救い。

    脳内インタビュー、戯曲調、通報電話の速記メモ、対話する片方のセリフのみ等、コラージュのように散りばめられていて、手法としては面白かったと思う。

  •  1973年発表、アルゼンチンの作家マヌエル・プイグ著。サディスティックな性向の美術評論家とマゾヒスティックな性向の女性彫刻家の不毛な恋、その悲劇的な末路。各章の冒頭には映画からの引用があり、記者とのインタビュー、二者間の会話(それも片方の人物のせりふが空欄になっている)、検死解剖の報告書、速記(「人目 用心 行く 車まで」といった単語の羅列)、などの断片のコラージュが大きな比重を占めている。
     ストーリー自体は、よく考えるとかなり俗っぽくはあるとは思うし、同じ著者の小説なら「蜘蛛女のキス」の方が完成度が高いだろう。ただ本小説に関して感じるのは、あらゆる技法を用いて不毛な愛を描こうとする著者の実験的な意気込みだ。そして不思議なのは、そのような散漫とした手法を何となく受け入れてしまえるという点だ。それはおそらく映画への偏愛が作品全体を貫いているからだろう。だから俗っぽさも実験精神も一つの独特な体裁を保ってしまうのである。
     ラストシーンの視点のずらし方はすばらしいものを感じた。あくまで他人のような立場の人物の視点で描いて、主人公が移っていく気配を残しつつ終わる。上がりも下がりもせず、ずらして希望を仄めかすエンディングが好みに合っていた。

  • 歪んだ恋愛観を持つ男女の破滅的な愛の物語……だが、
    通常の叙述だけでなく、シナリオの断片や電話でのトーク、
    新聞記事などの体裁を取った文章が挿入された、
    実験的な小説。
    雑多なテクストが織り込まれた作品というと、
    ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』や、
    スタージョン『きみの血を』を思い浮かべるが、
    並べて比べちゃイカンよね。
    どんな手法を用いようとも、
    ストーリー自体に面白味がなければ意味がない、と思う。

  • 2010/1/25購入

  • せっかくだからブエノスアイレスで読もうと思って、持ってきた本。
    「トンでる・・・。ついてけない・・・。」と思いながらも、なぜか夢中になって読んでしまった・・・。本当に面白かった。意味不明な病みつき感。
    プイグって変態やわぁ。
    映画の知識があったら、もっとおもしろかったかも。

  • ある意味、人生で一番影響を受けた本かもしれない。

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著者プロフィール

1932-1990年。アルゼンチンの作家。ブエノスアイレスの大学を卒業後、イタリアへ留学し、映画監督・脚本家を目指すが挫折。ニューヨークで書きあげた長篇『リタ・ヘイワースの背信』を1968年に出版、帰国後発表した『赤い唇』(69)はベストセラーとなるが、『ブエノスアイレス事件』(73)は発禁処分、極右勢力の脅迫もあってメキシコへ亡命。世界各地を転々としながら、『蜘蛛女のキス』(76)、『天使の恥部』(79)などの話題作を発表。巧妙なプロットと流麗な語り、現代的な主題で幅広い人気を博した。

「2017年 『天使の恥部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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