型破りのコーチング (PHP新書 645)

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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569774770

作品紹介・あらすじ

はたして基礎は重要なのか-有無を言わさず型にはめたがる日本的指導法。しかしそれでは一線を越えた創造力ある人材が育つはずもない。職場の息苦しさはどうすれば解消できるのか?日本ラグビー界の牽引者が語る現場の理論を、企業研修でも人気の経営学者が解読。見えてきたのはコーチングの常識を覆す教訓の数々。「指示待ち部下は上司がつくりだしている」「自分の教え方の前に相手の聞く力を高める」「やる気は裏切りから生まれる」…。「やらなければならない」から「やれる」「やりたい」へと人を導く法。

感想・レビュー・書評

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  • 型破りのコーチング
    著:平尾 誠二
    著:金井 壽宏
    PHP新書 645

    良書 わかりやすかった
    卓抜した指導者とは、平易な言を用いてコミュニケーションを行う達人でもあるということです
    そして、相手の立場、チームの立場に立って良く見ていると思います

    気になったのは以下です

    ・名選手必ずしも名将にあらず

    ・いままでできなかったことができるようになったときに、わがことのように喜ぶのが、もっともポジションなコーチングだとの持論があるようなのです

    ・一流の人はスポーツの世界にかぎらず、ほぼ例外なく、自分のアンテナに引っかかることについては恐ろしく研ぎ澄まされた感性と、経験から蒸留された自分なりの考えをもっています

    ■型を教えてもメンタルは育たない

    ・ぼくが見ていると、守・破・離の「守」で終わってしまっていて、その次の段階に到達できていないケースが少なくありません

    ・わからないことでもわかったような顔をしてしまうような選手は、決して一流にはなれません

    ・ゲームで必要なのは、状況を切り拓くイマジネーションに富んだパスなのです

    ・決めごとをふやすことで、壁をつくってしまっている
     日本の、とくに古いタイプの指導者で、こういうことに気づいている人はほとんどいません

    ・苦しいときに逃げ出さず、頑張ってしばらくそこに踏みとどまらなければわからないことは、どんな世界にも絶対にありますから
     目の前の困難に立ち向かう意思の強さもなく逃げ回ってばかりいたら、自分なんてどこまで行っても見つからないんじゃないのかな

    ・メンタルタフネスは、ハングリー精神と重なる部分がかなり大きいのでしょう。

    ・ただし、ハングリーでメンタルタフネスだけあっても、それだけで強いチームがつくれるわけではない
     たとえば、ゲームへの集中力は絶対に必要ですし、絶対い勝つのだという強い意思がなければ集中力は持続できません。
     ゲーム全体を俯瞰でとらえる目をもっていることも大事なのです

    ■日本の組織では「自律ある個」は生まれないのか

    ・ピッチャーが一球投げるたびにプレーが止まったり、攻撃と守備がイニングの表と裏で入れ替わったする野球と違って、ラグピーやサッカーはプレーの連続性が高く、瞬時に状況が変わるからです

    ・ぼくは、「チームワーク」ではなく「チームプレー」というようにしています
     これは仕事じゃないよ、遊びなんだって
     遊びだからこそ必死になれるのです
     遊びは真剣に取り組まなければ成立しませんからね

    ・人間が何ものかを達成したいとの気持ちをもつのは、神のエージェントという意識がどこかにあるからだというのがエージェンティックの意味です
     しかし、たんに神の代理人として頑張りつづけるだけなら、やがてその人は、あたかも、自分が神のようにふるまうがん細胞に堕してしまう
     そこで、コミューナルという共同性が必要になってくるというのです
     これってまさに、イーチネス、関係性のなかに存在する日本型の個そのものじゃないですか

    ・ぼくも日本的なやり方、考え方のなかにもいい点はたくさんあるし、そういうところは、どんどん生かすべきだと思います
     ただ日本の組織がもっている窮屈さ、やはりこれだけはなんとかしたい
     どうしてそうなってしまうかというと、日本には「やらなければならないこと」が圧倒的に多いからです
     組織だけでなく社会全体がそうじゃないですか

    ・マクレガーは、仕事なんておもしろくないという前者の理論をX理論、
     後者のやりようによっては仕事も趣味のように楽しめるとの理論をY理論、と読んでいます

    ・イヤでも「やらなければならないこと」をアメとムチを使ってでもやらせるのがX理論で、
     仕事であっても「やりたいこと」なら進んでやるはずなので、仕事そのものを楽しんでもらったらいいと考えるのがY理論です

