- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569802817
作品紹介・あらすじ
著者は、日立電子時代にミニコンの技術者として働き、米国DECの日本法人に移ってからはセールスとマーケティングを担当。さらに、インフォミックス、ノーザンテレコムジャパンなど、外資系IT企業の日本法人の代表取締役社長を歴任し、最後にグーグル米国本社副社長兼日本法人の社長としてグーグルの日本での基礎をつくる。それからの経験を元に「どうすれば食っていけるのか」「どうすればいい仕事ができるのか」といった若い人たちの切実な悩みに対して、先輩ビジネスパーソンとして熱いメッセージをお届けする。
感想・レビュー・書評
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Google日本法人社長などを歴任された著者による働き方を指南する一冊。10年以上前の著書になります。
最初から終了直前まで、著者の半生を紹介しながら、そのときの決断した理由や背景が語られており、少し期待はずれな印象でした。
残り2章あたりで、当時のアメリカと日本の現状を比較し、問題点の提起と解決策を述べています。10年前の内容とはいえ、雇用に関する状況はほとんど変わっていない状況に驚くとともに、わずかながらでも理想とする方向に進みつつあることを感じます。雇用の確保を優先するとはよく聞かれましたが、その意味を1つの会社に囲い込むことではなく、雇用の流動性を確保することで、社会全体として雇用を確保していくのは必要な考え方です。コロナと少子高齢化による人材不足により、図らずもその方向に動いている感じもします。
著者の言う「一生食べられる働き方」というのが東大で満足せず世界を目指す、くらいにしか感じられなかったので、働き方の話というより、日米比較で感じた社会制度の改革の話、といったほうがいいのかもしれません。
▼自分の部下に「会社を踏み台にしなさい」とよく言うようになった。会社を軽視せよということではなく、職務経歴書を飾る材料を遠慮なく会社からもらえという意味
▼経済にはトレンドがあるので、社会的役割を終えた企業が消えていくのは健全なこと。斜陽の会社が消えることで、優秀な人材が放出される。そして、新しい成長分野に人材が供給される。
次々に会社がつぶれ、リストラが繰り返されても、人材が新たな成長企業に移っていく道さえ確保さrていれば、全体としてみれば雇用は維持され、経済全体のダイナミズムも保たれる。
▼雇用の流動性が確保されていないのは、日本にとって非常に大きな損失だといわざるをえない。日本では企業が正社員を解雇することは事実上不可能になっている。
雇用の流動性がないなかで雇用を維持するためにはどうするか。役割を終えたゾンビ企業を生き残らせ、むりやりそこに人材を閉じ込めておくしかない。そのためには公的資金も注入しなければならないし、おかしな規制も横行することになる。なにより、ゾンビ企業のなかで優秀だったはずの人材が腐っていくのが最大の問題
▼「転社」を当然のことと考え、会社任せでなく、自分でキャリアをつくっていくという考え方が浸透すれば、現在の日本社会に漂っているなんともいえない陰鬱な空気も晴れていくのではないか。いくら景気が悪い、失業率も上がっているとはいっても、年間三万人も自殺者が出る日本の状況は明らかに異常
▼日本人もアメリカ人にとってのキリスト教のような「垂直方向の軸」を持てれば、たとえ経済状況が厳しいままだとしても、自殺者も減るだろうし、社会全体の空気も明るくなるだろう。だからこそ、会社から離れた専門職としての安定感を手に入れていくことは、日本人にとっては非常に重要ではないか。
▼日本の教育を見ると、先頭集団にいる子どもたちをエリート候補として後押しするどころか、むしろ足を引っ張っているように見受けられる。そもそも、最大の問題は、日本のエリート候補の教育が、最終的には東京大学に入学することを目標にしてしまっているところ
▼日本の教育のもう1つの問題は、年齢による制限をしてしまうこと
▼現在の日本の教育制度は、若い才能、頭脳に足かせをはめて、わざわざ可能性をつぶしているようにしか見えない。
<目次>
第1章 明日の食料に戦慄せよ
第2章 セールスを愛したエンジニア
第3章 自分の強みを活かす
第4章 成長する企業、消えていく企業
第5章 リスクを取れ!そうすれば変化がついてくる
第6章 あなたは世界をイメージできるか詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大局観的には興味深い内容ではあるが、肝心の自分の見つけ方が不明瞭。
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グーグルの元日本法人社長の村上憲郎さんの本。
