ハンチントン 軍事と国家 上

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562041916

作品紹介・あらすじ

近代国家における政治と軍事の関係を理論化し、ミリタリー・ポリティクスという新しい学問分野を開拓した先駆的著作。健全なシビリアン・コントロールのあり方と、そのもとでの軍人の行動と限界を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 政軍関係の古典。
    政軍関係の類型化、国内一般の社会的価値観やイデオロギーが政軍関係を規定するといったシビリアンコントロールの理論を、将校団のミリタリープロフェッショナリズムという概念と政軍関係の歴史を用いて説明しようとする。

  • 国際政治学者ハンチントンが、政治と軍事の関係について述べたもの。著者が1956年に書いたものを、1978年に日本語に翻訳出版したものを、2008年に新装再出版している。上巻ではまず、軍隊や軍人について歴史的に分析している。主として米国軍隊についてであるが、ドイツ軍、日本軍について、国内でどのように位置づけられていたかを明らかにしている。日本軍については、やや一面的で極端な分析であるように感じた部分あり。

    「シビル・ミリタリー・リレーションズの理論を扱った代表的な著作として、L・スミスの『軍事力と民主主義』と並ぶ文献である」p2
    「平和な時代には、どんな制度でも間に合うであろう。しかし危機に機能しうる制度のみが生き残る(J・F・ケネディ)」p4
    「軍人という職業の知的内容が近代の将校にかれの専門的職業生活の約1/3を教育に充てるよう要求し、おそらく他のどんな職業におけるよりも実務に対する教育期間の比率を高くするよう要求する」p14下
    「軍事技能をマスターするには、一般文化についての広範な素養が必要である。歴史のある段階における暴力の組織化と適用の方法は、そのままその社会全体の文化の類型と関連している」p15上
    「もしかれがただ単に職業上の業務に慣れるだけでは、自己の分析的技能、洞察力、想像力、判断力等を発展させることはできない」p15下
    「軍人は、常に政治家に従属するものでなければならない。戦争の指導というものは、政治家の責任である」p57下
    「戦争は、不確実性の領域である。戦争における行為が基礎としている事柄のうち3/4は、多かれ少なかれ不確実性の霧の中にかくされている(クラウゼヴィッツ)」p63
    「イギリス艦隊は、ヨーロッパにおける最良の調停者である(ネルソン)」p66
    「軍人は、通常、向こうみずな、攻撃的な、好戦的な行動に反対する」p68下
    「通常は、軍人は確信をもって将来を予測することの不可能なことを認識している」p69上
    「軍人は、めったに戦争に賛成するものではない」p69上
    「軍人は、戦争を恐れる。彼は、戦争に備えることを欲する。だが、彼は戦争を行う用意がこれで十分だとは決して思わない」p69上
    「軍人は、いつも戦争好きの文民の犠牲になっているのだと考える傾向がある。戦争を始めるのは、国民であり、政治家であり、世論でありまた政府である。それらに対して戦わなければならないのは、軍人である。軍人ではなく文民の哲学者や政治評論家や学者の方が、戦争を美化するものであり、戦争の礼讃者であった。軍隊自体は、戦争を引き起こすことはない」p69下
    「軍隊の内部では、専門的能力という理想からみた軍人としての忠誠のみが、不変的で一様性をもったものである。良き軍人の、理想への個人の忠誠、最強の部隊の伝統と精神に対する各人の忠誠だけが、不変的で一様性をもったものである」p74上
    「軍人倫理は、軍事専門職業の見地からすると悲観主義的で、集団主義的であり、歴史主義的傾向をもち、権力指向的で、国家主義的であり、軍国主義的で平和主義的である。要するに、それは、軍隊という専門的職業の見地からすると道具主義的なもの(instrumentalist)である。それは現実主義的で保守的である」p79
    「自由主義の本質は、個人主義にある」p90下
    「(ナチスドイツ)ナチ支配は、軍人の警告が顧みられず、政治指導者が軍人に対していばりちらす時に破滅的な結果に終わることを示している」p99下
    「欲求と悲惨、病気と災害と戦争、これらすべては人間の運命と本性に常につきまとう要素である(モルトケ)」p101下
    「(ドイツ・一次大戦)戦闘が将軍たちを英雄に変える。その英雄たちが政治家に変る。その結果は、専門職業的な軍人の抑制と慎重さの喪失であった」p107上
    「ナチスは、臆病で慎重すぎる将官連中を軽蔑した」p116下
    「アメリカは世界におけるアマチュアの国家としては一等国である(ウッドロー・ウィルソン)」p151上
    「民主主義は真のミリタリズムに対しては執念深い敵対感情を持つ」p253下
    「(フィスク提督)わが国の海の守りはわれわれの職務であって、議会の職務ではないことを想起しよう」p255上

  • 前半部の一般化したシビリアンコントロールを論じた部分はかなり面白い。客体的シビリアンコントロールって概念とか、政府や国民気質なんかとシビリアンコントロールの在り方の関係とか、あとは日本とドイツの第二次大戦前の政軍関係の分析が面白い。ただ後半は米国における政軍関係の分析になっちゃって、初めて知ることもいっぱいあったけどそこまで面白くはない。下巻も読まんかも。

  • 政軍関係研究のはしり。時代を感じさせる記述も若干あるものの、分析は秀逸であり未だ必読文献。

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