    ■コーチングの通説を疑え

    ・リーダーシップやコーチングの確固たる持論があって、なおかつそれを言語化することに自覚的な人は、日本には、ほんとうに少ない

    ・教えることに興味があったというより、それ以前にゲームに勝ちたいという思いが、とにかくぼくは強かった

    ・すでに定着している理論や教え方が必ずしも正解ではないということでした
     すでにセオリーとして定着していることであっても、それをそのままやらせるのがいいかといったら、そんなことはまったくないのです
     まずは指導者がそれを検証し、もっと適切なものはないかと自分の頭で考える
     そして自分なりのセオリーを構築し、それが常識と違っていたなら、「ぼくのセオリーはこうだ」と相手のわかる言葉や理解しやすい言い回しで伝え、納得するまで選手にも考えてもらうのです
     それなしに「俺の言うとおりにやれ」とパス練習をやらせても、絶対にその選手のパスはよくならないし、チームも強くなりません

    ・一方的に教えるだけでなく、選手にも考えさせる

    ・ぼくは自分がつねに正しいなんて思っていません
     まちがっているんじゃないか、もっといいやり方があるはずだといつも疑っています
     だから、選手と議論になるのはむしろ大歓迎
     それでさらにうまくいく道が見つかれば、それはぼくにとってもチームにとっても望ましいことなのです

    ・そのためには、コミュニケーションを円滑に行えなければなりませn
     持論は、言語化したほうがいいというには、そういう意味もあるです

    ・必ず疑ってかからなければならない
     それで常識や伝統に則ったやり方よりも、こちらの方がチームの強化につながると言えるものが見つかれば、ぼくは迷わずその方法を選択します

    ・人と同じことをやってうまく結果が出ないなら、ぜんぜん違うやり方を試してみるのは、非常に理に適っていると思います

    ・一見すると常識外れで型破りのようであっても、ドラム演奏のポイントと、それを習得するための方法が、そこではきわめて厳密に語られている
     だから門外漢にも通じるのです
     これにくらべたら、一流の演奏を見て学べというような教え方が、いかに不親切で乱暴かがよくわかります

    ・教えるとは、納得させ、行動を変えさせ、さらにその行動をこれから先もずっと続けさせることです
     一人の人間にそれだけの変化を起こさせるためには、教えて側の言っていることに心の底から納得してもらう必要があります
     それを言葉でやろうというのですから、相当なインパクトのある表現でなければダメだということです

    ・要するに、人間は感情の生き物なので、それぞれの感情をうまくコントロールしちかないと必ず衝突が生まれ、最悪の場合はチームが空中分解を起こしてしまう

    ・本来、年齢はリーダーとしての適性や資質にはあまり関係ありません

    ・チームの基本に伝統があるのはいいと思うのです
     でも、優勝なら優勝というチームの目標があって、そこに最短距離で到達することを考えたとき、要らないものやムダなものがあったらそれはなくしたほうがいいし、もっといい方法があればそちらを選ぶできでしょう

    ・ぼくは、基本的に「やめちゃえ」主義なので、ムダと思ったことはどんどんやめて、新しいやり方を採り入れるようにしています

    ■だれもついてくるリーダーシップ

    ・どうして監督と選手の意見が異なるのでしょうか
    ・監督がつねにチームにとって最善の手は何かを考えるのに対し、選手は個人的な人間関係や感情のほうを、しばしば大事だと考えているからです

    ・実際、名監督と言われているような人たちは、類まれなバランス感覚の持ち主というよりも、アンバランスをものともしない人のほうが多いと思いますよ

    ・いちばん難しいのは立ち位置です
     選手との距離がキャプテンと監督とではまるで違うのは、やってみてすぐにわかりました
     では、監督と選手はどの程度離れて立てばいいかといったら、この感覚がなかなかつかめないのです

    ・気がついたらあの人ののおかげだった、とメンバーから思われるような人こそが、究極のリーダーなのだと彼は言っています

    ・リーダーシップには、課題を達成するための構造や集団をつくるのと、チームスピリットを高める二つの面があります

    ■コミュニケーションの新発想

    ・選手が思うように動かない、成長しないというときは、教える側の理屈や理論が原因というより、むしろ教えられる側の理解力や消化力に問題があるケースのほうが圧倒的に多い
     これはまちがいありません
     ですから、コーチングとは教える側の発信機ではなく、いかに教えられる側の受信機の制度を高めるかがポイントではないかと思うのです

