僕が戦場で死んだら (白水Uブックス 106 海外小説の誘惑)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071069

作品紹介・あらすじ

1968年夏、僕は二十二歳でヴェトナムへ行った。炎暑と泥濘の中、僕らは狙撃兵の影に怯えながら行軍した。「死」は常に僕らの隣にあった…。

感想・レビュー・書評

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  • 最近読書経験が積めない。思えば、学生時代、図書室の選ばれた良書に囲まれ好きに読む事の出来た環境と、それを私に許してくれた沢山の時間はなんと恵まれたことだったろう。
    あれから何年も経った。色々な経験をした。
    それでもずっと、なぜ人は絶対に安全な場所にいる他人の指示などに従い、自ら銃と毒と爆撃の殺し合いの地へ、銃を携えて人を殺害しに行くことが出来るのか、平和な国に生まれた私には耐え難く理解しがたかった。
    それは美学なのか?愚かなのか?それとも高尚なのか。理不尽なのか、怒りなのか、愛なのか。
    戦争をドラマチックな感動作に描いたもの、英雄的行為を描いたもの、狂気、恐怖、残忍さ、リアルさを重視して描いたもの。
    でも、なぜ人を殺し、人に殺されに行くことが出来るかを答えてくれる作品は見つからなかった。

    今とても忙しい。
    繰り返す日々のなかで小さな失敗をする。
    悔しく思う。
    それでふっとこの作品の巻末の一言を思い出す。

    そして胸に想う。

    今日してしまったミスに心をくじけさせてはいけない。
    この失敗を糧にして、次こそは上手くやるんだ。

    そう思うときに私の瞼の裏をよぎる映像は、銃撃に命が消えるその時にまで、希望を絶やさず生きようと誓う意思を秘めた一人の兵士の姿で、

    時々自分のしていることがみっともなく、意味もなく、心細く感じるときに思い描くのは、
    味方を戦車で引き殺した無能な上司とは対照的に
    戦線の前で味方を守り導き続けたブロンドの隊長の頼もしい背中だったりする。

    私は未だに戦争が受け入れられない。
    でも、極限状態の中でなにもわからない状況で人がどう振る舞うか、それが実録で多種多様で入り乱れていて、状況をよくもすれば悪くもする。
    自分が見えなくなったとき、心細くなったとき、この本での人々の立ち振舞いをよくおもいだしている。

  • [ 内容 ]
    1968年夏、僕は二十二歳でヴェトナムへ行った。
    炎暑と泥濘の中、僕らは狙撃兵の影に怯えながら行軍した。
    「死」は常に僕らの隣にあった…。
    アメリカ兵の誰一人として、自分たちが何のために戦っているのかわからなかった戦争――ヴェトナム戦争の性格と、それが兵士たちに及ぼした「効果」を痛みと情熱をこめて描くこの小説は、「ヴェトナム体験」が生んだ最良の作品であり、『カチアートを追跡して』の著者の鮮烈な処女作である。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ・3冊目のティム・オブライエン。ベトナム戦争の話。
    ・最初は村上春樹が訳した「本当の~」と訳を比べながら読んでいた。やっぱ村上訳って特別なのかなって。けど、後半ではそんなの気にならなくなってた。村上春樹の訳も確かに特別だけど、ティム・オブライエンも確実に特別な作家だと気づいた。訳がどうでもよくなるほどに。
    ・オブライエンは確実に僕を糞貯めの野原に引きずり込んだ。ベトナム戦争がアメリカにどうダメージを与えたのか、知らずにいられなくなった。夜な夜なベトナム戦争の映画を観たりしている自分がいる。

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著者プロフィール

(Tim O'Brien)1946年ミネソタ州生まれ。マカレスター大学政治学部卒業後、1969年から1年間ベトナムで従軍。除隊後ハーヴァード大学大学院博士課程で政治学を学び、1973年に自らの体験をもとにしたノンフィクション『僕が戦場で死んだら』(中野圭二訳、白水社)を出版。『カチアートを追跡して』(生井英考訳、国書刊行会)で1979年に全米図書賞を受賞した。他の著書に、『ニュークリア・エイジ』(1985年)、『本当の戦争の話をしよう』(1990年)、『世界のすべての七月』(2002年、以上村上春樹訳、文春文庫)、『失踪』(1994年、坂口緑訳、学習研究社)などがある。

「2023年 『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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