- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560072134
作品紹介・あらすじ
血は死ぬまでおれについてまわった首飾りだ
左利きの拳銃、強盗や牛泥棒を繰り返し、21人を手にかけた殺人者にして、多くの女たちに愛された伊達者――西部の英雄ビリー・ザ・キッドの短い生涯は数々の伝説に彩られている。友人にして宿敵の保安官パット・ギャレット、のっぽの恋人アンジェラ・D、無法者仲間でライフルの名手トム・オフォリアードら、ビリーをめぐる人々。流浪の日々と束の間の平和、銃撃戦、逮捕と脱走、そしてその死までを、詩、散文、写真、関係者の証言や架空のインタビューなどで再構成。ときに激しい官能、ときにグロテスクなイメージに満ちた様々な断片を集め、多くの声を重ねていく斬新な手法でアウトローの鮮烈な生の軌跡を描いて、ブッカー賞作家オンダーチェの出発点となった傑作。カナダ総督文学賞受賞。作品の成り立ちを作者自ら振り返った2008年版「あとがき」を追加収録。
感想・レビュー・書評
-
ビリー・ザ・キッドについては、"西部劇時代の義賊的ギャング"くらいの知識しかない状態で接した本書。
「イギリス人の患者」でマイケル・オンダーチェに大変に感銘を受けて、同様に傑作であるという評判で手に取ってみた。
「イギリス人の患者」は、詩的ではあるけれども了解可能な(そして実に美しい)文章の小説であった。
一方の本作は、オンダーチェの本分、本領としての詩がメインに据えられた、詩、散文、写真、インタビューからなるコラージュとなっている。
その刺激的なタイトルから、私のようなビリー素人でも彼の所業がわかるような記述、彼を義賊たらしめるような人情エピソードなどが語られるのかと思いきや、そんなものは一切ない。
ビリーの視点で詠まれた詩、関係者の視点で描かれた、彼のごく普通の生活場面を切り取った口述、ビリーの視点で語られた、大酒を飲んで二日酔いになった日の出来事。
詩も散文も、実に内的にそして詩的に書かれているため、だいぶ了解不可能な部分も多い。
「あれ、彼が鉄砲ばんばん撃ったり悪党なのに人助けをしたりみたいなエピソードはないの?」と思いながら読み進めても、そんなものは一切ない。
そんな場面は一切出てこずに、最後は宿敵、ギャレットに射殺される場面が記述され、終わる。
おそらく、ビリー・ザ・キッドの背景知識をもう少し持っている人たちであれば、記述の一部が有名なシーンを描いているということに気がつくのかもしれないが、冒頭にも書いたとおり彼に関する知識はおよそ13文字くらいしかない私がそれに気がつけるわけもなく。
それでも不思議なのは、このコラージュを通して、彼の人となりが随分と具体的に浮かびだしてきたこと。
大部分了解不可能な詩や文章を消化した果てに残る、ビリー・ザ・キッドという人の具体的な輪郭。
傑作だと言われて「そうだね、傑作だったね」とは言えない。
面白かったかと問われたら、なんかそういう軸で判断するものじゃない気がしている(いや、面白かったけど)
でもとにかく、表現として、こういう表現の仕方があるのかと、そしてこういう表現の結果心に残るものがあるのかと感心したというのが一番大きい。
何言ってるかわからないでしょ。わからないと思うけど、気になったら手に取ってみたら良いです。
私が感じたこの独特な「センス・オブ・ワンダー」が、なんとなくわかると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017-5-2
-
ビリー・ザ・キッドの伝記と思い、
読み始めると、完全な間違いでした。
40年以上まえに書かれた作品。
1割も理解できたのか、いや、無理。 -
伝説のアウトロー、ビリー・ザ・キッドの生涯を詩とか写真とかを交えて描く、ってことなのかな。詩とかはわからんなりにハマりそうなところもあるけど、トータルとしては自分の中でまとめきれなかった。
-
単行本で既読。
-
西部劇のヒーローとして知られるビリー・ザ・キッドの生涯を描いた小説……と一口に言い切れないものがある。というのも、韻文と散文、写真などが渾然一体となって語られているからだ。
『ビリー・ザ・キッド』なる人物は確かに実在していたようだが、その生涯には謎が多く、死後も生存説などがあったようだ。特に彼について詳しくなくともオンダーチェの『語り』を読んでいるだけで楽しめる。 -
西部劇の予備知識もなかったのでビリー・ザ・キッドについてWikiで調べた。伝説的なアウトロー(ようは悪人)で21歳で死亡。パット・ギャレットやチザムも実在の人物。ヒーローとして映画化多数。
というわけで前提となるべき「ステレオタイプのイメージ」を持っていないので十分に楽しめていないとは思うが、ビリーの人生の語りなおしを、オンダーチェが、詩をふんだんに織り交ぜて行っているというアンサンブルの妙味。美しい物語の語り手というイメージがある(むしろミンゲラ監督のイメージかも!)オンダーチェは詩人でもあり、本書はゴツゴツした手触りがある。
「映画もまた編集である」というすごく面白い対談本があるが、後書きで作家が言うように、散文、詩、架空のインタビュー等を巧みに組み合わせた編集の手腕が光る。 -
書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。
http://www.rockfield.net/wordpress/?p=9383