「大局観」を持てるようになりたいと思った。目先の仕事も世界とつながっている。未知の分野に出会ったら首を突っ込み、疑問を解消してく事の大切さ。そうして無理にでも視野を広げる事が大局感を身につける事にも繋がっている。
著者は、「食うため」に目の前の仕事に必死に食らいつくことと、頭の中で世界に思いを馳せる事を行き来しながら仕事をしてきたとの事。 -
Googleの社長も努めた経験のある著者の一冊。
処世術というよりは著者の自叙伝・回顧録という感じ。 -
村上憲郎著「一生食べれる働き方」PHP新書(2012)
*98年に日本がITバブル期を迎えたときには、通信網が急激に整備されて行きました。バブルはこの通信回線の価値が謝って評価された所に生まれたのです。
*ハイエクは正義について語るとき、あくまで身の丈から出発することを重視します。自分の利益、自分の家族の利益、会社の利益、自分の地域社会の利益、と自分の同心円上で私利私欲で行動すれば良いというのです。私欲から出た行動は、決して本人だけを利するわけではありません。市場を経由することで社会全体の利益につながるかるです。ということは、自分のためにお金を稼ぐ事が最終的には最貧とよわれる10億人の生活水準を周防氏でも良くして行く事でもある。ハイエクは私欲を援護するのです。
*プラザ合意以降、20世紀最後の十数年で、日本経済は急激な栄光盛衰を経験した。そのなかで、マンキューの経済学に出会い、ハイエクからは経済人としての倫理的根拠を学んだ。
*経済にはトレンドがあるのですから、社会的役割を終えた企業が消えて行くのは健全なことです。斜陽の会社が消え、優秀な人材が放出されます。そして新しい成長分野に人材が供給されます。そう考えるとこようの流動性が確保されていない日本は非常に大きな損失です。日本経済の活力を取り戻すためにこれからのビジネスマンは雇用の流動性を受け入れながら遣って行くしかないと思います。リストラされることや会社がなくなることを普通の琴として受け入れ、転社しても通用するプロとして独自にキャリアを積み重ねて行く。それは本当の意味で安定した立場を手にしれることなのです。
*変わるためにはどうすればよいか。それはリスクをとること。どんな小さな事でもかまわないので、仕事のうえであえてリスクのある選択肢をえらんでみる。可能な限りリスクテイクするという習慣をつけていくのです。若いビジネスマンであればいままでやったことのない仕事を引き受けてみる。特に会社として新事業に乗り出すようなチャンスがあれば積極的に手をあげる。マネジメントポストにいるひとだったら、思い切って仕事を一任してしまう。これだけ環境がきびしくなってくるとおとなしくしていてもジリ貧になるのですから、相対的にリスクをとることのデメリットは低下しています。
*リスクを取れといわれたとき、誰でも心配するのは失敗したときのことでしょう。たしかに、新規事業にカカンに手をあげたはいいけれど見事にこけて責任をとらされることになるといった事態はできるだけさけたいもの。それを理解したうえで、それでも何もしないよりマシといいたい。なぜならその人は貴重な失敗の経験を手にいれています。ここまでくるとあとは個人の価値観の問題です。 -
食うために働く。何のために働いているのかを改めて考えた。そしてちょっと働くのが楽になった気がする。
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この作品の伝えたいことは、
食うために働け!世界をイメージしろ!ということ。
とてもシンプル。
前半は村上さんの半生がつづられており斜め読み。後半の最後の章に伝えたいことが凝縮されている。 -
働くことが楽しそうだと思える本でした。
筆者がどのように働いてきたかがわかります。
『村上式シンプル仕事術』と併せて読むと、筆者の考え方がより深くわかると思います。
本書でも、経済学の基礎を身につける重要性を説いています。
僕は『村上式シンプル仕事術』を読んだ際に、経済学に興味を持ち『マンキュー入門経済学』(ミクロ編・マクロ編ではありませんが……)を読みました。
本書では、ハイエクとマルクスの思想も軽く紹介されています。
「第5章 リスクをとれ!そうすれば変化がついてくる」において、働き方についての具体的なアドバイスがあります。
また、「第6章 あなたは世界をイメージできるか」において、アメリカのエリート教育に関して記述がありました。
本書を読むまで、アメリカのエリート教育を支えるボーディングスクール(プレップスクール)という学校があることを今まで知りませんでした。 -
元グーグル村上さんのキャリア論。学生運動の経験と、その後の経験の相乗効果が特に興味深い。大変な努力を重ねてきた方だと改めて思った。運も大事だが、運が訪れたときにwell-preparedであることの大切さが分かる。