首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
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感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562040711

感想・レビュー・書評

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  • 刀城言耶シリーズの中で傑作との呼び声高い、第三弾。

    本書を読むために、第一弾・第二弾を読んできたようなものなので“さぁて、どれほどのものやら・・”と、ハードル爆上げで読み始めました。

    舞台は奥多摩にある〈媛首村〉。
    そこに代々続く旧家・秘守家の儀式で、一族の子供の成長・無事を願う「十三夜参り」の最中に、秘守家筆頭・一守家の双児の妹・妃女子が首無し死体で発見されます。
    その事件の10年後、双児の兄で一族の跡取り・長寿郎の花嫁を選ぶ儀式「婚舎の集い」でも、花嫁候補者の一人が首無し死体で発見されるという惨劇が再び起こってしまい・・。

    とにかく、仕掛けが満載!
    シリーズお約束の、おどろおどろしい雰囲気でホラー要素もありますが、内容はゴリゴリのミステリです。
    今回は、“首無し死体”がゴロゴロ(汗)出てくるのですが、“対象の入れ替え(首無し死体といえば、まずコレでしょ)”をはじめ、その件についてのありとあらゆる仮説が事細かに検証されるのがポイント。しかもご丁寧に箇条書きになっております。
    所謂“読者への挑戦状”的な謎解きに、“受けて立つ”タイプの頭を使うのが好きな方には、もうホクホクの面白さだと思います。
    片や、頭使うのダルいなー・・という方には細かすぎる検証が冗長に感じるかもしれません。
    とはいえ、めくるめくトリック(密室や入れ替え、叙述もあるよ!)&ロジックに、ミステリの醍醐味を堪能しまくれるのは確かです。
    で、圧巻なのが終盤の真相解明部分で、もう二転三転のどんでん返しの連続で、最後は“結局、誰が誰なの・・・?”と煙に巻かれてしまった感じで、啞然となった状態で本を閉じた私でした。
    そして、真相がわからんままな事象もいくつかあって(ex,幼少の頃の斧高の家に訪ねてきたのは一体誰だったのか?岩槻刑事の事件は何だったのか?・・等々)、その謎な部分が却ってゾクっとするような余韻となっている印象です。

    因みに、こちらは勿論刀城言耶シリーズではあるのですが、言耶はちょっとしか出てきません(言耶の登場云々についても仕掛けがあるんだな、これが)。
    で、そんな少ない登場シーンの中で、高屋敷巡査と汽車の中で遭遇した時に言耶が食いついた“山魔”が、次作『山魔の如き嗤うもの』への布石になっているよね・・ということで、こちらも読むしかないやん、と意気込んだ次第です~。

  • 自分には難読だった。ただ、これでもかという展開に単純に驚かされたので、面白かったのかも知れない。傑作と称される方が多いので、自分の読解力の無さが悲しい。
    科学が進歩した現代では、成り立たないストーリーであるからこその時代設定なんだと改めて思ったし、映像化は困難な作品だと思った。難解な漢字が所々あったので、もっと読みやすくしたら良いと思った。
    どのくらいの方が、理解しきれているのか?そもそも理解する必要はなく、理解した範囲で楽しめば良いのか?
    読み終え考察をネットで検索する気概もない。
    落ち着いたら読み直したいと思う。

  • 戦前と戦後に奥深くの山村で起きた惨劇を、およそ30年後に小説形式で記すメタ構成。何百年前の祟り伝説や土俗的風習が残る山村の一族で、跡目争いを背景に起こる殺人劇は、横溝正史の雰囲気漂う世界観。

    初読の三津田信三作品。
    事件が起こる舞台の全体像(マップ)がイメージしにくいのと、わざわざ難読漢字を使ってる文体も相まって、序盤は読み難かった。事件が起きつつ数多くの謎が処理されないまま物語は淡々と進み、頭の中ははてなマークてんこ盛りだ。終盤、それら多くの謎を一つ一つ列挙することで頭の中が整理され、ある事実をキッカケにあれよあれよと芋づる式に謎が解けていく様は爽快。さらには二転三転の背負い投げでぶん回しつつ、ゾワッと終わらせるラストは、まさしく本格とホラーが融合した着地。一本!

