帝都地下迷宮

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569845777

作品紹介・あらすじ

東京の地下鉄の廃線跡で生活する謎の集団の正体と目的とは⁉ そこに捜査一課と公安刑事の対立が絡み……。驚天動地のサスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 鉄オタの主人公が、工事を装い作業服を着て、密かに地下鉄の廃駅に潜り込むと、そこにはすでに100人もの住人がいた。拉致された主人公は特別住人となるのだが、実はこの人々はすべて同じ町の出身だったのだ。すると女性住人が殺される事件が起きる。しかも、彼女は現役の公安刑事で、どうも原発の事故が絡んでいるらしいのだ。
    鉄オタの主人公が自分の知識を総動員して、住人のために動こうとするのだが…。
    一体どうなるんだ、痛快な活劇が起こるのかと期待したが、そうでもなく終わってしまった。政府の原発行政への批判は分かるんだけど、それだけじゃあね。もっとダイナミックな動き、結末が欲しかったなあ。

  • 鉄道オタク(廃線跡鉄)の公務員・小日向。廃駅・地下鉄銀座線萬世橋駅を歩いているとそこで暮らす人々に遭遇する。なぜそこで暮らしているのか。そこの住人の一人が殺され、捜査一課と公安が捜査に乗り出す。小日向も地下の仲間とともに真相を解明しようと試みる。
    鉄の要素ありの私としては、その面で多少興味が沸いて読み始めた。しかしなあ、社会派なんだけれど、まあ、どうに現実味がないというか、設定が無理ありありかなあ。鉄道に関するところは目を大きく開いて読む、内容全体的には少々残念。

  • +++
    鉄道マニアの公務員、小日向はある日、趣味が高じて、廃駅となっている地下鉄銀座線萬世橋駅へと潜り込む。そこで思いがけず出会ったのは、地下空間で暮らす謎の集団。身柄を拘束された小日向に、彼らは政府の「ある事情」により、地下で生活していると明かす。その地下空間で起こる殺人事件。彼らを互いにマークする捜査一課と公安の対立も絡み、小日向は事件に巻き込まれていく。
    +++

    突拍子もない設定ではあるが、政府の隠ぺい体質、事なかれ主義、身内第一主義等を考えると、ちょっぴり背筋が寒くなるところでもある。きわめてシリアスな舞台の中に、廃駅オタクの区役所職員が偶然紛れ込んだことで、一見穏やかだった水面にさざ波が立ち、次第に波紋が広がるように、物語がうごいていくのである。警察側の動きには、あまりスポットが当てられていないので、切迫感、緊迫感がやや薄れた感があり、だからこそ、サクサク読める印象でもある。さまざまな問題を考えさせられる一冊でもあった。

  • 地下空間で生活する謎の集団。
    彼らの事情、真相。
    最初は中山さん作品にしては変わった内容かなと思ったけど。
    読み進めていくにつれ、やはり中山作品特有のメッセージ性を感じました。
    半ばから終盤にかけての逃走劇は読んでいてかなりスリリング。
    自分的には地下生活の真相が衝撃的で。
    殺人事件については印象薄めだったかも。
    その殺人事件の意外な真相も、やはり中山作品らしいかたちでした。

  • これは…
    ちょっと雑な気が…

  • なんと12ヶ月に渡りひと月1冊出版すると言う著者の無謀な計画が遂行中とのこと、周りの作家は読者を奪われさぞ迷惑だろうとは思うが、本作の発想もぶっ飛んでいた、廃駅オタクの生活保護支援課の職員小日向が、銀座線萬世橋駅に隠れ住む原発被害者を支援すると言う話、そこに殺人事件が絡み物語はとんでもない方向に。相変わらず警察組織の公安と刑事の対立が描かれているが、国家権力の元に動く公安は不気味でこう言う組織が活躍する日本は危ないと思う。しかし本作ではマスコミはほとんど登場せず余程頼りにならない存在とされているようだ。

  • 2020年デビュー10周年を記念して、各月で刊行した3作目。どのシリーズにも属さない単独物。
    廃駅マニアの区役所で生活保護受付窓口で働く、公務員の小日向。
    地下鉄会社が開催するツアーだけでは、物足りず、ある日萬世橋駅に不法侵入をする。
    誰もいない廃駅と使われなくなった線路を満喫するはずだったが、そこには100名ほどの住民がいた…
    その住民たちに認められ「特別市民」になった小日向は、区役所での仕事をこなしつつ、地下の住人たちの相談に乗るようになっていたが、ある日住人の一人である女性が殺害される。
    実はここの住人たちは2015年に起きた原発事故の被ばく者たち。被ばくしたことで、太陽光に当たることが出来ず、国の極秘裏の元、廃駅に住み込んでいたが、殺害された人物は被ばくした町の住人でなく、侵入した公安警察であったことから、国による住人たちの迫害行為が始まる。
    現実的には使われなくなった駅で、100人もの人が住んでいるなど、設定がかなりぶっとんでいるが、テーマにあるものは、作者が時々使っている反原発。
    国の隠蔽性質などへの問題提起も行っており、内容も決して悪いものではないけど、現実味がなさ過ぎて、小日向が住人たちに肩入れする理由も、文章からは伝わって来ず、全体的には微妙…
    でも、事前にブクログで書いてあったレビューよりは、面白く読めたかも。
    廃駅マニアの話ならば、もう少し、マニアックなところも描いてほしかった。
    旧新橋駅も、萬世橋駅も、博物館前駅もマニアじゃなくても、知っているところばかり。もっとレアな話が読めるかと期待したこともあり、そこも残念。

  • なんだろう。舞台設定は興味津々この上ないのに、ストーリーがイマイチ盛り上がりに欠けた。犯人探しなのか自由奪還なのかどちらかに絞った方が良かったかも。続編に期待。

  • 本来、国や行政が守らなければならない人々が、逆に国によって迫害されている。帝都地下迷宮の人々は国の御都合で消された人々。彼らは主人公にとって己の良心の価値を問い直すものであった。手助けを決めた時、損得勘定はなかった。義務感と倫理感が背中を押してくれた。他人に尽くそうとする誠意は限界を作らない。ちっぽけな一人の公務員が己のできることのめいっぱいを振るって粉骨する背中は紛うことなき善。

  • なんだこれは!←良い意味で。全く新しい七里さんの作品だったな。でも紛れもなく中山七里さん。鉄道オタクの主人公。なにやら、謎の多い地下に住まう集団?ふむふむ、鉄道オタクの物語?と思いきや、やっぱり人死に発生からの、アレヨアレヨト、どんでん返しの炸裂でした。さくっと読めました。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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