ピンフォールドの試練 (白水Uブックス)

  • 白水社
3.17
  • (1)
  • (2)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 60
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071960

作品紹介・あらすじ

転地療養の船旅に出た作家ピンフォールドは、出所不明の騒々しい音楽や怪しげな会話に悩まされる。次々に攻撃や悪戯を仕掛ける幻の声と対峙する小説家の苦闘を描く異色ユーモア小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 解説が翻訳文のようでとても読みづらい。内容がほぼわからない。

  • 文学

  • 初老の作家ピンフォールド氏が船旅を始めるが、飲みすぎの酒のせいだか乱用する睡眠薬のせいだか、妄想、幻聴に取りつかれる。それが、ピンフォールドに悪意を持つエンジェル一家が、侮辱し、翻弄し、貶めようというもの。妄想の中では、船中皆がピンフォールドの敵、悪い噂が蔓延するわ殺人事件が起きるわで物騒なのだが、若い娘マーガレットはピンフォールドに惚れ込むおまけつき。ピンフォールド視点で話が進むので、「これは幻聴なのか」という疑いは一切ないまま、明らかに独り相撲だ。
    現代の病モノと違うのは…というかウォーのうまいところは、ピンフォールド氏はエンジェル一家の悪行に悩まされつつも、理知的に立ち向かい、マーガレットのハニートラップ?にも淡々と対応し、物語のおかしみに繋げているところ。冒頭でピンフォールド氏はもはや才能が枯れ果てた作家と紹介されるが、この奇妙な「試練」によって、誰のものでもない物語を紡ぐことができた。

    吉田健一訳は品があり読みやすいが、後書きが不思議なほど悪文だ。

  • 療養のために船旅に出た作家のピンフォールド氏、しかしその船上では次々とピンフォールド氏に対する中傷、いやがらせ、脅迫などが起こる。けれど敵は姿を見せず、それらの陰謀はすべて無線やラジオから聞こえてくるのみ・・・はい、非常にわかりやすく、これ、ピンフォールド氏の幻聴・妄想です。

    読者にははっきりそれがわかっているのだけれど、ピンフォールド氏にとっては紛れもない現実。しかし疑心暗鬼になりながらも、わりとおおらかに対応するピンフォールド氏のキャラクターがいい感じ。心理的には余計に追いつめられて発狂しそうな状況なのに、結構冷静に状況分析したり対策を練ったり、あんまり困憊している様子がない(むしろ楽しそう?)

    幻聴とはいえキャラ設定は作家らしくなかなか凝っていて、結果的に自分を苦しめる幻聴を自身で綿密に創作しちゃってるその矛盾というか自己完結っぷりも面白く、切羽つまった状況でもあまり深刻にならないし、吉田健一の訳も軽妙。案外あっさり解決しちゃうところも含めて、気軽に楽しめました。

  • 作家のピンフォールド氏が創作とアルコールと服薬で混乱する日々を描いている、実に見事に混乱していき逸脱して綺麗にまとまって話を閉じる。吉田健一の訳が、英国の知識階級らしい雰囲気を醸していて、ともすればバラバラで突飛な出来事をまとめている。イーヴリン・ウォー×吉田健一の見事なコラボを味わう本だった。

  • 1人の中年作家を主人公にした中篇小説。
    会話劇のような体裁ではあるが、実際のところ、『現実の会話』というシーンは殆ど無い。大半は主人公、ピンフォールドの妄想だ。
    これをホラーと読むか、幻想小説と読むか、はたまた心理小説と読むかは難しいところ。主人公にとってはたまったものではないのだろうが、妄想の登場人物は皆、妙に生き生きとしていて人間味がある。主人公も主人公でさほど追い詰められている風でもなく、作品の雰囲気は割合に明るい。
    それにしても、吉田健一訳のイーヴリン・ウォーは、『黒いいたずら』然り、『ブライヅヘッドふたたび』然り、実に面白い。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=4549

  • 今は体調不良なので、読めそうにないなぁ、、、

    白水社のPR(版元ドットコム)
    http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784560071960.html

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

イーヴリン・ウォーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×