ビザンツ帝国 生存戦略の一千年

  • 白水社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095904

作品紹介・あらすじ

民族移動の荒波のなかで生きる
 ギボンは『ローマ帝国衰亡史』で、彼のいう「ギリシア人」つまりビザンツ人の「臆病と内紛」を強調した。地図からビザンツが消えてしまった理由として、ビザンツ人に何かしら欠陥があったという認識は、今日でも残っている。多くの敵を打ち破るため軍団を整備すべき時に、教義論争や教会装飾にかまけて、政治・経済の現実を無視したというのだ。
 だが、もし本当にビザンツ人が怠惰で無気力だったとしたら、なぜビザンツ帝国はあれほど長く存続したのだろうか。アレクサンドロス大王をはじめ、カリスマ的な開祖が死ぬとたちまち瓦解してしまった支配が歴史上にはしばしばみられる。しかもビザンツは、アジアやアラビア半島から人の波が西へと移動していく、いわば「民族のボウリング場」の端に位置していた。ある集団を軍事力で打ち破ったところで、新たに3つの集団が現れた。ここでは、まったく新しい考え方が必要だったのだ。
 ゆえに問うべきは、なぜビザンツが滅びたかではない。なぜ不利な条件のもとで存続できたかなのだ――。本書は、おもな皇帝と印象的なエピソードを軸に、対外関係からビザンツ史を語る試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 東ローマにおいて、千年続いたビザンツ帝国の歴史書です。
    強力な軍を持たずに存続することができたのは、周辺に対する外交力と文化力によるものでした。
    四方を敵対的な民族や国家に包囲される状態が永年続き、信頼できる防壁と正に秘密兵器ギリシアの火によって軍事面を補完しました。
    皇帝を中心にビザンツの歴史が進行し、時代の変遷を肌で感じられます。
    しかし、ギリシア世界の予備知識があれば、更に読み進めやすいだろうと思えました。

  • 皇帝を軸としたビザンツ帝国の通史。不安定な地域で長く命脈を保つ要因となった対外戦略や、それを支えたビザンツ社会の変遷が理解しやすい。十字軍による首都陥落が致命的であったと感じさせられた。

  • 軸となる皇帝の治世を中心にビザンツ帝国の歴史を描いている。原著のタイトルは『The Lost World of Byzantium』だが、邦題の『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』というタイトルは一層、本書の内容を良く表しているように思う。繰り返し襲いかかる危機に軍事力よりも、外交、文化、宗教などなど様々な力を駆使した戦略でしなやかに立ち向かう帝国の姿が生き生きと描写されている。まさに「生存戦略の一千年」。コンスタンティノス5世を高く評価しており、また黄金期を築いたとされるバシレイオス2世の治世はその後の危機の原因をはらんでいたとして評価が厳しい点など示唆に富んでいて面白い。

  • 2018/01/21 初観測

  • 東2法経図・6F開架 209.4A/H33b//K

  • 「ビザンツ帝国は絶えず国境に押し寄せる人の波を、みずからの人的資源を強化したり、自分たちの宗教や文化に同化させたりした。」「ビザンツ帝国の最大の遺産は、もっとも厳しい逆境にあっても、他者をなじませ統合する能力にこそ、社会の強さがあるという教訓である」という末尾近くの文に尽きるという思い。それも、ここまでの350ぺージに渡る紆余曲折を経た歴史が語られたからこそ。だからこそ、1204年に始まる亡命政権自体に、自称が「ローマ人」から「ヘレネス」(ギリシャ人)へと変わっていったことは、終わりの始まりだったんだな、と。もちろん、今でいうグローバル化一本やりではなく、様々なせめぎ合い(単性派と単意派、聖像崇拝と聖像破壊、戦争と贈物外交、皇帝親征と地方貴族による防衛などなど)と使い分けが、活力を与えていた面があったのかと。そして、贈物外交が有効だった期間は、そのベースとなる経済力があったということで、経済運営もうまくいっていたのだと思う。これらが、興味深い人たち、ビザンツ人の1000年の生存戦略だったのだ、と。

  • 東2法経図・開架 209.4A/H33b//K

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著者プロフィール

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校ヘレニック・インスティテュート教授(ビザンツ史専攻)。ビザンツと西欧の関係、とくに十字軍、イタリア・ルネサンス、1453年以降のギリシア人ディアスポラを専門とする。著書は他に『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』(白水社)など。

「2022年 『ビザンツ帝国の最期[新装版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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