    週刊文春ミステリーベスト10 5位
    このミステリーがすごい! 5位
    本格ミステリ・ベスト10 2位
    ミステリが読みたい! 3位

    《刀城言耶シリーズ》
    1.厭魅の如き憑くもの
    2.凶鳥の如き忌むもの
    3.首無の如き祟るもの
    4.山魔の如き嗤うもの
    5.密室の如き籠るもの
    6.水魑の如き沈むもの
    7.生霊の如き重るもの
    8.幽女の如き怨むもの
    9.碆霊の如き祀るもの
    10.魔偶の如き齎すもの
    11.忌名の如き贄るもの

  • 文春文庫の「東西ミステリーベスト100」62位。
    読みたいとずっと思っていてやっと読めた作品。
    乱歩や横溝正史が好きならきっと好きな世界観だと思う。
    この頃の雑誌名とか文豪たちのつながりとかその辺を読んでいても楽しい。
    古い因習が残る旧家。本家の跡取り息子の花嫁候補の分家の3人。本家が娶るのは誰か?
    この辺りでもう横溝正史の世界。
    そして起こる連続殺人事件。
    何故、首は切られたのか?解き明かしがまた良かった。
    刀城言耶はあまり出てこないけれど、最後の解き明かしでは…!
    なんといっても最後のつまりこれって…?という謎かけが余韻をもたらす。

  • 「媛首村」にて、秘守家に伝わるしきたりの際に首なし死体がいくつも見つかるという惨劇が起こる。
     今作は刀城言耶シリーズではあるものの、刀城言耶はほとんど出てこない。
     なぜなら、とある小説家が昔の事件を回想した小説を、刀城言耶が編集して出したということになっているからだ。
     刀城言耶シリーズは山奥の村に伝わる因習に纏わる事件が起こり、怪異か人間によるものかわからない、というのが特徴だと思っていたが、今作でもう一つ特徴があるようだと思った。
     それは、「小説」という形態をトリックにも利用している、という点だ。
     一種のメタ構造だが、作中作、小説の外にさらに物語を作るという手は「作者不詳 ミステリ作家の読む本」などでも使われているため、得意な作風なのかもしれない。
     第一作の「厭魅の如き憑くもの」では、複数の人物が書いた日記や事件録を刀城言耶がまとめたという体にして、その上で「神の視点」の位置ででトリックを仕掛けた。
     今作は、一連の事件の遠い関係者である作家が、直接的な関係者から聞いた情報を一つにまとめた小説、という形のはずが、「作家(書き手)の途中の入れ替わり」が行われており、さらに「入れ替わり」というのは作中の2つの首なし死体事件でも重要な役割を果たしたトリックとして使われた。
     作中の事件や、いくつもの「入れ替わり」に翻弄された最後に、「怪異」か「人」か、どちらが起こしたのかわからない(もしくはどうとも取れる)事件が発生して終わる。

  • 刀城言耶シリーズ第三作。
    久しぶりに再読してみた。やはりシリーズの中ではかなり好きな作品。

    横溝正史先生と江戸川乱歩先生への尊敬の念が感じられるような内容で思わずニヤニヤしてしまう。特に江川蘭子が出てきたクダリなんて。

    『首のない死体』というテーマは『密室』と同じくらい、ときにそれ以上にソソられるものがある。
    今回はその『密室』と『首のない死体』が合体しているのだから堪らない。しかも『首のない死体』は一体ではないのだ。

    終盤の『首の無い屍体の分類』という章で解説されているパターンの中に今回の事件の場合は当てはまるのか、それとも更に新しいパターンがあるのか、とワクワクする。
    個人的にはやはり今回の事件のようなパターンが一番好き。
    一体そこにどんな真実が隠されていたのかとワクワクする。
    まさに横溝先生チックな閉鎖的な一族とその一族ならではの因習、束縛、抑圧…もう期待度が否が応でも増していく。

    ただこのシリーズの油断ならない点はミステリーとして謎解き、犯人当てで解決とはならないところ。
    読後スッキリしたい方には向かないかも知れないが、敢えてそこを狙っている作家さんだから、そこは読者もああでもないこうでもないと妄想を膨らませてみるのも楽しいかも知れない。

    しかし他のレビュアーさんも書かれている通り、果たしてこれを刀城言耶シリーズとして良いのかどうか…(これ以上はネタバレになるので書けない)。
    シリーズの次作となる作品への伏線はあるのでそこは楽しめた。