    ・コミュニケーションとは、「言う」ではなくて、「伝える」、それも「相手が納得してくれるように伝える」ことなのですから

    ・コーチの自慢げな顔は、教わるほうの受信機の精度に悪くするということだけは、彼らからイヤというほど学びました

    ・コーチのアドバイスには3つのポイントがあると思っています
     ①教えることを1つか2つにしぼり、できるだけ簡略化して伝える
     ②頑張ったらできる事しか言わない
     ③それができたら状況が激変したことを、必ず本人が実感できる

    ・どこの企業も内部には、それこそたくさんの暗黙知が蓄積されています
     問題はその暗黙知の継承の仕方です
     本来であれば、その暗黙知を言語化し明白な形式知にする
     いわゆる知識創造のリサイクルモデルの構築が必要だったのに、どういうわけか日本では、それがなかなか進みません

    ・最初から適材適所というより、選手に正しい情報と判断基準を与え、結果としてそれが、チーム内での適材適所につながるほうが、ぼくはいいような気がします

    ・モチベーションをくじくようなことを、コーチは絶対やってはいけません

    ・うぬぼれや、錯覚と無縁の選手はいません
     自信をもつことはいいのですが、自分の実力の過大評価は、その選手の成長を妨げる要因になりますから、「ここは自分で思っているほどできていない」「この技術ではレギュラーにはなれない」と、できるだけストレートに伝えてます、ただし、それだけだと選手には絶望感しか残りません
     そこで、「お前は気が付いていないだろうけど、この部分にはすごい可能性がある、そこをこうやって磨いたらどうだ」という話を必ず、セットにしてするのです
     そのためには、日頃から、この選手の長所はどこだと探すつもりで、一人ひとりの選手を見ている必要があります

    ■やる気は裏切りから生まれる

    ・いちばん重要なのは、自分は何をしたいか、を自覚することだと思います
     そして、その、したいこと、と、しなければならないこと、をいかにして近づけるかがポイントです

    ・意味を理解させるかどうかで、選手のモチベーションや成長の度合いは格段に変わるのに、この意味の重要性をわかっている指導者が、日本のスポーツ界には明らかに少ない

    ・教育には、教える、と、育てる、の両面があるのに、日本には、教師はいても、育師がいないと嘆いておられました

    ・根性は無意味なことをやらせたらつくものではなく、意味や目標が明確になれば、勝手にどんどん出てきます
     忍耐力だってそうです

    ・意味がないことより意味があったほうが、選手は絶対におもしろいし、やる気も出るのだから、教える時意味は絶対につけろと、後輩にもいっています

    ・コミュニケーション能力を高める一番簡単な方法は、相手の立場に立つこと

    ・目標だけでなく、その目標はこうやって達成するんだというところまで見せなければ、人は動かないというのはそのとおりです

    ・いままで普通にやってきたことを、深く真剣に考えることが、選手のモチベーションを上げることにつながるのです

    ■最強のチームをつくる

    ・どの情報が必要で、どこが必要でないかは、コーチが教えるというより本人が経験を重ね、そこから自分で学び取っていくものだと思います

    ・強くなりたい、勝ちたい、そのためにどうしたらいいかと考えたら、伝統や常識にこだわるより、自分でいろいろ試してみて、いちばん効果がある方法を選んだほうがいい
     そして、それを選手に伝えるには言語化が必要だと思うからそうしている、ただそれだけなのです

    ・あいつがミスしたから負けたとか、あいつが、あんなパスをしなければ勝てたとか、責任のベクトルが他人に向いたとたんに、その人の成長はとまります

    ・つねに、自分のできることを全員が考えているチームくらい怖いチームはないと思います

    ・コーチングのやり方がどうというより、自分なりの哲学や方法論に裏付けられたリーダーシップをつくりあげ、結果を出すことこそが重要だと教えてくれます

    目次
    まえがきに代えて ――言葉にする力 金井壽宏 
    第1章 型を教えてもメンタルは育たない 
    第2章 日本の組織では「自律ある個」は生まれないのか 
    第3章 コーチングの通説を疑え 
    第4章 だれもがついてくるリーダーシップ 
    第5章 コミュニケーションの新発想 
    第6章 やる気は裏切りから生まれる 
    第7章 最強のチームをつくる 
    あとがきに代えて ――強いチームには「湿り気」がある 平尾誠二

    ISBN:9784569774770
    出版社:PHP研究所
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:700円(本体)
    発売日:2010年01月05日第1版第1刷

