オットー: 戦火をくぐったテディベア (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
- 評論社 (2004年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
- / ISBN・EAN: 9784566008007
感想・レビュー・書評
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第二次世界大戦の戦火をくぐり抜けたテディベアの視点で、その半生が綴られる。
テディベアの目を通すことでさり気なく、しかしリアリティも持って戦争の残酷さが表されている良本。
トミー・ウンゲラーが比較的晩年に書いた作品で「子供たちに戦争のことを伝えたい」と執筆したらしい。
(引用)黄色い星は、デビッドがほかの人とは「ちがう」ことをあらわす印でした。でも、ぼくからすれば、人はだれもが同じ「人間」なんですけどね……。
戦争というのは、人の人種差別観に訴えかけ、分断と仮想敵を作り出し、戦わせるものである、と言う趣旨の説明に最近触れた。そのことをよく捉えていると思う。
しかし、黄色い星側に分類されたデビッドも、分類されなかったオスカーも、戦争では同じような辛い目に合う。結局戦争は、「人間」にとって等しく悲劇なのである。
「リアリティ」を持って描写される戦闘シーンはかつてウンゲラー少年がアルザスで実際に目にし経験した体験だと思うと切ない。
戦争を主題に扱いながらも、心温まるストーリーにしたてているのはさすが。ウンゲラーらしい細部も…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こちらもまた、ウンゲラーさんが平和を願って書かれた本。
表紙のテディベアの名前が「オットー」で、このお話の語り手。
ウンゲラーさん自身も戦争の体験者だからか、戦闘場面も登場している。
そこがなかなかの恐怖で、小さな子向けではない。
でも想像以上に良いお話で、特にこの結末はとても納得が行くもの。
展開がドラマチックで、表紙絵の若干の怖さは中盤で忘れる・笑
ドイツの工場で生まれた本物のテディベア。
デビットという男の子の誕生日プレゼントとして買われ、オットーと名付けられる。
デビットの親友オスカーとともに3人。楽しい日々を過ごすが長くは続かない。
デビットはユダヤ人だったため、強制収容所行きとなってしまう。
残されたオットーは、無事に生き延びられるのか・・
数奇な運命を生き続ける中で、オットーの身体にはいくつもの傷がついていく。
自分の人生さえ自分で選ぶことも出来なかった時代の話だ。
まして小さなテディベア。哀れさがひときわだ。
その果てにあった、ラストの奇跡的な再会には、まさかと思いながらやはりじわっとくる。
この物語を書こうと決めたオットーが、タイプライターに向かっている場面で終わる。
これまでの流れがあるだけに、この可愛い姿で胸があったかくなる。
シャツにネクタイで、眼鏡をかけたオットーだ。
「平凡だけど平和な人生。ゆったりと流れる時間。」
それが手に入れられただけでも素晴らしい価値があるということを、改めて教えられる。
「本物のテディベア」という表現が何度か登場する。
でも、心から愛したものは出自がどうであれみんな本物。
だからデビットも忘れなかったのだろう。
読み聞かせにこの本を使うのは、私には先ず無いと思うが、読むなら高学年向けかと。
約12分。絵は遠目が利いて、骨太のストーリー。ブックトークにもお勧め。
(ウンゲラーの他作品はカテゴリーの下の方「トミー・ウンゲラー」からお入りください) -
小学4年生の国語の教科書で紹介されている。
ナチスの政策、第二次世界大戦で戦火に飲まれたドイツの街、アメリカ軍兵士と共に海を渡るテディベアのオットー。そこでも紆余曲折あって、最後にオットーの持ち主のユダヤ人デビッド、親友のオスカーが再会を果たす。
「平凡だけど平和な人生」を取り戻した3人。平凡だけど平和な日常を奪っていく戦争。決して戦争しないぞ!という決意を呼び起こしてくれる本。 -
戦争の理不尽さや恐ろしさ
生き抜いた人々の苦しみも
テディベアの繋いだ縁に救われる -
デイビットとオットーの親友2人とテディベアの戦争に翻弄された物語。
デイビットは強制収容所で家族を失い、テディベアは戦火のもと米兵の命を救い米国へ。オットーも戦争で家族を失いますが米国の骨董品店でテディベアを見つけます。デイビットとオットーとテディベアようやく一緒に暮らせる日々が訪れます。 -
テディベアの目線から、戦争について語られている。
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小学4年生の国語の教科書に載っているらしい。
戦争の悲惨さと、人の繋がりを感じさせる本だった。
戦争の絵はよく見ると結構残酷で、小さな子に見せて良いのか迷うところではあるが、真実を伝えるためには必要なものなのかもしれない。教科書ではどうなっているのかな。
とはいえ、良い本だった。 -
中:1月27日ホロコースト犠牲者を想起する国際デー
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幸せな時は長くは続かない。テディベアのオットーは、持ち主の男の子と楽しい毎日を送っていたが、戦争がふたりをひきさいた。そして、数奇な運命が待ち受けていた。
(『キラキラ子どもブックトーク』玉川大学出版部より紹介)