  • 刀城言耶シリーズ 第3弾!
    書き出しがイイんです。ノスタルジックで…
    登場人物が多くて人間関係がヤヤこしい。
    物語1/3くらいまで読まないと相関図が浮かばないんですよ。

    ん?…微かに…腐のカホリ…?
    と、読み始めたときは思いました。
    あまり書くとネタバレになるので書くことができません。
    何せこの作品は推理小説ですから…。

    読了して、作品評価が高い理由がわかりました。
    私も三作読んで、コレが一番だと感じました。
    このシリーズの独特の終り方が、とても好きです。
    後を引くというのでしょうか。
    話の世界観を引きずったり、思いに浸るというのではなく、
    読み終えたというのに、謎めいたものが残るというか…
    ともかく、仄かにモヤモヤしたものが残るんです。
    ので、人によっては、「スッキリ感」がないので
    ダメかも知れないです。

    そして、この作品を「刀城言耶」シリーズと呼んでいいのか。
    という事も悩みました。
    確かに「刀城言耶」は登場してますが…
    読んだ人にしかわからないのですけど。
    ココも大事なところなので詳しく書けないのがツライです。

    最初の切っ掛けとなる事件の発生が最も古いのが 首無し です。
    (たぶん)
    戦時中→戦後→昭和30年代と長い時間を経て解決(?)します。

    その間に、刀城言耶が媛首村(この話の舞台)に向かう列車の中で
    「山魔」の話を耳にして、途中下車したり
    (恐らくは、「山魔の如き…」の話だと思います。)
    媛首村を管轄に置く、終下市署管内の繁華街で
    刀城言耶の父(探偵)が登場し解決する怪事件が起こったり…
    スピンオフ的ネタがいっぱい散りばめてあります。

    一つ一つの話がどこかで繋がってたり
    本編に関係なくとも、登場人物がカブっているところなど
    あの「百鬼夜行」シリーズ(俗にいう、京極堂シリーズ)を彷彿させます。

    が、私はコチラの作品の方が色々と凝っていると思います。
    濃くて深くて読み応えがあり
    読了後も後を引く感じがホントに素晴らしいです。
    是非、読んでほしいです。

    最後に、刀城言耶と阿武隈川烏のやりとりに
    声を出して笑ってしまいました。
    陰鬱とした話の中での、このふたりの登場は、いい幕間でした。

  • ホラーに近いタイトル、表紙であるため非常に怖いが読み始めた。
    「はじめに」にでは高屋敷妙子が自分は犯人ではないと断る辺り、本格の雰囲気があって良い。

    4/24読了。とても楽しめた。名作と言える。
    作中、高屋敷妙元が読者からの推理の手紙には「首」とつく部位の不調を訴える言葉が多く添えられていたと言うが、僕自身も今朝首を寝違え、そのタイミングでこのページを読んだものだから震えた。こんな偶然あるものなんだな。同じ体験をできた人はすくないんじゃないだろうか?

    一守家の性別をカネばぁが偽って伝えたことは想像できた。ただ、13まいりの時にヨキタカが3人見ていることから、この推理は除外し、三つ子だったのだな、と思った。23まいりの蘭子と鞠子の入れ替わりは想像通りだったが、蘭子が男だとは思ってなかったので、男の死体が謎だった。

    最後はあらかた思った通りの展開。きっとヨキタカだろうな、とおもった。ややアンフェアと感じる人もいるかもしれない。個人的にはヨキタカ犯人説よりは、コウジ&鞠子説を推したい。最後の連載目次からもヨキが復讐のために行ったのだと解釈できる。

  • シリーズ一冊目が挫折したのでこれもなぁ…と思ってて、実際はじめはイマイチのれなかったのですが、途中から気になってきて最終的にはどんでん返しが面白かった。そうなるとは!ちゃんとミステリ的オチでびっくり。

  • 刀城言耶シリーズ3作目。
    でも、刀城言耶は少ししか出て来ないです。
    今まで読んだ2作品と同じで、前半はちょっと読みづらい。
    後半・・・というか、最後になってバタバタと謎解きが始まるのだけど、このシリーズで面白いのは何通りかの推理が披露される事だと思う。
    このおかげで、物理的に成り立っているからと言ってその推理が真実とは限らないという基本的な事実を再認識する事が出来るのがいい。
    いくら推理が真実に近くても、すべてを明らかにする事は出来ないだろうな、と思わせてくれる。

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著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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