  • 平尾さんと金井さんのリーダーシップ・コーチング論。
    お二人とも神戸にゆかりのある方で神戸で育った私は大好きですね。

    いくつかフレーズを抜粋。

    自分のことが好きで、自分にプライドがあれば、
    だれかがミスをしても、自分には何が出来るかという思考になる。
    これは一人ひとりがリーダーシップを発揮するということですから、
    こうなったらその組織は最強ですね。

    好きでたまらないか、やりがいを感じているか、
    少なくともやっている意味がわかっている人間でないと一流になれない。
    そして、そういう人間だけが集まれば日本一になれる。

    教育には「教える」と「育てる」の両面があるのに、
    日本には「教師」はいても「育師」がいない。
    極端な言い方をすれば、やり方を教えるだけで
    質問はさせないのが日本の教育なのです。

  • ラグビーコーチの平尾さんの考え方に触れる最初の一冊として良かった。
    教育で教師はいるけど育師は?

    わがことのように喜ぶのがもっともポジティブなコーチング。
    強い組織には強い個が必要。
    状況判断ができる自立した個人を育てるべき。
    連帯責任は得てして無責任につながる。
    個人を指名し、その人が使命感を感じて反応する関わり合い。
    攻守が常に入れ替わるゲームでは、現場の裁量権を思い切って与える方が強いチームができる。
    チームワークではなくチームプレー。
    鬼ごっこがなぜ楽しいのか?誰もが真剣だから。→楽しい鬼ごっこのように夢中になって生きていたいなあ。
    他者との関係があって初めて存在する日本の個人は決して特殊ではない。
    マネージャーの持論がそのまま反映されて職場ができる。よって、マネージャーは自分の持論を常にチェックする必要がある。
    必ず疑ってかかる。
    教えるプロに年齢はない。
    リーダーの第一条件はアクティブリスニング能力。
    発信機ではなく受信機の精度を上げる。
    コーチングのスキルには二種類ある。教え方と受け手の聴く能力の向上。
    相手の受信機を高めるために自分の受信機を高める。
    コーチのアドバイスの三つのポイント。ポイントを絞って簡略化して伝えること。頑張ったらできることしか言わないこと。できたら状況が激減したことを実感できること。
    モチベーションに関しては、何をしたいかを自覚すること。そしてしたいこととしなければならないことを近づけること。
    吉野家の安部社長。金銭的な報酬よりも感謝の実感の方が仕事のモチベーションを上げる上で重要。
    意味を伝えられない人はコーチになれない。
    働く動機なんて十人十色。
    あらゆる組織に通用する普遍的なリーダーシップなどない。



  • 反応速度
    日本人はこれが遅いそうです。
    たしかに息子のプレーを見ても自分の仕事を思い出しても誰かがやってくれるやろって一瞬が遅くなることがあります。
    これは傍観者効果と言うそうです。

    反応をよくする
    やっぱり受ける方が受け入れやすく伝えることって大切ですよね。
    コーチングは相手の受信機が受け入れる周波数で投げてやらないと受信してもらえません。
    これは送信側の工夫なんですよね。

    僕自身またラグビーに携わりたいなと思いますがコーチは本当に難しいと思います。
    良かれと思ってやっても伝わらないこともありますし。
    相手の耳ではなく心に届かないと意味ないんですよね。
    コーチも日々精進やなと思います。

  • 傾聴。
    チームのビジョンとメンバーのビジョン。
    人なので、自ら考えて試す、
    様なキッカケをひとつ示唆。

  • 相手側の受信装置に敏感になること。こちらの発信機ばかり強くしても解決にならない。(平尾さん)

  • 教える相手の受信器の精度を高める。そのためには、教える側の受信機をまず高める。守破離。チームのビジョンと個人の目標が共有できるような「湿り気」のあるチームを。

  • 自分の言葉で端的に刺さるように動かすコーチングスキルの重要性。

  • 自分の考えを言語化する大切さ

  • ラグビー日本代表監督の平尾氏へのインタビューをまとめたような作りの本。

    「個の弱さを組織力で補うという発想では世界では勝てない。強い組織には強い個が必要である。」
    「精度の高い技術だけではなく、状況判断ができる自立した個人を育てるべき」

    すぐに読める本なので、たまに読み返すが良し。

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著者プロフィール

元ラグビー日本代表監督、元神戸製鋼ラグビー部GM


「2017年 『生きつづける言葉 情と知で動かす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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